軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

アドバイザーを勧誘したい

トランの船であるフリートウードから船員が二十名ほど来て、試作品の船に乗船した。船員達が驚きながら、帆を張ったり舵輪の動きを確認したりする様子を眺める。

「ヴァン様、マストの梁を多少可動させることが出来ると帆に角度が付けられます。少しの変化ですが細かな動きの差、安定感に違いが出るでしょう」

「ヨットみたいだね。風の魔術があるからこそかな?」

「ヴァン様、錨の上下に使う滑車は改良した方が良いでしょう。これではどんな怪力でも……」

「え? ディーは一人で引き揚げたよ?」

「わははは! まぁ、良い運動になりますな!」

「ば、化け物ですか……?」

そんなこんなで細かなところにトランから助言を受け、その内容をメモしていった。トランは予想以上に積極的に船の確認と助言をしてくれる。

「後は船内に水が入りこんだ際に浸水を防ぐ仕組みが数か所は必要です。この大きさの船であれば、一階と二階は切り捨てて完全に浸水しても何とか沈まずに済みます。しかし、三階まで浸水が始まればどうしようもありません」

「なるほど。あ、そういえば船体に穴が空いた時はどうするんですか?」

「応急処置として土の魔術で塞ぎます。浸水が止まったら急いで補修用の資材で穴を塞ぐ、という流れですね」

「おお、魔術で……」

色々と予想外の回答を聞きつつ、メモを取る。

「後は、水中の様子が分からないので判断が難しいところですが、横波に対する安定感が欠けています。恐らく、船底付近に横翼という板が付いていないのではないですか? 横翼を付けると船体が安定します。板を大きくすると速度を出した時に安定しますが、その代わり向きを変える速度が遅くなります」

「おうよく……なるほど! それは確かに安定しそうですね!」

「……二人とも、話が盛り上がっているところ悪いがそろそろ戻って食事としないか? もうすぐ日も暮れるぞ」

と、トランと一緒に船の中を練り歩くこと三周目でパナメラから声を掛けられた。周囲を見回して甲板の様子を確認すると、皆が苦笑を浮かべてこちらを見ているではないか。どうやら熱中し過ぎて周りが見えていなかったらしい。

「も、申し訳ありません。それでは、トリブートに戻りましょう。あ、トランさん達も一緒に夕食をいかがですか?」

「夕食、ですか」

「美味しいお店を見つけました! というか、まだその店しか知りませんが……」

そう言って夕食に誘うと、トランは楽しそうに笑った。

「はっはっは! それなら、我々の方がトリブートに詳しいようですね。なら、少し町の外れになりますが美味い肉料理の店を知っていますよ」

「本当ですか! トリブートと言えば魚料理と思っていましたが、確かにお肉も良いですね! では、そこにしましょう!」

トランの言葉に大喜びで同意していると、ロッソが苦笑しながら歩いてきた。

「ふむ。どうせなら我が館で晩餐をと思っていたが、どうやらヴァン卿の方がトラン殿と打ち解ける術を持ち得ているようだね。そうだ。もし良かったら私もその晩餐に参加しても?」

「えぇ!? 侯爵様がお店で食事を!?」

ロッソの発言に驚愕して一歩後退る。仰け反るような恰好で驚いていると、パナメラが不服そうな顔で肩を竦めた。

「私だって時々は少年と一緒に一般の飲食店で食事をしていた筈だがな。閣下との違いに差別的なものを感じるぞ」

「それはすみません!」

脊髄反射で謝罪をしておく。とはいえ、本人が成り上がり者と自称するだけあり、パナメラに貴族らしさはあまりない。むしろ傭兵団の団長とか山賊の頭領とかの方がイメージに近い。騎士を引き連れて飯屋に行って酒を浴びるように飲む姿が目に浮かぶようだ。しかし、ロッソは見るからに生粋の貴族である。とてもではないが、一般人が食事をしている店で一緒に食べている姿が想像できない。

「む? 少年、なにか失礼なことを考えていないか。私の勘が……」

「ぱ、パナメラさんもご一緒しますか!? お肉ですよ! あ、お酒もありますよね!?」

「あ、ああ。酒の種類も豊富で部下達からの評判も良かったと……」

半眼でこちらを見てくるパナメラから逃げるようにトランに話を振り、トランは空気を読んで対応してくれた。

「話を逸らしていないか、少年」

「パナメラさん! お肉とお酒を奢りますよ!」

「むむ、肉と酒か」

満更でもない。そんな顔をしてパナメラは引き下がった。危機を脱したとホッと胸を撫で下ろしていると、ロッソが肩を揺すって笑う。

「ははは! いや、楽しそうで何よりだ。是非とも、仲間に入れてもらいたいものだが、どうかな?」

ロッソのその言葉に、思わずトランに顔を向ける。すると、トランは苦笑しながら頷いた。

「もちろんです。伺いたいこともありますので」

こうして、世にも珍しい組み合わせの食事会が決定した。大侯爵ということで構えていたが、ロッソのフランクさには驚くばかりである。