軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

説明しよう!2

船の内部に皆を連れていく。甲板にはキャプテンシート付の船橋、ブリッジもあるが、それは最後にしようと思っている。

「まずは一番下の一階部分ですね。甲板を地上とすると地下三階となります。船の背骨である竜骨という船底の中心を走る大きな木があり、その上には錘となる岩を並べてあります。後は波を受けた時に船体の重心を調整する為の海水が船の壁面の内側に入っています」

「船の壁の中に海水? 大丈夫なのか?」

パナメラに心配そうにそう聞かれ、頷き答える。

「そうですね。漏れないように工夫はしていますが、まだ運用していないので分かりません。一応、重心が揺れに応じて移動することで、船体の横揺れが抑えられると思っています」

質問にも答えながら、どんどん説明をしていく。

「二階は船室となります。船員や来客用の寝室、食堂もありますね。諸事情により、厨房は三階となりますが」

「ふむ、浴室はないのか?」

「浴室は難しいですね。海水を真水にする為の濾過機は設置してみましたが、真水をどんどん使えるほどではありません。ちょっとその辺りは考えないといけませんね」

「雨水を溜めて煮沸するという手もあるぞ」

「あ、それは良いですね。それも検討してみます」

そういった雑談なども交えながら、甲板まで戻ってくる。

「ということで、倉庫や資材は三階部分で管理しているので、船からの積み下ろしは楽にできるはずです。さて、それでは船橋に移動しましょう」

皆を引き連れながら、最後に甲板に設置した二階建てのブリッジへと移動した。遠くを見渡せるような高い視界を確保しつつ、寛げるようにゆったりとした造りにしている。

まだ動かしてもいない舵輪に手を置き、ロッソがブリッジからの景色に感嘆の声を漏らした。

「……本当に驚きだ。僅か半日でこれほどの船が出来上がるとは」

ロッソがそう言って室内を見渡していると、パナメラが苦笑しながら首を左右に振る。

「ヴァン子爵の魔術には毎回驚かされておりますよ。それに、この素材は元が木材とは思えないほど頑丈で劣化しません。恐らく、船としても最上級の素材となるでしょう」

パナメラがそう口にしてから、ちらりとトラン達を見た。すでに、トラン達は警戒心よりも恐怖心に近い表情でこちらを見ている。一方、ディーは無念そうに溜め息を吐いた。

「……このような船は初めてです。しかし、こういった船が戦場の行方を左右するようになると、剣は不要になるやもしれませんな」

残念そうなディーのその言葉に、苦笑しながら否定しておく。

「いやいや、結局は武器を持って近接での戦闘も必須になるよ。必ずバリスタで決着がつくわけじゃないし、船同士で戦う場合は相手の船に乗り込むこともあるだろうし」

と、ディーには説明しておく。その説明を聞き、ディーは胸を張って笑った。

「おお、そうですか! ならば、今まで通り剣の腕を磨いておきましょうぞ! わっはっはっは!」

単純明快である。まぁ、ディーなら船も斬り捨てるようになりそうだし、訓練に励んでもらうのは問題ない。

そんな会話をして笑っていると、トランが部下達を連れてこちらに歩いてきた。

「……ヴァン子爵」

「はい?」

名を呼ばれて返事をしつつ振り返る。ふと見ると、笑いながらもディーは剣の柄に手を置いていた。カムシンもそっと僕の斜め後ろに立っており、護衛はバッチリである。

安心してトランに体ごと向き直ると、トランは険しい顔で僕を見下ろした。

「……この造りを見れば、我が船を詳しく調査したことは理解できます。しかし、本当にこれを一日で? いや、夜間には見当たらなかった……つまり、半日で、造船を?」

自分で言いながらも、トランの顔には信じられないと書いてある。まぁ、そりゃそうだよね。船に詳しければ詳しいほど信じられないと思う。

「あ、お知らせしておきますが、この船は急ごしらえの試作品です。ざっくりと形だけを真似して作っただけなので、トランさんに助言をいただけたらと思っています」

正直にこちらの思惑を話し、トランの顔の変化を観察する。そこには疑念や警戒心だけでなく、困惑や不安といった色も見えた気がした。

黙り込んだまま、じっとこちらの目を見てくるトランだったが、やがて溜め息を一つ吐いて首を左右に振った。

「……まるで邪気がない。もしこれでヴァン子爵に騙されていたとしたら、このトラン・ブロンコに見る目が無かっただけのこと。そう思うことにしよう」

トランは脱力感を混じらせた声でそう呟くと、息を漏らすように笑った。そして、ロッソに目を向ける。

「ロッソ侯爵。この船はヴァン子爵の持ち物という認識で間違いありませんか」

「ふむ、そうだね。ヴァン子爵がいなければ作れなかったのだから、ヴァン子爵の物という認識で間違いない」

ロッソがそう答えると、トランは頷いて振り向いた。

「それでは、ヴァン子爵。まずはこの船を我々の手で動かす許可を下さい。実際に動かして挙動の確認をします」

「協力してくださるんですか!? わぁ、ありがとうございます!」

「ははは……専門の設計士ではないので、あまり期待はしないでくださいよ」