軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

家造り

エスパーダや村人達は防壁作りを、ディー達やオルト達は木材集めを、そして僕はティルとカムシンを連れて家造りをしていた。

あれ? 本当は自分用の家具を作りたかったのに、何故こんなことに……。

僕は集まった木材を使い、まずはウッドブロックを作っていく。ただの木材から素材を変質させつつ形状も変えていくのは難しかったからだ。

だから、流れ作業のように先ずはウッドブロック作りをして、材料がある程度溜まったら家造りだ。

だんだん慣れてきたからウッドブロックもかなりの勢いで生産している。丸太や壊れた家の壁、扉などを受け取り、サッサッとウッドブロックにしていく。

一時間ほどでウッドブロックは家一軒分近く作製する量が出来ただろう。

「よし、それじゃあまずは家が無いディー達の家を作ろうか。次にオルトさん達。その後はフーラさんの家。で、インカさんの家……」

段取りをしながら、社畜気分になって気持ちが沈むのを感じながらも、やり出したら止まらない。

ディー達の家は兵士としての詰所も兼ねた方が良いかもしれない。訓練場は無理だが、武器や鎧の倉庫とかも必要だろう。

中くらいの部屋と小さめの部屋二つ。あとは食堂とトイレ、そして外から直接入れる休憩所。倉庫は大きめの方が良いかな。

そんな感じで建物を建てると、領主の館と同じサイズの家になってしまった。まぁ、倉庫のスペースもあるから仕方がないか。

「あ、副団長! 完成しています!」

「なんと!」

と、まるでタイミングを見計らったようにディー達が帰ってきた。出来上がったばかりの家を見上げ、目をキラキラさせている。

「お、おぉ……! なんと見事な! 流石はヴァン様!」

「いやぁ、一時期はどうなるかと……行軍訓練でも最長半年しか野宿はしませんからね」

一人の騎士が思わずといった様子で漏らした台詞に、もう一人の騎士が頭を小突いて黙らせる。

公然と僕の領地を馬鹿にしたな、こいつめ。何が野宿と同じだ。それより少しはマシだわ。

ジッと見ていると、騎士Aことお調子者のアーブが最敬礼をして「申し訳ありません!」と叫んだ。いや、良いけどね? 僕は良いけど皆には謝りなさいよ?

