軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

戦争は嫌だねぇ

僕は準備に追われた。

半ばヤケクソである。

せっかく村の防衛を整えてきたというのに、まさか村から出て戦えと言われるとは。

ならば、絶対に大丈夫と言える布陣で挑まねばならない。

まず、帰ってくる場所を守るためにも、エスパーダを領主代行として残し、バリスタの扱いが上手い村人達も残す。後はエスパ騎士団もだ。

「私が付いていかなくて大丈夫ですか?」

「エスパーダくらいじゃないと領主代行なんて出来ないじゃないか」

僕がそう言うと、エスパーダは周りに立つ者の顔を順番に眺めた後、深く頷いた。

「理解しました。流石はヴァン様です」

理解出来たらしい。流石はエスパーダである。

村のことはこれで良いとして、問題の僕と行くメンツだ。

「まず、ディー達は僕の騎士団として大半を連れていくよ」

「はっ!」

「ティルとカムシンは危ないから……」

「行きますよ!? 絶対に行きますからね!」

「行きます!」

「あ、はい。分かりました」

圧し負けた。

まぁ、来ると思ってたけど。

「アルテは来客だからね。村で待っててもらおうかな」

「……わ、私も行きます!」

「へ?」

思わず、間の抜けた声を出してしまった。だが、アルテはなぜか物凄く決意の固い表情をしている。

「危ないから……」

「覚悟はしています」

珍しく、アルテは僕の言葉を遮ってまでハッキリと自分の意思を示した。それに、軽く息を吐き、腕を組む。

「じゃあ、僕と常に一緒に行動だからね? それなら同行を許可するよ」

「はい!」

嬉しそうに返事をしたアルテに、僕は苦笑して溜め息を吐く。周りからは微笑ましい視線が飛んでくるが、仕方ないとスルーした。

とはいえ、実はアルテが来てくれるのは大変助かるのも事実だ。アルテ専用の傀儡人形を持っていけば強靭な盾となるのは間違いない。

村の城壁内の広い空き地で大型馬車を並べて装備や騎士団を確認してみる。

「……こんなものかな? 男爵になったばかりなんだから、戦力が少ないなんて言われないよね?」

そう聞くと、ディーは腕を組んで確認する。

「中身を知っていれば十二分以上です。いや、そもそもヴァン様の年齢を考慮すれば大丈夫でしょうが」

唸るディーの言葉に適当に頷いていると、遠目から見ていた冒険者のオルトが口を開いた。

「護衛依頼受けましょうか? 本来なら戦争には関わらないんですがね。ヴァン様の護衛なら引き受けても良いですぜ」

と、素晴らしい進言を受け、僕は両手を挙げて歓声を上げる。

「おぉ! それは嬉しい! それなら冒険者達全員に声を掛けて、依頼を受けてくれる人いないか探そう!」

なんという名案か。こんなにお手軽に人数を増やせるとは。

「ちなみにクサラさんは強制参加で」

「またそんな扱い!?」

僕の一言に、クサラは飛び上がった。いやいや、何を驚いているのか。

「僕の騎士団には専門的な斥候がいないからね。狩人はいるけど、やっぱり斥候とは少し違うと思うし」

そう言うと、クサラは不満げに口を尖らせた。

「そりゃそうですがね。依頼ってんだから、あっしにも一応受けるか確認をとってほしいもんでさぁ」

「え? でも、クサラさんは僕からの依頼受けないと死刑だし……」

「死ぬんですかい!? それなら受けますぜ! 当たり前でさぁ!」

冗談を言ってみると、クサラはいつも通り大袈裟なくらいのってきた。若干半泣きなのは演技過剰なせいだろう。

「よし。じゃあ、オルトさん。冒険者全員に依頼をお願いします。依頼を受けてくれた人には前払いで金貨五枚。依頼達成後に大金貨一枚と伝えてくださいね」

「……全員来ますよ、それ。大丈夫ですか?」

「全員って何人かな?」

そう尋ねると、オルトは難しい顔で唸る。

「えぇっと……この前来た奴らも含めると、三、四……多分、百五十人くらいですかね? いや、もうちょい居たかな?」

「百五十人!? なんでそんなに増えたの!?」

僕は大いに驚いた。元は六十人くらいじゃなかっただろうか。こんな短期間で何があったんだ。

「あぁ、冒険者ギルドの広報ですよ。今じゃ多分近隣の町には伝わってるでしょうし、新たに王都から来た奴らもいます。ギルドとしては、素早くダンジョンの調査をしてしまいたいですからね。人数が多ければ多いほどマッピングも魔獣の把握も早くなりますし」

