軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

資源調査のつもりが

朝から村人達の家を建てている僕に、オルト達が歩いてきた。

「鉱石の買取をしてると聞いたんですが」

声を掛けられて、振り向く。見ると、オルト達は馬車に木材と一緒に大量の鉱石を持ってきていた。いや、馬車頑丈だな。心なしか馬が迷惑そうな顔してるぞ。

「この奥の森はウルフスブルク山脈の麓のせいか、魔獣が手強いやつが多いんです。そのお陰ですかね。山まで行かずとも珍しい鉱石が採れます」

そう言ってオルト達は両手に鉱石を持ち、僕の前に並べていく。

「こっちは鉄鉱石、更に銅や銀、金も少し採れました。後は……ほら、ミスリル鉱も」

嬉しそうに最後の一つを報告するオルト。原石のままなのに見事な青い銀色の石に、僕は無性にワクワクするのを感じた。

「ミスリル! それは凄い! 森で採れるなんて……何故、これまで採掘されなかったんだろう?」

ふと疑問に思った。すると、オルトは腕を組んで唸る。

「推測ですが、これまでは距離が離れていて利便性も無いことから、騎士団による探索くらいしか試されてないんじゃないですか? 騎士の目だと薬草や鉱石なんてのはあまり目に留まりませんし」

「なるほど。じゃあ、腕が良い冒険者なら採掘可能な優良鉱山ということかな。麓でそれなら、ウルフスブルク山脈には相当な資源が埋まってそうだね」

そう口にすると、後から来たエスパーダが不思議そうに眉根を寄せた。

「しかし、珍しい。金属鉱石が山ではなく森で採掘されるというのはあまり聞きません。砂鉄ならばよく聞きますが、そういった塊での鉱石は非常に稀かと思われます……例外として、鉱石を用いたストーンゴーレムやアイアンゴーレムなどが出るダンジョンの近くならば、そういった話もあるでしょう」

そんな推察を述べるエスパーダに、オルト達は顔を見合わせる。

「……ゴーレムの痕跡あったか?」

「いや……あるとしたら、かなり昔に崩れたゴーレムとかか?」

「ダンジョンがあるのか?」

「分かりませんぜ。あまり調査されてませんし、ダンジョンもありえるでしょう」

やり取りを終え、オルト達は真剣な表情で僕を見た。

「……ヴァン様。もしダンジョンが発見されたら、風向きが大きく変わります。この村には、大量の人と物が行き来するようになるでしょう」

その言葉に、思わず口の端が上がる。

「新しいダンジョンか。本当にダンジョンが見つかれば、村の重要度は格段に上昇するね」

なにせ、ダンジョンは資源の宝庫だ。更に、新たなダンジョンとなると宝物や遺産などもあることが多い。

冒険者ギルドの会員はダンジョンを発見した場合、必ずギルドに報告しなくてはならず、報告を受けたギルドは迅速に最も近くの町や村に支部を作るという決まりがある。

それだけ重要視されるダンジョンを、各国が放っておくわけも無い。なにせ、各国の国宝と呼ばれる武具や宝玉などの殆どはダンジョンから見つかった物なのだ。

しかし、それ故に問題も生じる。

「この村が今の状態でそんな報告をしても、受け入れる力が無いよね」

そう言うと、オルト達は首を傾げたが、エスパーダは深く頷いた。

「その通りです。大人数の冒険者や行商人、更には調査の為の騎士団なども来るでしょう。この村の設備、施設、食料など、全てが不足しております」

「後、利益目当てで隣国が攻めてきたりね。いや、隣の伯爵領の方が可能性は高いか」

僕が補足で推測を加えると、エスパーダは無言で顎を引く。

それに、オルト達は困ったような顔をした。

「……つまり、ダンジョンは暫く探さないようにしようってことか」

「内緒で一回潜っちまうか」

「馬鹿。それこそ強制退会処分だぞ」

難しい顔で話し合うオルト達をよそに、プルリエルが腕を組み、こちらに顔を向ける。

「ダンジョンがあるって分かれば、すぐに騎士団を派遣してもらえるんじゃないですか? それに、ヴァン様の魔術があれば建物の問題もすぐに解決しますよ」

そんな疑問に、僕は苦笑する。

「僕は厄介者だからね。追い出した先が有力な地になれば、また別の場所に追い出されるだけだよ。だから、僕がこの村を大きくした実績を作ってから、ダンジョンを発見しないとね」

