軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

隣の村の住人と冒険者達

パナメラ達の宿の為に用意した宿舎の前に、ボロボロの服を着た人たちが並び、建物を見上げている。

年齢はバラバラで、老夫婦が一組。中年の男女が三人。若い女性が三人。子供が五人だった。

合計は十三人だ。もう村では暮らしていけないと思い、命懸けで逃げてきた者たちだという。

「すごい……こんな立派な家に泊まれるなんて……」

「領主様の館より大きいような……」

「バカ、言うなよ。領主様が家交換するかもしれないだろ?」

と、子供が最後に失礼なことを言う。

ふふふ、お子様よ。外見だけじゃないのだよ。中身が大事なのだ。領主の館の方が家具はめっちゃ良いもんね。

そんなことを考えつつ、僕は皆に声をかける。

「それじゃ、歓迎会をするからね。三十分したら領主の館前に集合だよ」

「か、歓迎会?」

老人が困惑するが、準備があるのでそこそこに説明してその場を離れた。

「ティル、カムシン。村の人に声をかけてバーベキューの準備するって伝えて」

「はい!」

二人が走っていくと、様子を見ていたアルテがこちらに歩いてきた。

「あ、あの、彼らはどうされるのですか?」

隣の村の住人のことを気にかけるアルテ。

あ、アルテってフェルディナット伯爵家の令嬢じゃないか。敵対的行動というわけじゃないが、あまり心証の良くない行動をしてしまった。

だが、後の祭りである。

「うん。あの人達は隣の村の人達なんだけど、村が存続の危機らしくてさ。この村に逃げてきたんだよ。だから、食べ物と住む場所をあげようと思って」

「そうだったのですか。それは良いことですね。この村ならとても良い生活がおくれることでしょう」

と、ぼかして伝えたからか、アルテは素直に喜ぶ。いや、十歳なら隣の村と言われて何処の領民か、なんて思わないか。

「アルテも、この村に住むかい?」

そう聞いてみると、アルテは少し赤くなりながらも浅く頷いた。

「そう、ですね……私も、その方が幸せだと思います」

言葉を濁すアルテ。迂闊に答えないあたりはしっかりと教育を受けている。

「大丈夫。結婚とかは考えてないよ。僕達はまだ子供だからね。そんな話はまだまだ先だし」

そう答えると、アルテは泣きそうな顔で首を左右に振った。

「結婚はしたいのですが、私は……その……」

「え? 結婚したいの?」

思わず聞き返すと、アルテはピタリと動きを止めた。そして、徐々に赤くなり、最後はリンゴのようになってしまった。

「聞かなかったことにしようか?」

そう聞くと、アルテは俯きがちに口を開く。

「…………はい」

紳士たるヴァン君は淑女を恥ずかしがらせたりしないのだ。澄ました顔で無言で歩く。

紳士は心の中でガッツポーズである。

「あ、あの、ヴァン様……不思議な歩き方になってますが……」

「気のせいだよ」

アルテの疑問に至極真面目に答えると、アルテは難しい顔で頷いた。スキップくらいは許してほしい。男はモテたら有頂天になるものなのだから。

三十分後にはすっかりバーベキュー慣れしたパーティーピーポー達が、手慣れた様子で準備を終えて肉を焼いていた。

「今日は塩とレモンで食う」

「さっぱりして良いよね」

「私は揚げた方が好きだなぁ」

と、最近では貴族みたいな会話まで聞こえるようになってきたが、隣の村の住人達には信じられない世界だろう。

目を点にして大バーベキュー大会の光景を眺めている。

「た、食べていい?」

子供が辛抱できずに寄ってきた。僕はティルに肉焼きを頼む。

「ティル。脂が少ないお肉に軽く塩を振って焼いてあげてくれる?」

「まっかせてください! さぁ、こっちにおいでー」

ティルが子供達に声を掛けると、幼い歓声が上がった。ドタバタと駆けていく子供達に微笑み、どうしようかと戸惑っている大人達にも声を掛ける。

「どうぞー。好きに焼いて食べてね。お肉は横の皿にあるのを選んで。味付けは塩かレモン。胡椒や生姜もあるけど少ないから、一回焼く時にひとつまみまでだからね?」

