軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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「その点については考えていることがあるんだ。これを使ってみようと思うんだけど、どう?」

私はそう言って、探査霊体で自分そっくりの個体を作り出して見せた。

「まあ、そっくりですわね。これなら何とかなるかもしれません」

と、目を輝かせて喜ぶレイちゃん。

そのリアクションを見て、私はちょっと得意げになってしまう。

ふふ、中々の完成度でしょ?

「でも、それって喋れるの? 急に誰かに話しかけられたりしたら、どうするわけ」

するとナナちゃんから痛いところを突く指摘が入った。

そう、探査霊体は話せない。

発声の構造を再現したとしても、発音やイントネーションの問題を考えるとハードルが高すぎるのだ。

ただ、その問題点に関しては解決策を用意しておいた。

「そこも抜かりはないよ。これを耳と口に仕込むの」

そう言って、無線機を見せる。

これを耳と口に埋め込み、私が遠くから音声を聞いて通話すれば、会話しているように見えるという寸法である。

これなら探査霊体に無理に発声させるより、よっぽど安心である。

私は説明を続ける。

「音に合わせて口を動かすのは難しいので、当日はマスクをさせるよ」

口元を隠せば、不自然さも消せる。

怪しまれる心配は無くなるだろう。

うまく口を動かすことができればマスクも必要なかったが、今回はそこまでできなかった。

次回があれば、バージョンアップに挑戦したいところである。

「これなら大丈夫そうですわね」

と、納得の表情となるレイちゃん。

「一時間くらいなら誤魔化せるかも……。丸一日とかになると厳しいんじゃない?」

ナナちゃんが探査霊体をまじまじと見ながら、私見を述べた。

「一時間あれば大丈夫だと思う。探査霊体との入れ替わりは、妖怪の発見報告があったエリアに着いてからにするつもりだし」

当日は現地到着後、すぐに探査霊体に入れ替わるのではなく、予定地に近づくまでは自分自身で行動するつもりだ。

そうすれば、短時間の入れ替わりで済む。

これなら、うまくいくだろう。

ただ、探査霊体には弱点がある

術者と探査霊体で全く違う目的の行動を並行で行うと、こちら側の思考がノイズとなって動きがぎこちなくなってしまうのだ。

今までは、妖怪討伐という同じ目的に基づいて行動していたため、そういった支障をきたすことはなかった。

しかし、今回は違う。

当日は本体が妖怪討伐を行いつつ、探査霊体がハイキングをすることになる。

これは、術が想定していない用途での使用となる。

そのため、動きに多少の違和感が出てしまうのは、確定となるだろう。

そういった部分は、二人にフォローしてもらうしかない。

二人は術の事を熟知している。

きっと、うまく立ち回ってくれるはずだ。

――今回のイベント、ヒロインが日高さんと判定されて進行した場合、かなり危険だ。

なんせ、彼女は霊気を発現していない。つまり、霊術が使えないのだ。

生身の人間が妖怪に襲われるイベントや、拉致イベントに巻き込まれると命に関わる。

先回りして、なんとしてでも回避しないと。

このイベントは必ず阻止してみせる。

私は改めて、そう決意した。

――そして林間学校当日

私たちは学校に集合し、バスで現地まで向かった。

目的地に到着した後は、ハイキングも兼ねて宿泊施設まで徒歩で向かうことになる。

私は、そのタイミングでレイちゃんとナナちゃんに合図を送り、隠れて探査霊体と入れ替わった。

「まずは、道に迷わないように誘導しないとね」

私は、身を隠して生徒たちが通り過ぎていくのを待つ。

そして最後尾にいる日高さんと瀬荷城宝子の班を捕捉した。

日高さんの班は他の班から、かなり距離が開いていた。

進行速度が遅いせいで、本来最後尾に居なければならない教師とも離れてしまっている。

班の先頭は手ぶらの瀬荷城宝子たち。そこから少し離れたところで荷物を全て背負った日高さんが付いて行く。

どうやら、瀬荷城宝子の家が大きいせいで、教師も介入しづらいようだ。

見て見ぬふりをするために、わざと先に進んでしまっている。

日高さんには霊気がないので身体強化が使えない。そのせいでかなり辛そうだ。

マンガでは、ヒロインが荷物持ちをさせられるも、身体強化で凌いでいた。

ただ、その時点で霊気を消耗したせいで、それ以降の展開で苦戦することになるのだが……。

そんな中、瀬荷城宝子たちが動いた。

声を潜めて話し合ったと思ったら、日高さんの方へ近づく。

次に、「貴方が遅いから置いてけぼりになった」と怒りながら、日高さんから自分たちの荷物を奪う。

そして、「もう荷物は自分で持つ」と言い、正規ルートとは違う道に走って行く。

それを見た日高さんは、追いかけようとしたが疲れて動けない。

木陰に座り、しばらく休憩した後、同じ道へ進んで行った。

その頃、瀬荷城宝子たちは、日高さんを引き離して向こうから見えない所まで進むと、木々の間を抜けて正規ルートに戻っていった。

何も知らない日高さんは、そのまま間違ったルートを進んで行こうとする。

このまま進むと妖怪に出くわす。ここで正規ルートへ戻さないと。

私は、さりげなく日高さんに接近した。

「あれ、日高さん?」

と、何も知らない振りをして話しかける。

「えっと、貴方は九白さんでしたっけ」

と、私の名前を自信なさそうに言う日高さん。

うん、私たちはそういう距離感なのだ。

入学式の時に少し話したが、それ以来まともに会話していない。

クラスも違うので、顔見知り程度の仲なのである。

「そうそう。そんなことより、どうしてこんな所にいるの? あっちに見えるのが宿泊施設へ行く道だよ。もしかして分かれ道で間違えちゃった?」

私は正規ルートを指さしながら説明する。

「え、そうなの? 疲れてちゃんと前を見ていなかったのかも。教えてくれてありがとう。九白さんはどうしてここに?」

「あ、えーっと……、先生に言われて、ちょっとね」

ちょっとって何だ、とは思うけど、良い言い訳が思いつかなかった。

このまま日高さんと一緒に他の生徒と合流するなら、最後尾の人を迎えに来たと言えば済む。

だけど、これから妖怪退治に行くので、その言い訳は使えなかった。

「それじゃあ私は用事の途中だから行くね。宿泊施設へ行く道は下に見える道だよ。もう少し進んだら階段があるから、そこから降りるといいよ」

私がまくし立てるように言うと、日高さんが「あ、うん。ありがとう」と、びっくりしたように返事を返す。

私はそのまま急いでいる風を装って、その場から離脱した。

駆け足で日高さんが見えなくなる所まで移動し、ひと息つく。

ふぅ、なんとか上手く誤魔化せた……。

さて、次は妖怪退治だ。