軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

国王が驚いた

それなりの年齢に見えるが、力強さに溢れている。

国王であるディーノ王を見て、僕はそんな印象を抱いた。

ちなみに後ろに立っていた宰相のアペルタ侯爵は細くて意地悪そうな雰囲気だ。何故かずっとにやにや笑みを浮かべていて怖い。

そして、もう一人。エルフかなと勘違いしそうになる美形の少年だ。興味深そうに辺りを見回す少年は、明らかにディーノ王の血を引いている。名前はピスタ・エン・ツォーラ・ベルリネート。

王子様か。くそ、白馬に乗ったら似合いそうで悔しい。

そんなことを思いつつ、さっそく村を案内せよという国王を引き連れて歩く。

まずはセアト村入り口にある物見の塔、オリゴ塔である。

「かなり高いな」

「高度がある分、村の全景を確認するのに便利です」

そう答えておくと、国王は「そうか」と返事をして黙って付いてくる。お付きにはアペルタとピスタ、そして近衛隊長らしき強面の男とパナメラの四人だ。

僕の方はティルとカムシン、アルテとディーだ。エスパーダは体力的に塔を登らせると死にそうだから待機させた。

息切れしながら登り切ると、辺りを広く見回せる展望台に着いた。雲も殆ど無い晴天であり、景色は最高である。街道と草原、奥には森や荘厳なまでの巨大な山脈も見える。

そして、出来たばかりの冒険者の町。後は綺麗に星型の城壁と、中心にある四角い城塞都市。奥にはアプカルルの住む湖もある。

こうやって改めて見ると、意外にも観光地として成り立ちそうに思える。

ふむ。ディーノ王には観光地として紹介しようか。

「えー、こちらから見えます小さな村が、僕が当初領主となったセアト村でございます。来たばかりの頃は木の柵とボロボロの家ばかりでしたが、今ではそれなりの防衛力となりました。城壁、門、堀が防衛の要であり、城壁の上に設置したバリスタが攻撃の要となります」

「バリスタ、か。防衛の拠点となる城や砦には設置してある場所もある。だが、それほど使い勝手が良いとも思えぬが」

ディーノ王の一言に、僕と同じく息切れしているアペルタが同意する。

「そうですね。バリスタは一定の距離と大きさの相手を攻撃するためにあり、発射後次射準備の時間も無視できない遅さです。取り回しが良いものではありません」

否定的な意見を言っているのに、ディーノ王とアペルタは面白いものを見るような目でこちらを見ていた。

なにを期待しているのか。

「……では、試しに」

そう前置きして、僕は城壁を見下ろす。

「ボーラさーん! 森に向かって一発どうぞー!」

指示を出してみると、城壁の上にいたボーラが拳を振り上げて応じた。

そして、ボーラが森に向かって矢を二連続で発射する。ここまで聞こえるような発射音と風を切り裂く音を鳴り響かせ、矢はまたも森の木々を雑に伐採した。

大木が幾つも倒れ、地響きが響く。

はっきり言って地味である。アーマードリザードなどが来てくれた方が良いアピールにはなるだろうが、中々そうはいかない。

そう思ったが、意外にもギャラリーはテンションを上げてくれた。

「……確かに、驚異的な威力と飛距離だ。それに、まさか二射連続で射てるとは」

「これは面白い。一流の弓使いや魔術師などに頼らずにあれだけの攻撃が出来るのは素晴らしいですぞ」

盛り上がる二人。ちなみにピスタの方も城壁の景色とバリスタに大喜びだ。

よし、掴みは上々である。

「それで、他には何がある?」

「他に?」

ディーノ王の問いかけに、思わず素で聞き返した。

村の防衛についてはそんなものだ。他に何があるわけでもない。

困っていると、アペルタが軽く咳払いをして地上を指差した。

「例えば、我々から見たらあの星型の城壁も不思議ですが?」

「あぁ、星型城塞。あれはバリスタを最大限に活かそうと思って考案しました。外側に突出した六ヶ所の三角形の城壁は広く、左右をカバーすることで防衛力を上げています。三角の部分を無視して城壁の薄い場所を攻めようとすると、合計三方向から集中的に狙われてしまいます。つまり、最初にあの三角形の部分を攻略しない限り、本当の城壁には辿り着けません」

そう答えると、ディーノ王とアペルタは顔を見合わせてから、また城壁部分を上から見た。

「……なるほど。あの矢が三方向から降り注ぐのは恐ろしいな」

「三角形の城壁も、通常の城壁一辺より破壊するのは難儀でしょうな。また、三角形の陰からはみ出しても他方向から矢が飛んできますぞ」

「む……これは確かに有用な形だ。いや、今のところ、空から以外は完璧な防備ではないか?」

そんなやりとりをする二人に、僕は腕を組んで唸る。

「空ですか。一応、試作品は幾つか作ってみてますが、実際に使ってみないと分からないですからね。いずれは対空兵器も披露したいと思います」

適当にそう答えると、二人は揃って眉間に皺を寄せた。

「……まるで、ヴァン男爵が作っているような言い方だったが」

「そう聞こえましたな」

訝しげに呟かれた言葉に、素直に頷く。

「そう言いましたが」

肯定すると、アペルタが鼻で笑い、ディーノ王が険しい顔で咳払いをした。

「言ったはずだ。嘘、偽りは許さぬと」

「誓って、嘘は吐いていません」

正直に全て言えというから答えたのだ。責められる謂れは無い。ヴァン君は怒っているぞ。

ぷりぷりしていると、二人は困ったようにパナメラを振り返った。すると、パナメラは深く頷く。

「疑う気持ちは分かりますが、先ずは話を聞いてみてください。もっと驚きますから」

そんな意味不明なフォローをするパナメラに、二人だけでなく僕も首を傾げる。

もう城壁もバリスタも見せた後だから、特に驚かせるものはないが。

そう思いつつ、僕達は揃って塔から降りて村を目指した。

「城壁の設計は誰が行ったのだ? 随分と特殊な作りと形だったが……」

「僕ですよ」

「むぅ……では、この街並みはどうだ。どう考えても数年を要する規模の都市開発だが、どうやって成し遂げた」

「僕が頑張って建てました。村人やパナメラ子爵の部下の方にも素材集めを手伝ってもらいましたよ」

答える度に、ディーノ王やアペルタの顔が曇っていき、ピスタは大興奮する。

これは、信じられていないようだ。

仕方なく、僕はセアト村の正面にウッドブロックを運んでもらった。

「なんだ、この素材は?」

「まさか、ダンジョンの新素材では……」

戸惑う二人をよそに、僕はイメージを固める。

あの、十連射を可能とする機械弓。最終的な目標は更に攻撃力の高い兵器だが、今はこれが最強兵器だ。

残りは大型化によって起きる耐久性低下の問題だ。

矢は重くなり、発射速度も上げた為に本体に掛かる負荷は比べ物にならない。

その問題を解消させるため、作りを変える。本体に当たる形で停止していた弦や、次矢装填の為の仕掛けなどを極力内部で衝撃が発生しないようにし、各パーツの厚みも増やした。

とはいえ、実際に動かさないとどの部品に負荷が掛かるか分からない。更には強化した部品が周りの部品に与える影響も分からない。

物作りはトライアンドエラーである。やってみて考えるしかないのだ。

そんな軽い気持ちで十連射式バリスタを作ってみた。

ちなみに、矢はまだ装填していない。

「うん、こんなもんかな」

そう呟き、振り返る。

すると、苦笑を浮かべるティル達と、絶句するディーノ王達の姿があった。