軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

291 勝手知らざる我が家

飛行艇が着陸してから、飛行艇の周りには徐々に人が集まって来るのが見えた。

俺は飛行艇への魔力供給を止めた。

皆が迎えてくれるのは素直に嬉しかったのだが……しかしそれよりも気になっていたのは元治癒士ギルド、現在は俺の住居だ。

「……ドラン、何だか俺の住居がおかしなことになっている気がするんだが?」

「うむ。我らの主なのだから、それらしい住まいに住めるようにしてあるぞ。これはワシが決めたのではなく、イエニス全体の会議で決まったものだぞ」

「八種族会議……しかしそれらしい住まいって……どう見ても豪邸なんだけど?」

そう、何処からどう見ても豪邸だったのだ。

建物全体は白に近いクリーム色で統一されており、一柱一柱に細かな細工が施されており、見る者を飽きさせない芸術的要素が散りばめられているようだった。

だがしかし、俺はこんな建物を見たことがなかった。

「うむ。既に治癒士ギルドは医療特区があるから、思いっきり立て替えましょうと、治癒士ギルドの面々も協力的に案を出してくれた。材料は森で調達出来たしな。資金はルシエル商会だが、人件費しか掛かっておらんぞ」

俺が知らないルシエル商会……凄すぎるだろ……。

「……イエニスから離れて一年と少しぐらいしか経っていないのに……」

まぁドランはここへ初めてやって来た際に、二日で治癒士ギルドを開発してしまったのだから、絶対に無理なことだとは思わないけど……。

俺はここであれこれ言っても意味がないと諦めて、飛行艇から降りることにした。

しかし戦乙女聖騎士隊の様子がおかしいことになっていた。

「皆さん、降りましょうか」

「ルシエル君、ルシエル商会とはこれほどの建物を簡単に作ってしまえるだけの商会なのか?」

ルミナさんが驚きの表情でこちらを見ていた。

「不正は悪やで」

「悪いことをしたら裁かれるのが世の常」

ガネットさんとマイラさんも疑うような口調だったけど、顔は凄く驚いた表情のままだった。

そこへライオネルの説明が入る。

「ルシエル様はイエニスを再建しただけではなく、今やイエニスの特産品となっている最高級の蜂蜜から蜂蜜酒を始め、魔道具の販売まで一手に手掛けたルシエル商会の頭です」

「は、蜂蜜酒!? 蜂蜜酒って、あの滅多に市場に出ない蜂蜜酒ですか?」

キャッシーさんがだいぶ食いついて来た。

「イエニスを再建する時にハッチ族の方々と知り合う機会がありましたからね。運が良かったんですよ」

「それと現在、イエニスの族長会議からルシエル商会に他国との外交、香辛料の輸出入における商人の選定まで全てルシエル商会が引き受けています」

俺の説明中にキャッシーさんは唾を飲み込み、ライオネルの説明で戦乙女聖騎士隊の皆が唸った。

「ま、まさか既にイエニスという国はルシエルさんが……それにそれは世界を裏から支配を……」

エリザベスさんはとても驚きながら、何やらブツブツ呟いていたが、あえて無視することにした。

「まぁとりあえず飛行艇を降りましょう。ドラン、悪いけどルミナさんの鎧だけじゃなく、皆の武具の補修も頼むよ」

「うむ。グランドの兄者もいるだろうし、任されよう」

それからようやく飛行艇を降りることになった俺達だったが、俺が飛行艇から降りるとイエニスの民から熱烈な歓迎があり、騒ぎが収集するまでには、かなりの時間を要することになった。

屋敷には庭があるけど、塀や門などは存在していなかった。

イエニスの民は聖騎士隊を見ても普通に歓迎ムードで接してくれていた為に、戦乙女聖騎士隊の面々は最初は戸惑っていた。

しかし徐々にメラトニの街の時のように笑顔で応対し始めていた。

特にルミナさんは人族至上主義で生まれ育った過去があることを教えてくれていたが、今はとても嬉しそうに対応していたので、俺も安心することが出来た。

そして屋敷に入った瞬間、ズラッと並んだメイド服の女性達が一斉に頭を下げて出迎えてくれた。

「「「お帰りなさいませ、ルシエル様」」」

俺は一瞬呆けて立ち止まってしまったけど、良く見たら見覚えのある顔がチラホラあって、彼女達のことを思い出した。

「えっと、あ、もしかして元奴隷の?」

「はい。ルシエル様、お帰りなさいませ。ライオネル様もご無事で」

そう言って、メイド達の中から近づいてきたのは、ナーリアだった。

「あ、ナーリア、ライオネルとのこと、遅くなったけど、おめでとう」

「ありがとう御座います。これも全てルシエル様のおかげです」

「ルシエル様、本当にありがとう御座います」

ナーリアが頭を下げるタイミングで、ライオネルまで頭を下げるから、俺の方が恐縮してしまう。

「いや、それでこのメイドさん達は、あの時の奴隷達だよね?」

「はい。奴隷ではなくなった彼女達は既に自由の身なのですが、どうしてもルシエル様のお屋敷で仕事したいと申し出があり、全員そのまま雇っています」

何故とは思わないけど、彼女達はそれでいいのだろうか?

「無理矢理じゃなければいいんだけど……それより、学校はいいのか?」

「ええ。あっちはクレシアがいますし、雇った先生役の元冒険者の質が良くて、学校の運営も楽なんです」

「それは良かった」

一番心配していたことが学校だった。

俺は結局のところ学校を作ることはしたけど、内容についてまでは考えることが出来なかったからだ。

「ルシエル様、お食事の準備は既に出来ていますが、召し上がられますか?」

確かに昼食の頃合か……。

その時にドランから声が掛かった。

「じゃあルシエル様、俺達は工房に行っているぞ。用件が終わったら工房に顔を出してくれ」

「昼食はいいのか?」

「ああ。工房にも色々と食べられるものがあるからな」

ドランが戦乙女聖騎士隊から装備している武具を預かってからそう言うと、ポーラ達技術班と一緒に玄関の直ぐ側にある一室へと入っていった。

「ライオネル、もしかしてここが工房の入口?」

「はい。中には地下へと続く魔導エレベーターがあり、外部に騒音を出さないように設計されているらしいです」

前に使っていた魔導エレベーターをここに持って来たんだろうけど、やはり屋敷と言っても魔導エレベーターを完備している家は無いらしく、ここでもルミナさん達は驚いていた。

しかし少しだけ心配なことがあった。

「……工房は工場とは被らないのか?」

「はい。工房から工場にも行けるようになっていますが、区画整理をしたおかげで、地下を有効的に使えるようになったらしいです。前の入口と魔道エレベーターも、そのまま使えるようになっています」

まさかの二機目だったことに俺自身が驚いた。

「……そうなんだ。まぁ色々思うところはあるけど、ドラン達に任せるか。まずは食事にしよう。その後、龍の谷の麓へどうやって進むかを話合うか」

「ルシエル、食事が終わったら、ルシエルが立て直した街を観せてくれないか。学校や工場も頼む」

そういえば師匠も前からそのようなことを言っていたか……そうなると、全てを観るだけでも日が暮れることになるな……。

ライオネルとナーリアのこともあるし、今日は宿泊することになるけど……それはそれで仕方ないか。

「分かりました。ナーリア、皆の食事の支度と宿泊の手配をお願い出来るかな?」

「はい。それでは食堂へ案内させていただきます」

自宅だというのに、食堂の場所が分からないって……。

「……頼むよ」

こうして食事を皆で済ませ、今日一日はイエニスで過ごすことになった。