「それにしても早過ぎる。ダンジョン前の休憩所が収容人数超えじゃないかな?」

「いや、ダンジョンなんて一、二日とか潜るのが普通なんで、交代でダンジョンに入ってれば余裕ですよ。潜り終わったら素材売りに村に戻りますし」

成る程。

「まぁ、いいや。戦争への参加だからね。冒険者一人につき大金貨一枚と金貨五枚って伝えてください。命懸けだし、それくらいは欲しいですよね」

そう言うと、オルトは笑いながら頷く。

「了解です。ただ、冒険者稼業は元から命懸けなんで、超一流の冒険者以外は金貨五枚でも喜んで参加しますよ。まぁ、多ければ嬉しいのは確かなんですがね」

と、なにやら過酷な冒険者の生き方をサラリと聞いてしまった。まぁ、セアト村の住民達も生きるか死ぬかの場面があったし、この世界では皆大変そうだ。

「よし。生存率を上げるためにベルの店に武具や防具を多めに卸そう。セアト騎士団は大丈夫と思うけど、冒険者の人はやたらと武器ばっかり買うからね」

そう答えると、オルトの目の色が変わった。

「本当ですか! いつも品薄ですからね! よし、さっさと皆に伝えて俺が一番に買いますよ!」

「オルトさん達はもう殆ど買い揃えちゃったでしょ!?」

「じゃ、行ってきます!」

僕の指摘が聞こえなかったのか、無視したのか。オルトは血相を変えて走り去ってしまった。

セアト騎士団はウッドブロックを材料にした装備が殆どなのに、オルト達パーティーは殆ど鉄素材の防具で身を固めている。

プルリエルは軽いからという理由でウッドブロック製の防具が多いが、杖はミスリルの杖を購入したばかりだ。

……まぁ、上客なので優遇しても良いか。

「気になるからベルランゴ商会に行って様子を見てくるよ」

僕がそう言うと、ディーは大きな声で返事をして騎士団のメンバーと装備の確認に向かった。

最近忙しくてランゴの顔を見ていないのでちょうど良い。

そう思ってティル達を連れて店に顔を出すと、かなり疲労感の漂うランゴの姿があった。

ランゴは僕を見つけると、泣きそうな顔で走ってくる。

「ヴァ、ヴァン様ー!」

「どったの?」

首を傾げつつランゴを見上げると、ランゴは両手を広げて大変だったとアピールした。

「どうもこうもないですよ! オルトさん達は毎日魔獣の素材を持ってくるし、武器防具が足りないと言って文句を言う冒険者はいますし、村人達が増えたから食料や調味料も足りなくなりましたし……! その上、従業員にした奴隷達に接客や物の単価を教えて、従業員同士で喧嘩することもあって仲裁したり……!」

「お、おぉ……たしかに、大変そうだね?」

中小企業の新規店舗オープンでストレスが上限突破した新店長みたいな愚痴に、僕は頷きながらランゴを慰める。

まさに中間管理職の苦悩だ。頑張れ、ランゴ。部下のマネージメントは必須能力だぞ。

「あれ? 元行商人の人や別の商売の経験がある奴隷の人は? ほら、凄く美人の」

「あぁ、メディチさんですか。あの人がいるから何とかなってますけど、多分同じくらい疲れてますよ。奴隷の教育を半分受け持ってくれてますから。私にとっては天使ですよ、天使」

ランゴは胸の前で指を絡めて虚空を見つめ、呟く。躁鬱が激しい。

「……よし、武器と防具の販売は手伝ってあげようか」

そう告げると、ランゴは涙を流した。

「神様!」

「僕はヴァン様だよ」

泣いて喜ぶランゴに、苦笑しながらそう返したのだった。