ジッと見ていると、騎士Bこと生真面目なロウが最敬礼をして「お許しください!」と叫んだ。いや、君は何も言ってないよね。

「村の人達に謝罪の心を込めて、いっぱい木を集めてね」

そう告げると、アーブとロウは大きな声で返事をして、矢のように走り出した。

一方、ディーは家の周りを見ていたらしく、上機嫌に近付いてくる。

「いや、本当に見事ですな! ヴァン様の魔力の強さにも驚きましたが、こんな見事な邸宅を作り上げる知識にも脱帽ですぞ!」

ディーはそう言うと、部下がいないことに気付く。

「む? あいつら、何処に行った?」

半眼で周りを見回すディーに、僕は村の入り口を指差した。

「村人達にもこんな立派な家に住んでもらいたいと言って、木を集めに行ったよ」

そう答えると、ディーの目がカッと見開かれた。

「な、なんと! そのようなことをあいつらが!? まさか知らず知らずの内にそのように成長しているとは……よし、私も木を集めに行きますぞ!」

と、ディーは感動しながら走り出そうとするので、待ったをかける。

「馬車は一台でしょ? 今から追いかけても大変だろうし、ディーは村の防衛に残っててよ」

「むむむ……確かに、村の守りに割く力が足りませんな。では、私はこちらに残り、防壁作りの手伝いを行いましょう」

そう言って、ディーは村の防壁作りに加わった。

エスパーダの力により、村の防壁作りはこの日の内に終わり、オルト達の家も出来上がる。

オルト達の家は最低限のものにした。まぁ、各個室はあるので十分豪華だが。

さらに、余裕があったので領主の館の横に簡単な浴場を作ってみた。単純に風呂に入りたかっただけだが、風呂が出来たと聞いて女性陣が飛び上がって喜んだ。

ちなみに、風呂釜は鋼鉄製で、プルリエルが水の魔術を使って水張りをし、床下で火を焚いて水を温めるというレトロな代物。いわゆる五右衛門風呂である。

試しに入ってみたが、中々良かった。とりあえず、さっぱりと湯で身を清めることが出来たのが有難い。

「ヴァン様は私と入りましょう」

「私も入ります」

などという誘惑もあったが、断った。十歳のカムシンは大人と一緒で、八歳の僕が子供扱いは納得出来ない。僕は立派な大人である。

そう抗議すると、ティルとプルリエルから可愛いものを見る目で見られた。なにか悔しい。

ちなみに後で大いに後悔した。

夕方になり、僕は出来たばかりの我が家で寝ようと思ったが、ベッドを作り忘れていることに気がつき、泣きそうになる。

馬鹿か、僕は。

ようやく広々とした空間で寝られると思ったのに、何が悲しくて屋内で寝袋を使用しないといけないのか。

急遽、余っていたウッドブロックを使ってベッドを人数分作る。我が家に四、ディーの家に三、オルトの家に五だ。

村人から藁を分けてもらい、干し草ベッドを簡易的に作る。

ふかふかだ。余は満足である。

おやすみなさい。

次の日、朝と共に起床。久しぶりに熟睡したためか、元気一杯である。

ふははは。ティルよ、もっとオムレツをください。

「美味しい」

「良かったです! 材料が少ないから、ちょっと心配でした」

僕が感想を述べると、ティルはホッとしたようにそう言った。即席で作ったテーブルと椅子のセットだが、意外にも座り心地が良く満足している。

朝から我が家で美味しいご飯が食べられて、可愛いティルと笑い合う幸せ。

と思っていたら斜め前に座るエスパーダが険しい顔で口を開いた。

「……村の防衛も大事ですが、定期的な収入もどうにかしなくてはなりません。今のままでは、一ヶ月に一度来るか来ないかという行商人しか外との交流は無いと聞きます」

真面目なトーンで話しているが、口髭にオムレツが少し付いてるぞエスパーダ。そんな色々同時にできるかエスパーダ。僕は疲れたぞエスパーダ。

「とりあえず、家や家具、やろうと思ったら服とかも僕がなんとか出来るだろうし、食料は十分獲ることが出来る。だから、防衛力の強化に集中したらどうかな」

そう言ってみると、エスパーダは口元をそっと白いハンカチで拭い、顔を上げた。

「調味料がありません。また、ヴァン様のお好きな甘い焼き菓子なども材料がありません」

「なんだって!?」

僕は立ち上がった。立ち上がって叫んだ。ティルを見ると、視線を逸らされてしまった。そうか。もう調味料は残り僅かなのか。

「……産業か。よし、すぐにこの村から売り出すものを作ろう。何でも良い。案を出してくれ」

僕がそう言うと、カムシンが手を挙げた。

「ヴァン様が作った木のブロックが良いと思います!」

「却下。僕にしか加工出来ない」

カムシンがシュンとした。

「ま、魔獣を狩ってきて素材を……」

「却下。狩れるのはオルトさん達だけど、狩ったらオルトさん達のものだ。この村の物じゃない」

ティルがシュンとした。

「通常ならば農作物などでしょう。しかし、この村での特色となると難しい。それに、即効性のある収入には繋がりません」

エスパーダが勝手に納得して俯いた。

勿論、運ぶ距離を考えたら木材もダメだ。大きな川の側なら水路が選べるが、この村ではそれも期待出来ない。

「むむむ……やっぱり、僕が働くしかないのか」

渋々そう呟くと、皆がこちらに顔を向けた。