軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

【コミック②巻発売】番外編.夫の溺愛は止まらないようです

マルグリットの亜麻色の髪を、ブラシがゆっくりととかしていく。

香油をなじませた髪は、毎夜のお手入れで艶々のさらさらになった。毛先もきれいに切りそろえられ、そのうえで入念なチェックを受けるのだから枝毛などもあるはずもなく。

真剣なまなざしを向けるのは、マルグリットの夫、ルシアンだ。

(これはこれで、恥ずかしいわね……!)

ベッドの角に腰かけ、なんとなく背すじをのばし、晩餐会のときのように礼儀正しい姿勢になりながら、マルグリットは思う。

ルシアンもマルグリットも、お互い誰かに甘えるということをしてこなかった人間だ。領地経営などの仕事の上で助けを借りることはできても、日常のなんでもないことで甘えるのは難しい。

ただルシアンは、マルグリットを「甘やかす」ことに想像以上のよろこびを見出したらしく、こうしてあれこれ世話を焼いてくれるようになった。

髪を乾かし終えると、体を反転。次は手をとられる。

湯浴みのあとにはアンナが体全体にクリームを塗ってくれる。それもルシアンが羨ましそうにしているので、手だけはルシアンの担当になった。

ルシアンの手はアンナの手よりもずっと大きくて、少し骨ばっている。

その手に触れられると最初はドキドキしてしまうのだが、マッサージを取り入れつつよい香りのするクリームを塗り込まれているうちに、ぽかぽかと体が暖かくなってくる。

(ルシアン様の手が、あたたかいから――)

こくんこくんと舟をこぎ始めたマルグリットにルシアンはほほえんだ。

甘やかされることに慣れていないマルグリットは、ルシアンが世話を焼くと始めのうちは恥ずかしがって、緊張したように体に力を入れている。

しかしだんだんとそのこわばりはとけて、無防備な姿を見せてくれるようになる。

手を離すと、逆に距離を縮めるようにこてんとマルグリットの体がもたれかかってくる。

クラヴェル領の経営に加え、新規の事業や、ド・ブロイ家の女主人としての仕事など、やることは多い。楽しんでいても疲れはある。

そっとマルグリットをベッドへ横たえ、ルシアンは額にキスを贈った。

立ちあがり、自分の部屋とマルグリットの部屋をつなぐドアへと向かう。

マルグリットが嫁いできたばかりのころは鍵をかけられていたこのドアも、今ではきちんと本来の役目を果たすようになった。

「おやすみ、マルグリット」

「んん……おやすみなさい、ルシアン様」

寝惚けたような声で、マルグリットが返事をする。

その様子にまたほほえんで、ルシアンは静かにドアを閉めた。