作品タイトル不明
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◆とあるクラスメイト
私は昭原百合恵。
今年、煌爛学園に入学したごく普通の生徒だ。
この学校は名家と呼ばれるような家出身の人が多数在学する。
そんな方たちと比較すると、自分は普通の生徒という肩書きに収まるだろう。
特に私のクラスには雲上院礼香様がいらっしゃる。
言わずと知れた超有名人である。
この学校に入学していて、彼女の事を知らないというのであれば、それはもぐりだ。
そんな方と一緒のクラスになれて光栄だ。
別のクラスの友人に、自慢したりもした。
といっても、クラスが同じだけで特に接点はない。
いつも雲上院さんの周りは、同じ派閥の方と思われる人たちで賑わっている。
とてもじゃないが、面識のない私が話しかけられるような状況ではないのだ。
というわけで、同じような境遇のクラスメイトと友人になり、穏やかに学園生活を送っていた。
そんな状況が変わったのは、林間学校の班決めが行われた時だった。
私がいつも一緒に行動しているグループは五人。
林間学校の班は四人。普通に班を作ると、一人余りが出る。
そのため、三人と二人に分かれて、別のグループと混合の班にしようと話し合っていた。
だが、そうなることはなかった。
原因は雲上院さんの班決めにあった。
普段、雲上院さんは、九白さんと兎与田さんの三人で行動している。
そこに、雲上院さんを慕う派閥の人たちが、ぞろぞろと後ろに続くといった感じになるのだ。
――と、ここで班決めの話に戻る。
私は、雲上院さんの班は九白さんと兎与田さんの三人に、派閥の方が一人加わるものだと思っていた。
実際、初めはそういう動きだった。
だけど、それが良くなかった。
派閥の人たちは、雲上院さんの班に誰が入るかについて、初めは平和的な話し合いが行われた。
しかし、上手く話がまとまらなかった。
元々甲乙つけがたい優秀な人たちの集まりの中から、一人を選ぶということが不可能だったのだ。
そこから選出方法でこじれ、最後は熾烈な争いへと発展していった。
皆、上品な方々なので喧嘩という感じではなく、全国大会決勝みたいな空気だったけど……。
とにかく、同じ班になりたいという思いが尋常ではなく、全員真剣そのもの。
選抜争いは、熾烈な様相を呈することとなった。
結果、雲上院さんと九白さんが止めに入ることになってしまった。
そして、二人が出した結論は、班のメンバーは派閥から選ばないというもの。
その方が遺恨が残らないだろうという判断だった。
そうなると、雲上院さんの班の残りの一人を、探す必要が出てくる。
そこで、話を持ちかけられたのが、私たち五人組だった。
他に五人組のグループって、いなかったんだよね……。
五人なら一人余る。
だから、余った一人を、雲上院さんの班に合流させてほしいというのだ。
争いを防ぐためなのでお願いしますと、言われてしまっては私たちも断るに断れない。
私たちは、班へのお誘いを受けることにした。
で、誰が雲上院さんの班に行くかという話になる。
正直、友達同士のグループで行動するのは楽しい。
だけど、雲上院さんのグループに入れるチャンスなんて、これが最初で最後かもしれない。
普通なら一人だけはぐれることになるのだから、皆嫌がるはずなのに、全員が雲上院さんの班に行くことを望む展開になってしまった。
それでどうしたかというと、ジャンケンだ。
勝った人が雲上院さんの班に行く。
そして、そのジャンケンに見事勝利したのが、私というわけだ。
この時、私は大層喜んだ。チャンスをものにしたのだから。
が、林間学校当日を迎え、実際に雲上院さんの班に所属してみると結構辛かった。
私だけ初対面に近く、他は顔見知り。
しかも、ただの顔見知りではなく、大親友なのだ。
まるで、常日頃から一緒に生活している家族のような距離感の会話が繰り広げられるわけで、私は距離感を感じて縮こまるばかり。