そう言って肉を焼いてみせると、大人達も肉に飛びついた。

各自で肉を焼き出し、味付けをする。ほぼ全員が肉が完全に焼き終わるまで待てずに生焼けの肉を口に運んだ。

それでも涙を流して「美味い、美味い」と笑い合う人々に、この村の住人達も嬉しそうに笑う。

もちろん、僕達も嬉しい。

皆で大いに肉を堪能し、一時間が経過した頃、オルト達が帰ってきた。

「うぉ!? バーベキューじゃねぇか!」

「今日あるの知らなかったわ」

「だから早く帰ろうと言いやしたぜ、旦那」

わぁわぁ言いながら血で汚れたオルト達が現れ、僕達は目を丸くする。

「え、大丈夫?」

「どうしたんですか、その血は!?」

僕とティルが同時に口を開いた。

オルトは自らの鎧に付いた血を見て、困ったように笑い、言いづらそうに口を開く。

「す、すみません」

「何が?」

謝るオルトに意味が分からず首を傾げる僕。

すると、オルトは乾いた笑い声を上げて、報告した。

「ははは……ダンジョンの入り口、発見しちまいましたよ」

「へぇ、ダンジョン」

ん? ダンジョン?

オルトの報告に、僕を含む大勢の時が止まり、同時に顔を見合わせた。

ダンジョン。黄色い鳥とか太った商人とか小さなモンスターとかも挑戦したがるアレだ。だいたい凄い財宝があったりする。

と、現実逃避をしていると、エスパーダが音も無く現れた。

「ヴァン様。ダンジョンを発見したならば、速やかに報告しなければなりません。王都に遣いを出さなければ」

「……急がないと、間違いなくダディが全部持っていってしまうよね?」

「間違いありません。誰にも知られずに王都にて一番に陛下に報告をするのが最善でしょう」

勿論だとエスパーダが頷いて答える。

理想は男爵となり、褒美に今の村を領地としてもらってからダンジョン発見を報告したかったのだが、見つけてしまったのなら仕方ない。

話でしか知らないけれど、ダンジョンの利益は凄まじい。

ダンジョンでしか手に入らないお宝や素材、鉱石などもあるという。

間違いなく冒険者ギルドの支部が建ち、それに合わせて武器防具の店や宿屋も出来る。そうなれば野郎共ばかりだから娼館も出来るし賭博場も出来たりする。

賭博場と娼館はアプカルル達の湖みたいに住居から離した方が良いかな。ダンジョンとの間に第二都市みたいなの作った方がスムーズかもしれない。

色々考えてみたが、やはり人手が足りない。

「……す、すみません」

本来なら喜ぶ話だが、オルト達は申し訳無さそうに頭を下げた。

「まぁ、発見しちゃったなら仕方ないよ。馬一頭貸すから、王都まで報告を依頼したいんだけど……クサラに」

「あっし一人でですかい!?」

指名すると、クサラが飛び上がって驚いた。

「クサラさんなら一人でも大丈夫そうだしね。どうせダンジョン見つけちゃったのも斥候のクサラさんでしょ?」

「うっ!? な、何故それを……!」

呻くクサラに、オルトが困り顔で口を開く。

「確かにクサラはそういったことに適任ですが、俺らも付いていった方が……」

「それが、オルトさん達には隣村まで住人の護衛をお願いしたかったんだよね。報酬は二週間はかかるだろうし、大金貨一枚くらい?」

そう答えた瞬間、オルトやプルリエル達はクサラに向き直り、頭を下げた。

「一人で王都まで、気を付けてな!」

「ひでぇ奴らだ!」

あっさり裏切ったオルト達にクサラが怒鳴る。

流石に可哀想なので、僕は貴重な装備を報酬にすることにした。

「仕方ない。貴重なミスリルの短剣作ったからあげるよ。これが報酬で良いかい?」

そうクサラに尋ねると、クサラの顔が笑みの形で固まった。

「ちょ、待て! クサラ、俺と代われ! 俺が一人で王都まで行くぞ!」

「狡い! 私が行くわよ!」

オルトとプルリエルが血相を変えてクサラに迫ったが、クサラは二人の肩に手を置き、微笑む。

「あっしが依頼されたんでさぁ。残念でしたねぇ、旦那がた?」

そう言って、クサラは高笑いをしたのだった。