軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

どうやら、計画の一端らしい

敵騎士団はイェリネッタ王国の辺境伯より借りた三百人と、まさかのイェリネッタ王国王家のウニモグ・イェリネッタ王子率いる護衛騎士達であった。

ワイバーンは傀儡の魔術師が操っていたと聞いたので是非とも話を聞きたかったが、残念ながら城壁に叩きつけられて戦死してしまった。

どうやら、数年前から計画され、三ヶ月前から実行に移された侵攻作戦の一端らしい。

国王が異様に悔しがっていた。どうやら、かなり巧みに情報が隠されていたらしい。

今は領主の館の一室にて、国王とアペルタ、パナメラ、僕の四人でテーブルを囲み、会議を行なっている。

「武具の発注も騎士団の移動も報告にはなかった。逆に、王都の治水工事を大規模に行なっている最中の筈だ。まさか、そんな金を掛けてこちらの眼を眩ますとは……此度は本気のようだな」

見るからに不機嫌そうにそう呟く国王に、僕は頷きつつ口を開く。

「なるほど。しかし、残念な王子だったとはいえ、ウニモグからよく情報を引き出せましたね」

戦争の侵攻作戦の内容など、完全な国家機密である。それを仮にも王家の人間が漏らすものだろうか。

そう思って聞いたのだが、国王は面白くなさそうに肩を竦め、代わりにアペルタが説明した。

「驚くべき軟弱者でしたな。爪を剥ぐか、眼を抉るかと尋ねたら、即座に全てを話しました」

「本来なら素直に話す敵兵は歓迎すべきだが、あの軟弱ぶりには苛々したぞ」

半ば呆れた様子のアペルタにパナメラも同意してそう言う。

「ははは……まぁ、痛いの嫌いなんでしょうね。それで、侵攻作戦の全容は?」

そう尋ねてみると、国王は眉間に深い皺を作って口を開いた。

「主となる作戦は、領地拡大したばかりのフェルティオ侯爵家の侵略だ」

「え?」

驚く僕に、国王は目を細めて複雑そうな表情を浮かべた。

「侯爵家の話を貴殿にして良いか悩むところだが、男爵となったからには気を強く持ち、聞いてもらうのが良いだろう」

気を遣いつつ、国王はイェリネッタ王国のダディ領地への侵攻作戦を語る。

「知っての通り、フェルティオ侯爵家は領地を十年で五割ほど大きく拡大させた。だが、人材の育成や登用などは間に合っておらず、守る範囲が広がったのに対処は後回しだった。それを、イェリネッタ王国に掴まれてしまったらしい。王都からも国境警備軍を配備しているが、いかんせん人数も土地勘も足りない」

国王が溜め息混じりにそう口にして、僕は思わず口を挟んだ。

「では、今まさに攻められている最中では?」

そう言うと、国王が頷く。

「うむ。立地的にも作戦内容的にも最初に攻められるのは城塞都市スクデットだ。さらに、スクデットを確実に陥落させるために侯爵家第二都市。そして、このセアト村を含む三つの町や村が同時に襲撃されている筈だ」

そこまで口にして、国王は顔を上げ、また口を開く。

「だが、焦るな。もはや先手は打たれた。時間との勝負だが、今我らが走り回ったところで状況は変わらん。必要なことは状況の整理と対策である」

と、国王が言うと、アペルタが咳払いを一つして後を引き継ぐ。

「それでは、我々の対応を確認させていただきます。まずは陛下と私ですが、最小限の護衛を引き連れて王都に戻り、王都騎士団を編成してスクデットに向かいます。次にパナメラ子爵。子爵はフェルディナット伯爵に報告し、即座に補給部隊と騎士団を編成し、同じくスクデットに」

そう口にした後、アペルタは僕を見た。

「本来ならば、村の一領主には食料などの要請程度しか行いません。ですが、ヴァン男爵ならば可能であると判断し、此度の防衛戦に参加を要請します」

アペルタはマジな顔でそんなことを言い出した。それに、僕は思わず本音が出る。

「えー……」

そう呟くと、アペルタの片方の眉が上がった。

「……嫌、と?」

ピリッとした空気になり、国王とパナメラの目もこちらに向く。普通ならNOと言えない空気だが、僕は引かない。引き篭りたいのだから、村から出るのは極力したくないのだ。

そう思いつつも、失礼の無いように言葉を選ぶ。

「要請をしていただけるのは光栄ですが、僕にはこの村を守るという義務があります。まだまだ開発途中のこの村を放置しては、それこそ見捨てるようなもの。領主として、村を守りたいのです」

真面目な声のトーンでそう意見したが、アペルタの目は胡散臭そうに細められた。

「……ワイバーンを一撃で穴だらけにする兵器や、アーマードリザードとドラゴンすら討伐出来る防衛設備があるのに、まだ開発途中、と?」

疑惑の眼を向けてくるアペルタに、僕は即座に頷く。

「間違いなく開発途中です。はっきり言って、僕の中ではまだ十分の一も完成していません。本当ならもっと作りたいものがいっぱいありますからね」

僕が未完成であると断言すると、流石のアペルタも眼を瞬かせた。国王も同様だったが、パナメラだけは楽しそうに笑う。

「やはり少年は面白いな。これ以上どんなとんでもない物が作られるのか興味が尽きないが、この要請は受けておいた方が良いぞ。国の危機には、全ての貴族が自己の利益を無視して協力しなくてはならない。それが貴族になる際に交わされる盟約のようなものだ……む? そうか、少年の叙爵は私が代行したからな。貴族の義務というものを知らなかったか」

パナメラは思い出したようにそう言い、苦笑した。いや、エスパーダに習ったけどね。まぁ、知らないふりをして今回は脱することが出来ないだろうか。

無理か。無理だろうね。

仕方なく、溜め息混じりに首肯する。

「……分かりました。それが貴族の義務というのなら、参加しましょう。しかし、領主としての責任もあります。村から連れて行く人数はこちらが決めたいと思います」

「うむ、それは構わん。だが、あの恐るべきバリスタは持っていってもらいたいのだが」

「勿論です。試作品二十八号を使います。移動可能であり、最も頑丈なものです。ただ、作製に時間と資源が多く必要なため、まだ三機しか作れてませんが」

そう答えると、国王は呆れたような顔で笑った。

「我が王家の抱える研究者よりも多くの研究をしているようだな。よくもまぁ、それだけ色々と考えつくものだ」

「全て今あるものを少し改造した程度の物ですよ。まぁ、探してる物が手に入ったら、ちょっと面白い物を作れるとは思いますが」

「……ほう?」

僕のセリフに、国王は興味深そうに口の端を片方上げた。

「……問題が無いようでしたら、各々実行に移しますぞ」

と、アペルタに水を差され、国王は背もたれに体を預ける。

「ふむ……異論は無いな。では、動くとしよう。我も子爵も最低で三週間から一ヶ月は掛かる。途中の町から別路で各近隣の貴族に使者は送るが、兵を率いて現れるのは同様の時期となるだろう」

国王はそれだけ言って立ち上がり、僕を見下ろした。

「スクデットは簡単には陥落せんだろう。だが、周りには確実に数万の軍勢が詰めている。無理はせんようにな。我らの到着を待ち、同時に攻め込むぞ」

「分かりました」

忠告には素直に従う。むしろ、行けと言われても嫌だと答えるし。

「では、各自迅速に行動せよ」

国王はそう言って、言葉通り迅速に準備を終え、村から出ていったのだった。