でも、三人とも非常に気を使ってくれる。
それが嬉しくもあり、緊張を誘い込む。
ずっと同じクラスだったのだが、ここまで近距離で接するのは初めて。
この距離感で気づいたのは、三人の放つオーラだ。
とにかく、三人とも発する雰囲気がおかしい。
言い方は悪いが化け物だ。
この学校において、一般人的ポジションの私だと、溶けてなくなりそうな気を常時放っているのだ。
特に雲上院さんはおかしい。同じジャージ姿なのに気品に溢れている。
見ていると眩さで目が焼かれそうになる。
とにかく、恐れ多くて、こちらから話しかける気が起きない。
次におかしいのは、兎与田さんだ。
彼女は、この学校において一人だけ纏っている雰囲気が違う。
常に威嚇するような気配を放ち、周囲の空気を張り詰めさせているのだ。
とても可愛らしい外見なのに、放つ雰囲気が不良のそれ。
でも、一緒に行動していると、節々からぶっきらぼうな態度の中に優しさが垣間見える。
ふとした瞬間にそういった優しさに触れ、ドキリとしてしまう。
でも、対面だと緊張して声が上ずってしまうので、話しかけづらい。
といった感じで、落ち着かない。
そして最後が九白さんだ。
彼女は見た目が段違いに怖い。
鷹のような目、鮫のような歯、引き締まった体で高身長。プロの格闘家みたいだ。
いつも雲上院さんを守るように歩いているせいで、更にそういった雰囲気が倍増する。
向こうは何も思っていないだろうけど、目が合うと睨まれた気分になってしまうのだ。
ただ、クラスにいる時の様子を見ると、様々な人に慕われていることが分かる。
なんせ、休み時間になると上級生までが九白さん目当てにやってくるのだ。
だけど、怖いものは怖い。だから、今まで敬遠してきた。
しかし、今回の行事で九白さんに対する印象は一八〇度変わった。
校内での集合時。バスでの移動。そして、宿泊施設への移動。
全て九白さんが隣だった
初めこそ、怖がってビクビクしていたのだが、余りの気遣いにとろけてしまった。
きっと、私が疎外感を覚えないよう、色々と考えて立ち回ってくれたのだ。
とにかく、先回りが凄い。まるで終始エスコートされている気分だ。
なんというか、年上のお姉さんにお世話されている気分になってしまう。
バスの中ではすっかり打ち解け、自然な笑顔が出せるようになっていた。
九白さんが一部の生徒から、お姉様と呼ばれているのも頷ける。
そんな九白さんの振る舞いを見て、雲上院さんが得意げにしていたのが謎だけど……。
そんな彼女であったが、バスから降り、宿泊施設へ向かう途中でマスクを着用した。
なんでも喉の調子が悪いらしい。
確かに、バスで話していた時と声の調子が違う気がする。
私が心配して声をかけると、喉の痛みもないし、体調もなんともないから大丈夫だと答えた。
実際、しっかりとした足取りで歩いているし、元気そうである。
空気が乾燥しているから、喉が乾燥したのかもしれないという言葉に私も納得した。
雲上院さんと兎与田さんも、喉が乾燥していると言うし、多分そうなんだろう。
バス内で九白さんが仲を取り持ってくれたおかげで、私は皆と打ち解け、非常に楽しい気分で宿泊施設へ向かって歩いていた。
自然を堪能しつつ、和やかな雰囲気で会話を楽しむ。
この班に参加したかった雲上院派の皆さんには申し訳ないけど、役得過ぎる。
一時は緊張でどうなるかと思ったけど、九白さんのお陰で楽しいひと時を過ごせている。
彼女には本当に感謝しかない。
そんな風に思いながら歩いていると、急に九白さんが声を上げた。
「GYAOOOOO!」
「へ?」
余りに人外すぎる音が九白さんの口から発せられ、驚きのあまり間の抜けた声が出てしまう。
「「GYAGYAAAOOO!」」
「ええええ?」
九白さんの奇声は一度だけではなかった。その後、何度かに渡って発せられる。
しかも、まるで合唱しているかのように、声が幾重にも重なって聞こえてきた。
一体どうなっているの?