軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

完成祝賀会と出航

試作船とはいえ、大型船の完成である。船が完成したその日は皆でパーティーというのが世界の常識というものであろう。だから、僕は侯爵に無理を言って街の美味しい食堂を貸し切ってもらい、主要なメンバー全員で完成祝賀会を行うことにした。イェー、レッツパーリー!

柑橘系の香りがするお気に入りの果実水をもらい、魚料理を前にウキウキである。すると、皆の前に飲み物が並んだのを確認して、ロッソが口を開いた。

「……さて、それでは晩餐会を始めよう。此度は新たな国や、我が国であっても侮れないほどの新技術との出会い。そして、それを自国のものにしようと実施した調査や研究……これらは皆に多くの不安と苦労を与えた出来事だっただろう。しかし、今回の試作船の完成により、一定の結果を出せたと思っている。我らが成した行動の数々は我が国を確実に強くし、より良い未来へと進むための原動力となったのだ。今日はそのことを胸に、皆で喜びを分かち合いたいと思う」

ロッソが何やら難しいことを言っているが、僕はまだ湯気が出ている美味しそうな料理を見つめ続けていた。そろそろ食べないと冷めてしまうのではないだろうか。今がまさに美味しい時。表面がパリッとしてそうだが、冷めてしまってはその食感も半減してしまう気がする。

ハラハラしながら料理を眺めていると、不意にロッソがこちらに顔を向けた。

「特に、今回の様々な苦難を打ち破るのに大きな貢献をしてくれたヴァン・ネイ・フェルティオ子爵。フィエスタ王国の船の調査、研究。そして、大型船の造船……正直、これらは卿がいなければ成し遂げられなかっただろう。いつかは完成していたかもしれないが、何年……いや、何十年も掛かっていたに違いない。ヴァン卿の功績は多大なものである」

「え? いえいえ、そんなことないですよ。皆さんが頑張ってくれたおかげですから」

条件反射で日本的な遠慮と謙遜を披露しつつ、他の料理も見た目から味を予想してみる。あちらは揚げてあるからサクサクしているかもしれない。中身はきっとジューシーだ。

真剣に料理を見ていると、ロッソが笑みを浮かべてグラスを手に取った。

「さて、料理が冷めてしまう前に乾杯するとしようか。ヴァン卿には後日、陛下と相談して報奨を決めるとしよう……それでは、乾杯!」

ロッソの合図とともに、皆がコップやグラスを掲げて歓声をあげる。そして、僕はすぐにティルに料理を取り分けてもらい、食した。

「美味しい! これ! こっちは前にも食べたけど、この料理は初めてだね」

魚を揚げた料理を食べたのだが、予想外の味に驚いて声を上げる。衣は予想通りサクサクで少し甘みがある感じだったが、魚の食感と味が想像と違ったのだ。なんと、食感はハムに近い。下味が付けられているのか、白身魚の上品な味と共に甘辛い味が口の中に広がる。

感動して口いっぱいに料理を頬張って食べていると、何故か店の中が笑い声に包まれた。気が付けば、皆が僕の方を見ているではないか。いつの間に注目を集めてしまったのか。恥ずかしい。

そんなことを思っていると、ロッソが楽しそうに笑いながら歩いてきた。

「このような晩餐会は私も人生で初めての経験だな。中々面白い趣向だが、気に入った」

「そうですか。僕は何故か笑われてしまったようで恥ずかしいです」

「はっはっは! 皆、卿のことを慕っておるのだよ。羨ましいくらいだ」

不貞腐れながら食事を継続していると、ロッソは楽しそうに笑いながら果実酒を口にする。ふと見ると、あまり会話をする機会がないからか、ハベルやオルト達のところにも多くの騎士が集まっていた。僕やロッソ、パナメラ、アルテが一つのテーブルを囲んでいるので、流石にこちらには騎士達は集まってこない。

代わりに可愛いメイドさんと、こんな場でも僕を守ろうと周囲を警戒する少年騎士の二人は、ディー達と一緒に隣のテーブルで食事をしているが。

「カムシン。後でラダヴェスタさんにもお肉を持っていこうね。その時はハベルさんも一緒に連れていこうかな」

「あ、そうですね。ちょっとお店の方に伝えてきます」

カムシンはすぐに立ち上がり、店の奥へと注文しに行った。それを見送り、店内の賑やかな様子を眺める。楽しそうな笑い声が聞こえてきて、見ているだけで幸せな気分になれる気がした。

「……楽しそうですね、ヴァン様」

アルテにそう言われて、照れつつも頷く。

「そうだね。皆が楽しそうだと嬉しいなぁ」

そう答えると、アルテはとても嬉しそうに微笑み、小さく頷いたのだった。

翌日、記念すべき試作船の初めての航海を実行する日が来た。もちろん、最初は陸地が見える範囲の近い距離だけだが、それでも楽しみである。

海岸には、記念すべき日ということもあり、昨日よりも更に人数が集まっていた。皆に見守られながら船に乗り込み、船尾から顔を出して海岸に集まる人々へ手を振る。

「航海の無事を祈る!」

海岸に残ったロッソが大きな声でそう言うと、皆も大歓声を上げていた。今回は安全確認も兼ねているということで、乗るのは僕とディー達だけだ。

そう思っていたのだが、何故か女性の声が聞こえてくる。

「パナメラ様。海の魔獣はご覧になったことがありますか?」

「む、無いな。だが、出ても私が燃やすから大丈夫だ」

パナメラとアルテはそんな会話をして笑っていた。華やかで良いが、二人とも海岸に残ってもらいたかった。僕の隣でニコニコしてるティルも同様である。しかし、何故か船に乗りたがる三人。仕方ないので、最初は本当に近い所までにしておこうか。

そんなことを思いつつ、ディーを振り返る。

「準備は良い?」

「はっ! いつでも出発できますぞ!」

ディーの力強い返事を聞き、海岸に顔を向けた。

「それでは、行ってきます!」

手を挙げてそう告げると、大歓声が返ってくる。まるでライブが始まるような盛り上がりだ。やぁ、今日は僕のライブに来てくれてありがとう。ヴァンと愉快な仲間たちのワンマンライブが始まるよ。

「よし、ディー。出航しよう!」

「はっ! 出航!」

僕の指示を聞き、ディーが号令を発する。皆が一斉に動き出し、風の魔術適性を持つ魔術師が詠唱を開始した。