軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ヴァンの到着

陽が落ちる頃。向かう先の空は綺麗に赤く焼けていた夕焼けから、徐々に火が消えていくように暗くなっていき、赤い空もうっすらと焼け跡を残す程度となっていた。

西の空の山々がシルエットを残し、そこから下は黒く染められている。普段ならその景色は変わらず、近づくまで山の麓に何があるかも分からないだろう。

だが、今この瞬間は違った。

遠くで炎が見えたと思ったら、爆発音が反響しながらこちらまで届く。断続的に炎が上がり、山の麓に建物の影が浮き上がる。

「……すごい攻撃されてる感じ」

「すごく攻撃されていると思いますが」

一言呟くと、セアト騎士団の臨時騎士団長に任命されたロウが神妙な顔で返事をした。よく見れば、山と山の切れ目に飛竜らしき影も時折現れている。

「近づくと危なそうな気がするけど、気のせいかな?」

「間違いありません。危険です」

危ないのではないかと尋ねると、危険だと肯定されてしまった。気分は超ブルーである。

「……随分と余裕を見せているが、目下攻撃を受けている要塞にフェルティオ侯爵もいると思うぞ?」

流石に見かねたのか、パナメラが後ろからそんなことを言ってきた。若干呆れた雰囲気が声からも感じられる。

いや、分かってますよ。かなり遠くからでも炎が空に向かって噴出されたのを見てるし、現場ではマイダディが文句言いながらシェルビアとイェリネッタの連合軍を押しとどめているに違いない。まぁ、マイダディがあっさり死亡するなんてことはないだろうし、もしマイダディがあの場にいないとしたらもう陥落していてもおかしくない。

まだ戦闘続行中である以上、マイダディは元気いっぱい火と戯れているに違いないと判断した。

「……まぁ、あれだけどっかんどっかんやられていたら、流石に厳しいかな。怒られるかもしれないけど、そっと参加しようか」

仕方ないなぁ、マイダディは。

そんなノリで要塞センテナに背を向けて、我がセアト騎士団に振り返る。とはいえ、我がセアト騎士団は僅か数十人。対してパナメラ騎士団は五百を超える人数である。上級貴族と比べれば悲しいほどに少数ではあるが、間違いなく精鋭だ。比べると寂しくなるので、さっさとセアト騎士団へ指示を出すことにした。

「はい! それでは作戦の説明をします! 超最強連射式機械弓部隊の皆さんは装甲馬車のバリスタを準備して、最後尾から付いてきてください! 先頭にはアルテ嬢の人形が立ち、頃合いを見て先行します! まずは、全員が要塞センテナ内に辿り着くこと! その後は一先ずセンテナの補修と改善をして防衛力を保持させる予定です! 何か質問がある人いますか?」

パナメラ騎士団もいる為、何となくいつもより丁寧に説明をしてみる。セアト騎士団は特に質問はなさそうだったが、パナメラが腕を組んで首を傾げた。

「ちょっと待て、少年。アルテ嬢の人形とは、例の傀儡の魔術か? 申し訳ないが、あの激しい戦場に人形を一体二体連れていったところで、効果はあるのか?」

パナメラが少し厳しい言い方でそう告げる。それは戦場の過酷さを知るが故の言葉だろう。しかし、その心配は見当違いである。なにせ、今のこの状況に限れば、アルテが最大の戦力であると言っても過言ではないのだ。

その事実を知らないパナメラに対して、謎の優越感を持ちつつ微笑む。

「ご安心ください。アルテはやる子ですよ」

そう答えると、パナメラの目が細く尖った。

「……何故か腹が立つ笑みだな。まぁ良い。そこまで言うなら、あの装甲馬車の中で人形を使うのならアルテ嬢の参戦を認めるとしよう」

僕の自信を察したのか、パナメラは自ら妥協案を口にしてこちらの返答を待った。パナメラはアルテに対しては少し過保護なところがある。女子供だからという理由ならヴァン君という天才少年のことも過保護に接してほしいものである。

いや、今はそんなことを考えている時間もない。

「さて、それではパナメラ子爵の騎士団の運用についてですが、どうします? 個人的には少数ずつでばらばらに行動した方が被害は最小限になるかと思いますが」

「ふむ。重要な要塞が今にも陥落寸前なのだから、敵の目がこんな少数の援軍に向くとは思えないが……ならば、速度重視の騎兵のみで一部隊、他は半分に分けて目立たないように左右からセンテナを目指すとするか」

「はい、お願いします。それでは、早速行動開始といきましょう!」

と、簡単に作戦を決めて、すぐに行動を開始した。セアト騎士団も装甲馬車の変形やバリスタの準備は手慣れたもので、すぐに行軍できる状態となる。

「よし、突撃ー」

「……少年、気が抜けるぞ。もう少し腹に力を入れて指示を出せ」

こうして、僕たちは早速要塞センテナの防衛に向けて動き出したのだった。