軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

海洋国家フィエスタ王国

突如として海に船が現れた際は住民達も大いに驚いたらしいが、敵対的行動をしてこないと分かってからは往来する人々の口からも噂が広がり、見物に来る人も多いとのこと。

今ではある意味で観光名所のようになっている。

「……船旅二週間。もし船の速度が時速十キロなら一日に八時間進んでも八十キロ掛ける十四だから、千百キロ以上? 時速五キロなら約五百キロか……めっちゃ遠い気がするけど、大陸間を渡るほどの距離じゃないよね、多分」

もらった情報から頭の中で地図を広げて大陸から島までの距離を想像する。はっきり言って、帆船の速度など知らないのでかなり曖昧だ。馬車の速度よりは遅いだろうから、時速十キロから五キロの間ではないかと想定しただけである。

とはいえ、島国の存在は興味深い。そもそも、どうやってそこに住む人々は島に辿り着いたのか。遥か昔に陸地が地殻変動などで分かれてしまったのか。それとも、命がけで海に船を漕ぎだした者たちの中で奇跡的に島へ辿り着いた者たちなのか。

気になることはいくらでもある。

「フリートウードからの使者が現れたのはもう三日も前だ。明日か明後日にも再び使者は現れるだろう。その時、一緒に会合に参加すれば良い」

ロッソは気軽な様子でそう言っていた。どうやら、フリートウードは必要な物資を購入する為に、時々トリブートへ小舟を出して買い出しに来るらしい。その際、ロッソへの挨拶などもしているようだった。

「フリートウードの責任者はトラン・ブロンコという男だ。フィエスタ王国は国王と評議会が国を運営しており、その決定に従って此処を目指したようだ。現在は近辺の調査をしつつ戻る為の準備をしていると言っていた」

「閣下としては、そのフィエスタ王国に興味は?」

「それは勿論ある。しかし、現実的に考えて海を何日も彷徨うような真似は危険すぎる。それに、彼らは自らの島の位置までは教えてくれなかったんだ。辿り着くことは難しいだろう」

ロッソのその回答に、納得しつつも疑問は残る。

「……これは、どうにかしてそのトランさんに会ってみたいですね」

そう言うと、パナメラがフッと笑みを浮かべた。

「興味が湧いたか? ようやく少年らしくなってきたな」

そんなやり取りをして、ロッソとはその場で別れた。何故なら海辺に到着した段階でアルテ達は砂浜で遊びだしたからだ。本来ならアルテも伯爵家令嬢として正式に挨拶すべきだろうが、込み入った話が多かった為、ものすごく簡易的な挨拶のみで済ませた。

「うわー、すごく楽しそうですね」

「俺も初めて海を見た時は感動しましたよ」

アーブとロウが浜辺で遊ぶアルテやティル達を見てそんな会話をしていた。親戚のおじさんか、君たち。

一方、ディーとエスパーダ、タルガの三人は船を見ながら真面目に議論している。

「あれにヴァン様のバリスタが付けば、どの国にとっても脅威となりますな」

「これまで大半の国が海に向かって防衛線を築いておりませんでしたから、船による侵攻が可能になったら認知されて対策を取られるまでの数年……いえ、十数年は一方的に攻撃をすることが出来るでしょう。対抗することが出来るとしたら、ソルスティス帝国の所有する火砲だけかと」

「魔術でも対処は難しいですね。バリスタを止めようと思ったら石の壁でも簡単ではありません」

「後は防衛する箇所が極端に広範囲となってしまいます。どうやら、フィエスタ王国はソルスティス帝国との交易は出来ていないようですが、もし火砲を入手したら状況は一変しますね」

「むむむ……海を移動するという手段。これは今後間違いなく重要な戦術の一つとなりますな!」

三人は戦争という観点から、船の有用性について熱く語り合っている。

しかし、船というものは他にも優れている点が幾つもある。それが可能になれば、面白いことになるのは間違いないだろう。

そう思っていると、パナメラが腕を組んで意味ありげな顔で僕を見ていた。

「……少年。また何か面白いことを考えているだろう? 教えろ」

「ガキ大将みたいですよね、パナメラさんって」

ド直球な言い方に苦笑してそう答えながら、頭の中で練っていた構想を軽く説明する。

「川で使っている船って、物資を輸送する手段として使われますよね。でも、あまり大きな川では使えなかったから船も小さかったと思いますけど……海をあの大きな船で移動できるなら、物資も凄い量が一気に運べるということになります」

「……なるほど。それは、確かに脅威だな。海なら誰にも邪魔されずに物資を運ぶことが出来る。兵についても同様か。あの船なら百人は運べそうだ。そうなってくると、好きな場所に魔術師百人を運ぶという戦略も可能だろう」

僕の言葉を聞いて、パナメラは一瞬で表情を変えた。すぐさま船の有用性に気が付き、自分の中で使い道について検討を行い始めたようだ。流石の嗅覚である。

「問題は、作れるかどうかかな」

ぶつぶつと呟きながら思考を整理するパナメラを尻目に、海に浮かぶ美しい船へ視線を移す。あの船があれば、このトリブートはスクーデリア王国内で最も重要な港町になるだろう。スクーデリア王国内だけでなく、イェリネッタ王国との航路も作ることが出来る。これまで獲ることが出来なかった海産物などの特産品も生まれるし、上手くいけばフィエスタ王国との交易の窓口になることが可能だ。

これは、何が何でも周辺諸国に先んじてスクーデリア王国が大型船を手に入れる必要があるだろう。