軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

セアト村の状況

ヤルドとセストは不服そうでありながらも、不承不承陛下の言葉に同意した。

その後、ヤルドとセストがセアト村の中を見学するというので、セアト騎士団の団員を二人付けて見送った。陛下が村の中をまだ見て回りたいと言われるので、ヤルド達とは別行動することにしたのだ。

ちなみに、ヤルド達の宿泊先は準備しているので問題はないだろう。てっきりマイダディが一番に来ると思ったので、良い部屋を用意していたが、仕方あるまい。せっかくだから豪華な宿に泊まって大いに驚いてもらうとしよう。

そんなことを思いながら城壁の上に上がると、陛下がセアト村の中を見下ろして口を開いた。

「訪れる度に男爵の領地は新しいものが出来ているな。卿のことだ。もう次の計画などもしているのだろう?」

そう言われて、僕は街道の方向へと目を向ける。釣られるようにしてその場にいた皆が僕の視線を追った。

城壁の下には川の水が流れ込む堀があり、その堀はセアト村奥にある湖へと通じている。そして、その湖の奥から水が流れ出るようになっており、少々遠回りはするが元々の河川の下流へと戻るようにしていた。

その川の上流に目を向けて、指で川の流れをなぞるように指し示す。

「幾つか考えていますが、一つはこの川を使って物流を良く出来ないか、ということですね。ただ、運河にするには川の幅が小さいので、荷を載せる船を小さくして何艘か繋いで引けたら重量のある荷も一度に運べると思います。後は、せっかくドワーフの職人さん達が村に住んでくれるようになったので、武具以外の部分も作れるようになると良いと思っています。例えば、目の悪い人のための視力矯正用眼鏡や、より精確に姿を反射する鏡。ああ、楽器なども良いですね。賑やかな音楽がある町はとても魅力的だと思います」

物流や、生活環境の向上。娯楽の提供といった部分に着目して未来のセアト村について語る。何人かが唖然とした顔をしていたが、無茶な未来図に聞こえただろうか。いやいや、理想を語ることで文句を言われたところで気にする必要はない。

必ず実現してみせるのだから問題ないのである。

そんなことを思っていると、パナメラが不敵な笑みを浮かべて城壁の上のバリスタを指差す。

「もう新しい兵器の開発はしていないのか?」

その言葉に、腕を組んで唸った。

「う~ん……一応、考えてはいるんですが、材料が足りないんですよね。もし想定通りのものが出来上がれば、このバリスタの十倍は強力な兵器になる予定ですが」

溜め息混じりにそう告げると、陛下が目を皿のように見開き、目を瞬かせた後噴き出すように笑いだした。

「はっ! はっはっはっ! 全く、とんでも無いな! よくもまぁ、そんなに多岐にわたって思考をすることが出来るものだ!」

愉快そうに肩を揺する陛下に、他の貴族達は警戒するような目で僕を見た。どうやら、僕が陛下に気に入られていると判断しての警戒らしい。こんなに無邪気な少年を何故警戒するというのか。

「いや、少年の作りだす兵器は恐ろしいまでの性能だからな。陛下だけでなく私も楽しみにしている。とはいえ、今はイェリネッタ王国への侵攻という重要な作戦を決行中だからな。既存の武器類で良いから、出来るだけ多くの武器を供給してもらいたい」

パナメラがそう言うと、陛下も頷いてウルフスブルグ山脈の方角を見た。

「……確かにな。今は出来るだけ急ぐ必要がある。今のところ優勢とはいえ、相手はドラゴンを使役し、黒色玉なる新兵器で強力な攻撃をしてくるのだ。油断はならん」

目を鋭く細めつつ、陛下がそう呟く。すると、それを聞いていた他の貴族が不安そうに眉根を寄せて僕を見た。

「ヴァン男爵……噂では、イェリネッタは黒色玉を超える新たな兵器を出してきたという。それはいったいどのようなものだろうか? 報告書には目を通したのだが、中々想像が難しいのだ」

