軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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◆鷹羽雷蔵

会議場は開始前から、激しく紛糾していた

いつまでもざわめきが収まらない

見るに見かねた鷹羽雷蔵は、咳払いをして静粛を促す。

そして、強引に話を切り出した。

「それで、玄宮の次期当主と結界の件についてだが……」

少し前に起きた玄宮の一件。かなりの大事件だったが、まともに話し合えていない。

手続きが煩雑だったため、十家の当主全員が集まる機会を作れずに、ずるずると日数が経過してしまったためだ。

が、雷蔵の言葉を聞いた当主たちの反応は薄い。

むしろ、よくない。

他に話すことがあるだろうと言わんばかりに不満を孕んだ空気が充満していた。

そんな中、当主の一人が堪らずといった感じで言った。

「我々は十家、四柱当主の処分に口出しできるはずがないだろう。それに、結界は前回の会議で現状維持と決まったはずだ」

次いで、また別の当主が口を開く。

「そんなことはどうでもいい! それより北海道だ」

そこからは、せきを切ったように当主たちが口々に言いたいことを言い出し、収拾がつかなくなっていく。

「そうだ、報告を聞いたか」

「先日の報告では、四分の三の奪還に成功したとあった」

「いくらなんでも虚偽報告だろう。速度がおかしい」

「その通り。土地の広さを考えると、ありえないな」

「だが、報告は複数で多岐にわたる。玄宮勝邦の時とは違うぞ」

「ああ。私も資料に目を通したが、非常に信ぴょう性が高いと感じた。あれを無視すると、逆に問題になるぞ」

「多分、報告は全て事実だ」

という一人の当主の言葉に、全員の視線が集中する。

「何か知っているのか!?」

「実は北海道の妖怪討伐に参加している者に知り合いがいてな。映像を送ってもらった。その映像を見た限り、本当に四分の三を取り戻したのだと思う」

「映像なら記録範囲が限られているだろう? 視覚的に誤魔化せるのではないか」

「いや、そういうレベルではないのだ。奪還した土地は整地が済み、すでに建設ラッシュが始まっている。疑うなら、金の流れを調べてみろ」

「……全て事実だというのか。この短期間に、どうやってそれだけの成果を上げたんだ」

「確か妖怪討伐には、雲上院グループが関与しているんだったな。もしや、戦車や爆撃機を調達したのか? さすがにそれは違法だぞ」

「そんなものを大量に調達すれば丸わかりだ。だが、こちらが想定していないような特殊な方法を使用した可能性は考えられるな」

当主たちは、現在の北海道に関する報告内容の真偽について激論を交わす。

そんな中、一人の当主が机を強打することによって注目を集めた。

「どうやったかなんて、この際どうでもいい……、どうでもいいんだよ! それより、どうするんだ!?」

「どうするとは?」

「何を寝ぼけたことを言っている。このままでは手柄を全て横取りされることになるんだぞ! 妖怪が支配しているエリアは、もう四分の一しか残っていないんだ!」

「……蓄えていた戦力をすべて出すか。四分の一であれば、制圧も容易い」

「よく考えろ。今から総動員をかけるのか? この短期間で四分の三を奪還したんだぞ。今から準備をしていたら、間に合わないのではないか」

「確かに。準備を整え、掃討戦用の戦力で上陸したら、全部終わっていたということもありえるな」

「あり得るというより、そうなるだろうな」

「ならば、どうする。指をくわえて見ているのか?」

「……手柄は取れんが、被害はゼロで済むな」

「何を言っている! 我々が何十年もかけて準備していたことを、雲上院グループがたった数か月で結果を出したとなれば、こっちは完全な笑い者だぞ!」

「笑い者では済まないな。このままでは、今まで結果を出せなかったのは、怠慢だと判断される。安全が確保されれば、住民の怒りの矛先が全てこちらに向くことになるだろうな」

初めは、手柄を総取りされてしまうという話だったが、気が付けば、こちらが責められるかもしれないという話に変化していた。

実際、このまま手をこまねている間に全てが終わってしまえば、十家を追及する世論が形成される可能性は高いだろう。

そうなると一刻も早く、霊術師を少しでも多く、北海道へ向かわせる必要がある。

「行ける者から向かわせるしかないな。統制が取れないから、本来なら愚策の極みだが、妖怪の総数が減っている今なら、誤魔化しが利くだろう」

「ならば決を採る。十家の北海道立ち入りの禁を解き、高位霊術師への自粛勧告の取り下げを行うことに賛成の者は挙手を」

雷蔵の発言を受け、当主全員が挙手。一瞬で議案の可決が確定する。

「全員一致で可決とする。これより、全ての霊術師の北海道立ち入りを許可するものとする。他に何かないか」

と、雷蔵が終結を告げ、他に議題がないか問いかける。

その言葉に他の当主は無反応。というか、妙に落ち着きがない。

沈黙の間が数秒続くと、多数の当主が腰を上げて中腰となった。

それらの視線は、きょろきょろと忙しなく周りの動きを探っていた。

「そ、それでは解散か? すまないが用事を思い出してな」

「私もだ。急ぎなので失礼する」

「わ、私も……!」

と、一人、また一人と早足を通り越した駆け足で、会議場から立ち去っていく。

そして、ものの数秒で、会議場は雷蔵一人となった。

「やれやれ、まさかこんな事になろうとは……」

無人となった会議場で、雷蔵は溜息を吐いた。

今回の決定は、北海道に増援を送ることと同義。

総動員とまではいかなくとも、最終的な規模はかなりのものになると予測される。

統制は取れていないが、現在の戦況であれば十分な効果が期待できるだろう。

現在の奪還の勢いに加えて、本州から霊術師の加勢が合流すれば……。

遠くない未来……、いや、ほんの数か月先には十家の悲願が叶うかもしれない。

「さて、わしも向かうとするか」

雷蔵は立ち上がり、鷹羽家としての今後の方針を考えながら会議場を後にした。