軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

84 地響きの正体

地鳴りする程の魔物の群れが現れたのはそれから直ぐのことだった。

まず野生の動物達が見えた後に狼やファンタジーの定番である緑の小人、ゴブリンが現れた。

「フォレストウルフにゴブリン、オークにトロール……少し数は多い…が」

そんなライオネルの呟き聞こえた後、エルフ達が弓で牽制を入れフォレストウルフの速さを削り、そこへケティが飛び出した。

「トロールは私が引き受ける、ゴブリンやオークはお任せします」

「勢いは止める」

ライオネル大盾を持って進むと、ポーラも三メートル級のゴーレムを操り戦闘に入った。

「ルシエル様は遠隔でヒールを掛けることに集中しておれ。俺がここまでくる魔物は潰してやる」

そういうとドランが大斧を構えて俺の前に立ってくれた。

ケティがフォレストウルフやゴブリン等の魔物とすれ違う度に魔物はその生命を散らす。

ライオネルが大剣を振るうと自分より大きな魔物の身体がスライドしていき血が噴出しながら真っ赤に燃え倒れていく。

ゴーレムがオークをジャンピンングニーパッドでふっ飛ばし、何故かサポーターがないのに左肘を触り左腕を高々と上げて人差し指と小指で合図すると走り出し豪快なラリアットで魔物を倒すと、そのまま相手の足を持ってジャイアントスイングへと移行。木々をなぎ倒しながら敵の進軍スピードを更に遅くらせる。

「今ならドワーフよりもお役に立てる【木々に宿る精霊達よ 私の呼びかけに応じ 私の魔力と引き換えに 悪しき魔を縛れ】」

「森はエルフの領域。ドワーフ女に負けられない【風の精霊達よ 私の魔力と引き換えに 悪しき魔を切り裂く風の刃となれ】」

「わぁ~お二人とも凄いです。私は矢を使わせて頂きますね」

ミルフィーネが精霊魔法を唱えると、木の根や枝が魔物の足や身体に撒きついてその行動を止める。

そこにリシアンの風の刃が通過すると魔物は切り刻まれ、クレシアが放った矢が眉間や胴にどんどん当たっていく。

中には突破してくる魔物もいたが、ケフィン達がしっかりと対処するのだった。

俺はあまりにも血生臭くなった森に浄化魔法を掛け、臭いの元である魔物達を回収していく。

魔物を回収しながら地響きについて考えていた。

(確かに魔物は多いけど、この数でいつまでも地響きが続くのはおかしくないか? まさか…)