そう答えると、プルリエルは眉を上げて驚いた。

「……なるほど。それなら仕方がないですね」

返事をし、オルト達の方へ向き直る。

「皆、ダンジョンを見つけないように資源集めしよう」

「お? あ、あぁ。了解」

「へーい」

「分かった」

オルト達はあっさりと僕達の希望に沿って意見をまとめた。冒険者にとって、新しいダンジョンの発見は立派な功績である。更に、報告さえしてしまえば冒険者ギルドの調査員が来ると同時にダンジョンに潜ることも出来る。

つまり、一番手でダンジョンの宝探しが出来るのだ。マッピングの面でも先に探索した者の方が有利である。

だから、オルト達が僕達の意向を受け入れてくれたのは、純粋に好意からなる親切心だろう。ダンジョンを探して報告を急ぐ方がメリットは大きいのだから当たり前だ。

一方、国やその地を治める貴族からしても、ダンジョンの発見は重要な案件である。本来ならば、僕もダンジョンがあるなら早く発見し、報告しなければならない。

とはいえ、僕の立場もある。僕の価値はゼロであり、将来を期待されているわけでもない。たまたまダンジョンを見つけたと報告しても、兄の中の誰かに差し出させられるだけだ。

だから、自力でこの村を強大にしなくては。

決意を新たに、僕は地面に並べられた鉄鉱石を手にする。

鉄鉱石に魔力を集中させると、石の内部を透過するように魔力が浸透していくのが分かった。木の場合は均等に何層もある溝を這うように浸透したが、鉄鉱石の場合は魔力の浸透に時間のかかる部分と、即座に浸透する部分とに分かれた。

試しに、浸透が楽な部分を砂状にして鉄鉱石から分離してみた。

なんか、ゴリゴリの金属が残った。でも、大きさは三分の一くらいになっちゃったな。

「もう鉄が出来た!?」

オルトの驚きの声が聞こえ、顔を上げた。

「本当なら溶かして不純物を取るから、純度は分からないけどね」

そう返事をすると、クサラが目を輝かせながら鉄を指差す。

「た、試しにそれであっしの剣を造ってくれません? 細めの両刃の剣が良いですぜ!」

クサラがそう言うと、他の冒険者達が目を瞬かせる。

「あいつ、あんなに剣好きだったか?」

「昨日の夜から何かおかしいんだよな」

「坊ちゃんが作る武器だから、後で高く売れるとか?」

カムシンとティルの木の武器が異様な斬れ味となったことを、他の皆はまだ知らない。

クサラは不敵に笑った。凄く悪そうな顔で笑った。

まぁ、革の盾の件は可哀想だったし、サービスしてやろうか。

「じゃあ、短剣で金貨一枚。長剣で金貨二枚ね」

「安い! なら、短剣と長剣を一本ずつでお願いしやす!」

まさかの即決である。良いのか。100万円から200万円くらいの価格だと思うのだが。

そう思っていると、オルト達の表情は微妙だった。

「ちょっと割高か?」

「そうね。鉄の武器でしょ? それなら大銀貨五枚から八枚くらいね」

と、そんなやり取りをしている。そうだよね。高いよね。

だが、クサラは笑みを深めて口を開く。

「ふっふっふ……後悔しても知らねぇですよ。じゃ、坊ちゃん。金貨三枚でさ」

嬉しそうに金貨三枚を持ってきたクサラから代金をいただき、僕は疑問に思いながらも鉄鉱石を手に、材料の鉄を作る。

十分に材料が出来たら、まずは短剣からだ。

さぁ、何を作ろうかな?