軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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◆狐坂移蔵

凶石を食らって自らを強化した狐坂移蔵は、配下を増やし発電所への侵入を繰り返していた。

自身の能力を使えば、警備の目を掻い潜るのも容易い。

発電所への侵入目的は凶石だった。

一部の発電所では、凶石が燃料として使用されている。

その保管場所へ侵入し、凶石を盗み出す。

そして、それらを配下に食わせて強化を図る。

胃根の残した遺産の凶石は半分残してあるが、それは王に献上する予定だ。

そのため、配下の強化は発電所への侵入で賄っている。

幸い、今まで侵入した発電所は凶石が大量に保管されていた。

まるで自分たちが来ることが分かっていて、準備してくれていたのではないかと疑ってしまう程の量だった。

もしかすると、発電所の使用量を超える搬入が最近あったのかもしれない。

「もっと食って、力を目覚めさせろ」

知能の低い下位妖怪たちが、凶石を貪る様を見届けながら呟く。

妖怪は凶石を取り込むことで力が増す。

そして、低確率で特殊な力に目覚めることがある。

狐坂はそれを狙っていた。

強化を利用し、仲間を倒した霊術師たちを屠るのに適した能力を有する個体を作り出す。

それらを敵に差し向ける。

今の狐坂の力があれば、一定数の下位妖怪を完全な支配下に置ける。

それこそ、自死させることすら可能だ。

特殊な力に目覚めず、力だけ増した個体を囮として使い、特殊能力を有する個体で確実に対象を倒す。

それが狐坂の考えた計画だった。

「今回も駄目か……」

配下の強化には成功した。

が、未だに特殊な力に目覚めた個体はいない。

攻撃に特化した能力を有する個体を何としても手に入れたい。

そのためには、もっと配下を増やし、凶石を手に入れる必要がった。

「まだだ、まだ数が足りない……」

狐坂は大量の下位妖怪を引き連れ、次の発電所を目指す。

◆九白真緒

「とうとう来月か」

私は、Xデーが近づきつつあることを実感し、呟いた。

北海道を奪還するまでは結構あわただしかったが、最近は何もしていなかった。

ここ数か月は、ずうっと修業の毎日である。

そんなのんびりした毎日も、もうすぐ終わる。

私の独り言を聞き、レイちゃんが首を傾げる。

「どうかしましたか」

「入学式まで、あと少しだなと思って」

この世界に生を受けて十五年。

とうとう、煌爛学園高等部への入学が迫ってきた。

現在、その事実を強く実感しているのには、理由がある。

それは、今日が煌爛学園で制服や教科書を受け取る日だったためだ。

私は、レイちゃんとナナちゃんの三人で、教材の受け取りに学校へ訪れていた。

未だ、マンガのストーリーは展開されていないが、とうとう舞台となった学校に足を踏み入れたのである。

「わたくし、今日を楽しみにしていたのです。ワクワクして中々寝付けなかったのですよ?」

「そんなに? 制服と教科書を受け取るだけじゃん」

と、ナナちゃんが意外そうな顔をする。

私は、煌爛学園高等部に対して並々ならぬ思いがある。

だから、今日という日を迎えて、入学を予定している生徒の中で一番興奮していると思う。

だけど、レイちゃんまで高揚しているとは思わなかった。

「早く制服に袖を通してみたかったのですわ。ここの制服は有名ですし、ちょっと憧れもあったのです」

そう言って、受け取った制服を嬉しそうに胸に抱えるレイちゃん。

「へえ、レイちゃんにしては珍しいね。有名デザイナーが制作したってわりには、結構ベーシックな見た目だよ?」

煌爛学園高等部の制服は、シックなものだ。言い方を変えれば地味ともいう。

ただし、間近でみると、随所に強烈なこだわりが見られるという玄人仕様の制服なのである。

ということは結局、地味な普通の制服、ということになってしまうわけで……。

「だね。何も聞かされてなかったら、普通の制服だと思って気づかないかも」

どうやらナナちゃんも、制服の見た目に関しては私と同意見のようだ。

そんな私たちを見て、レイちゃんがやれやれといった様子で溜息を吐く。

「二人とも、分かっていませんわね。奇抜なものが良いデザインというわけではありません。この制服には、製作者の学校に対する敬意が感じられるのですわ」

「確かに良い生地を使ってあるとは思うけど、防刃や防弾ってわけでもないしなぁ……」

名家の人間が通う学校だし、襲われた際の備えをもっと充実させてもいいと思う。

「その着眼点が若干アレなんだよね。私は普通に可愛いのがいいな」

彼女の言う可愛いとは、厳ついデザインの虎や龍のことを指すのだろうか……。

裏地にそういう刺しゅうが入っていないと満足できないという意味なのかな。

私がナナちゃんを疑いのまなざしで見ていると、レイちゃんが私たちの背を押す。

「はいはい。二人とも、受け取りは済みましたし、迷惑にならないように速やかに帰りますよ」

確かに混雑しているし、さっさと場所を空けた方がよさそうだ。

「この後、水族館に行くんだっけ?」

「ええ、わたくしの癒しの場ですの」

ナナちゃんの問いに、レイちゃんが笑顔で頷く。

今日の用事は受け取りだけ。そのため、すぐに済んでしまう。

でも、折角集まったのだから、何かしようかということになり、水族館行きが決まった次第である。

二人は、次に向かう目的地について話しながら、車へ移動していく

後を追っていた私は、校門を出たところで振り返り、学校を見た。

この画角、マンガで見た光景とダブる。

――とうとう、ここまで来た。

あと数日で高校生活がスタートする。

今日まで、あらゆる準備をしてきたつもりだ。

全ては、この先に起こる出来事を回避するため。

絶対にレイちゃんを生還させてみせる

そう、心の中で強く念じた瞬間、無意識に拳を握る強さが増す。

「マオちゃん、行きますわよ」

そこにレイちゃんが私を呼ぶ声が聞こえ、自然と体の力みが取れた。

「今行くよ」

私は、笑顔で返事を返し、二人の元へ駆けた。