俺はそこまで考えて何気なく辺りを見回すと明らかに木が多くなっていることに気がついた。

「ドラン、周りの木が多くなっている。魔物の可能性があるぞ」

「何、でも見分けがつかんぞ」

皆は戦闘中でトレントが混ざっていることに気付いていないかも知れない。

だが、これで叫んだら折角優勢な状況がひっくり返ってしまうことも考え、俺は頭をフルに回転させて一つの解決策を思いついた。

「ドランはこれをつけろ」

「うぬぅ……かたじけない」

ドランは鼻栓見て一瞬躊躇したが、大人しく受け取ると直ぐに装着した。

俺が物体Xを取り出すと響いていた地鳴りが止まった。

「トレントならこの幻想剣で試し斬りしてみるか。ドラン盾で守ってくれ」

俺は物体Xが入った樽を身体に括りつけ、幻想杖を幻想剣に変え動いた木をトレントだと仮定し攻撃することに決めた。

魔力を込めると青白く剣が光りその外側に赤い膜が出来ていた。

「……そう言えば炎龍はこれにも加護みたいなものをくれていたよな」

俺はそう呟くと目の前の木に斬りかかった。

次の瞬間「グギャアアア」と断末魔が聞こえ、斬ったところから青白い炎が出るとトレントはドンッと倒れた。

斬った感触は一切なかった。

なんてチート武器を持ってしまったんだろうか、そんなことを思いながらもどんどん切っては魔法袋に回収していく。

「凄い性能だな」

ドランがそう呟いたのはトレントを斬った時ではなく、普通の木を誤って斬ろうとしたら斬れなかったのを見ての発言だった。

あれだけ簡単にトレントを切り裂いたのに、普通の木は少し傷がついた程度で切り倒すことが出来なかったからだ。

誤って傷をつけた俺が木にヒールを掛けてやっているとドランが目を瞑り喋り始めた。

「魔物しか滅することが出来ないから武器としては欠陥ではあるが、対魔物なら無類の強さを……いや、相性も良くないと……」

「ドラン戻って来い。戦闘中だぞ」

徐々に思考の渦に飲み込まれそうなドランに声を掛けると近くにいるトレントを倒しながら、回りを確認するとエルフの彼女達は魔力を枯渇したのか膝を突いていた。

ライオネルやケティは相変わらず笑顔で魔物を蹂躙していたが、その数もたいぶ少なくなっていたことを感じていた。

「まずは合流して少しずつ後退するぞ」

ドランにそう告げると魔物がいないルートを浄化しながら、魔物の死体を回収していく。

「二人ともそろそろ回収したら一度森の外に戻るぞ」

俺がライオネルとケティに叫ぶと二人の戦い方が荒々しくなり、魔物達を一体も逃さないような勢いで倒し始めると魔物は二人を怖れて徐々に逃げ出すことになった。

「あの二人はやはり別格だな」

俺はそう呟きながら魔物を回収して、戦闘域を浄化して回ると久しぶりに魔力が枯渇気味になったので、森を出て休憩することを宣言した。

「ルシエル様、さっきからどうなされたのですか?」

「少し考えて事をしてたんだけど……ケフィン、この森は未開拓地なんだよな?」

「はい」

ミルフィーネに聞かれて、俺は考えを纏めきれずにいた。

「ライオネル、珍しい魔物はいたか?」

ゴブリンやオークを初めて見た俺では珍しいかどうかも判断がつかなかった為にライオネルに聞いてみる。

「……瘴気の濃い森でしか現れないトロールやマンドレイクは珍しいと言われれば珍しいとは思います」

最近少し伸びてきた顎鬚を触りながら、少しの間をおいてライオネルは口を開いたが、やはり思った通りゴブリンやオークは一般的なのだろう。

「まだ浅かったから魔物が少なかったのかも知れないが……これで冒険者を誘致したら詐欺だよな?」

「なんと言って誘致するかによると思いますが……そこまで稼ぐことは出来ないかもしれませんな」

「一度イエニスに戻ったら冒険者ギルドで確認することにしよう」

「その方が良いでしょう」

その後、ケフィン達もレベルを上げていたのは炎龍がいた迷宮で、未開の森へ入ることは顔役のドルスターさんに禁止されていたらしい。

そう思っているとエルフ達の様子がおかしいことに気がついた。

「どうかしたのか?」

「なんだか引き止められているように感じますわ」

「精霊に…か?」

「いえ、でも何故か離れようとすると少し悲しい気持ちになります」

「私も同じです。こんなことは初めてです」

エルフの三人は森を見ながらそう告げてきた。

俺は他のものにも目を向けるが、他にそう感じるものはいなかった。

「……何かあるのかも知れないな。でも今は休憩しよう。三人とも魔力が枯渇気味だろ?」

三人が頷くのを確認して歩くと直ぐに森から出ることが出来た。

「休憩を挟んだらケフィン隊とヤルボ隊は任務の交換。ミルフィーネ達は昼過ぎまで休憩していてくれ。ドランとポーラは魔物の解体するから手伝ってくれ。ライオネルとケティはケフィン達に説教を頼むぞ」

そう伝えるとケフィン達は顔を青ざめた。

ライオネルとケティは凄く良い笑顔でケフィン達に向かっていくのだった。

回収した木が百二本にトレントが九体と二時間程の成果としては多いとも言えるが……ドランに穴を掘ってもらい食べられないゴブリンやトロールから魔石を回収すると穴に捨てていくのだった。

「風と水属性を持った魔石と属性を持たない魔石が多いようだな」

「そうか。死体が残るのはどうにかして欲しいが、これは嬉しい誤算だな」

「ボーナス確定」

ポーラは嬉しそうに魔石を見ながら呟くとそこに声が混じる

「貴女だけのものではないわよ。私も開発するんですからね」

リシアンがポーラに突っかかるので、俺はその場を離れてドランと二人で解体作業を進めるのだった。

「少し魔物が多すぎたんじゃないか?」

「後はこれだけだから問題あるまい」

「じゃあここは任せる」

「任された。そのかわり肉を多めに頼むぞ」

「ああ。お~い、時間が時間だからここでバーベキューするぞ」

一度湯に潜らせて臭みを取った肉に香辛料を混ぜながら焼いていく。

その下処理があればエルフ達も肉を食べられるので、あわせて買っておいた野菜も一緒に網で焼きながら楽しいバーベキューの時間を過ごした。

バーベキューによる食事を終え、さらに休憩をした俺の魔力はほぼ全快になっていた。

再度森へ入る準備をしながら、エルフ三人の魔力が枯渇気味だった事を考え馬車で休ませておくべきか否かを悩んでいると、エルフ三人の魔力もだいぶ回復したらしく、彼女達は探索に連れていって欲しいと願った。

「いいだろう。でも無理はするなよ」

『はい』

こうして俺は再度探索に彼女達を連れていくのであった。

この決断がある出会いを呼び、ルシエルの人生を左右することになるのだが、それは遠い未来の話である。