その質問に、皆の視線が集まってきた。どうやら、例の原始的な大砲について聞きたいらしい。まぁ、原始的とはいってもその威力、効果については十分過ぎるほどの脅威である。

ただ、命中率はかなり低い筈だ。巨大な城壁を狙って何発か発射し、ようやく一発当たるかどうかだろう。そんな状況でも、発射時の轟音や着弾時の衝撃は兵士たちの心を折るに違いない。馬なども臆病な性格だから大いに混乱するだろう。

特に、魔術師は脅威と判断するに違いない。使い方次第だが、強力な魔術師を保有することの優位性が崩れてしまうのだから。

と、余計なことを考える前に陛下の質問に答えなくてはならない。そう思い、頭を軽く左右に振って口を開く。

「そうですね。僕が考えていた兵器も似たような仕組みを利用するつもりですが、まずはイェリネッタ王国の新兵器からご説明します」

そう言ってから、陛下の前に木を使って模型を作成する。形はちゃんとイェリネッタの使う大砲と同じものだ。急に模型が出来て驚いたのか、ざわざわと騒ぐ声が陛下の後ろから聞こえてきた。

「ふむ、思ったより大きくないのだな」

陛下は冷静にウッドブロック製の大砲を観察して感想を述べる。それに頷きつつ、僕はバリスタを指差す。

「バリスタは弦の長さと素材が大切になります。同じく、投石器なども加速する時間を得るために大きくなってしまう傾向にありますね。しかし、この新兵器は違います。この筒の中に大量の黒色玉を入れ、次に鉄球などの飛ばしたいものを入れます。そして、中の黒色玉を爆発させる……これにより、恐ろしい速度と威力の球が射出される、という兵器です。なので、耐久力さえあるならば小さくても問題はありません」

簡単に大砲の原理について解説する。陛下はとても興味を持ったらしく、大砲の筒を覗き込んで頷いた。

「この筒の穴と同じ大きさの鉄球を飛ばす、ということか。それはかなりの威力になるだろうな。とはいえ、それだけであれば卿の作ったバリスタの方が遥かに脅威的に思えるな」

陛下にそう言っていただけて、素直に喜ぶ。自分で作ったバリスタが大砲よりも優れていると評価してもらえたのだ。嬉しくないわけがない。

しかし、残念ながら現実はそう簡単なことではない。

「……正直に言えば、今この瞬間ならイェリネッタ王国の扱う新兵器よりも僕のバリスタの方があらゆる面で優れているでしょう。しかし、この新兵器はまだまだ進化する余地があります。対して、バリスタは数を増やしたり、大型化する以外の方向性が見つけられません」

そう答えると、陛下は真剣な表情で大砲を睨んだ。

「……この兵器は、より進化するということか。いずれは、ヴァン男爵のバリスタをも超えると踏んでいるわけだな?」

素早く僕の説明を理解し、脅威についても把握してみせる陛下。流石である。普通は、見たこともない兵器を見せられて更に未来の話などされても頭が追い付かないだろう。

陛下の言葉に頷き返し、試しに想定していたヴァン君特製超最強ロマン砲を隣に建造してみた。材料は木材しかなかったため、今すぐ使えるわけではないが、クレイモデルのようなものだと思えば中々優秀なはずだ。

木材は素早くウッドブロックへと変化し、更に砲台の土台を形成。次に左右へ旋回する仮の機構と、上下の角度調整をするギア部分。最後に命中率を上げる為に三メートル以上の長大な砲身を設置した。正解か分からないが、砲身内部には螺旋状の溝もあり、砲弾が回転しながら射出されるようにしている。

突如として巨大なヴァン君特製超最強ロマン砲が出来上がり、その場にいた全員の目が皿のように見開かれた。

「試しに作成しましたが、これならば火薬の調合次第で遥か遠くに撃つことができ、なおかつ命中率も高いものとなるでしょう。つまり、魔術師が防ぐことの出来ない遠距離攻撃の完成となります」