軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

290 ロックオン?

ドラン、ポーラ、リシアンの技術者粋が集まった飛行艇が徐々に高度を上げていくと、戦乙女聖騎士隊はまるで“乙女”のようにキャーキャー騒ぐ者達と、必死に席へしがみつく者達に分かれた。

「それでルミナさん、何をしているんですか?」

「いや……ちょっと怖くてな……」

何故は恥ずかしそうにローブの端を掴んでいるんですか? もっと掴んでいて安心な場所があるでしょうに……。

「飛行艇は安全ですよ? それに座っている方が楽だと思いますけど?」

「すまないが、少しだけ頼む」

「……いいですけど」

上目遣いで頼まれては断リ切ることなんて出来なかった。

ライオネルが隣で笑っているので、イエニスへ着いたらナーリアとの件をいじることに決めた。

飛行艇が百メートルくらいまで高度を上げたところで、イエニスへ向けて飛行艇を発進させた。

「うわぁ~本当に外の景色が動いてるよ。ルシエルこれ本当に凄いよ。きっと凄く売れると思うよ」

「個人用があれば、うちも注文するわ。これから仰山開発するんやろ?」

マルルカさんとガネットさんは完全に目が商人になっていた。

「そんな勿体無いことをする訳がないですわ。きっとルシエル商会はこの空を飛ぶ魔道具を使って、商人ギルドを裏から牛耳るだけの資金力を調達するつもりですわ」

「そんなことしたら、ルシエルがこの世界を牛耳るのか? そしたら私達もルシエルのハーレムってか?」

「サランさんまた貴女そんなことを……いえ、ありかもしれませんわ」

いつものサランさんの流れにエリザベスさんがノッてきたから、こっち吃驚ですよ。

「いやいや、ないですから。皆さん話を飛躍し過ぎですよ。この飛行艇も迷宮で手に入れた特殊なものを使っていますし、量産には時間が掛かるでしょう。それに魔物の問題もありますし……」

「ルシエルはS級治癒士になってから忙しすぎる。少しは休んだ方がいい」

「そうね。たまにはバカンスをするべきだと思うの。ところで竜のお肉って美味しいって聞いたことがあるけど、ルシエル君は竜殺しなのだから、食べたころがあるのよね?」

ベアリーチェさんが心配してくれたところで、キャッシーさんの発言で戦乙女聖騎士隊が肉食女子の集まりであることを思い出してしまった。

「いいえ、赤竜を倒したのは迷宮だったので、倒した時点で幻のように消えてしまいました」

「そうなの……ちなみにイエニスにはお酒が売っているところもあるのよね?」

「ええ、たぶん」

「ふふふ」

楽しみにしているのはいいけど、確か戦乙女聖騎士隊の皆は料理が出来なかった気がする。

「ルシエルさん、ところで隊長の鎧はどうされるご予定ですか?」

リプネアさんは真面目にルミナさんの装備を気にしているらしい。

真面目そうで良かった。

「えっと、ドランがいるし、もしかするとグランドさんもイエニスにいるから、そのまま直してもらうか、翼竜の素材があるからそれを使ってもらおうと思っているよ」

「なるほど……あの、出来れば私の双剣も直していただきたいのですが……」

とても申し訳なさそうに双剣を鞘に入れたままこちらに向けると、一部にヒビが入っていた。

「ああ、もちろんそのつもりだよ。皆さんの装備も一度メンテナンスをさせてもらいます。さすがに死地にただ連れて行くわけには行かないので」

「ルシエルさんはいつの間にか空気の読める男の人になっていたんですね」

リプネアさんは感激していた。

「まさか今まで使っていた武具の業物よりも……さすが唯一の戦乙女聖騎士隊の男性隊員」

「既にルシエルは私達よりも強くなってしまった。これは本当に我が身を差し出すしか……」

クイーナさんとマイラさんは古いネタと新ネタでからかっているのだが、ルミナさんのローブを握る力が強くってなっているので、からかうのは勘弁して欲しい……。

「ルシエル、そうなるとイエニスへ滞在することになるのかしら?」

今度はルーシィーさんからの質問だった。

「一度様子を見てですね。問題がなければそのまま移動しますけど、空路で行けるか、陸路でしかいけないところにあるのか、まだ判断が出来ないので」

「そう。出来ればルシエルが作った学校が見てみたかったの。視察させてもらうことは出来るかしら?」

獣人の子供達が通う学校だぞ? それに長い間、聖シュルール協和国とは交流がなかったけど……大丈夫だろうか?

「ええ。基本的に人権差別しない、そういう態度を取らない方々であれば、いつでも歓迎します……それで合っているよね?」

「はい。学校は私の妻が運営をしています。全ての子供の教育費、教員の給料と住まいは全てルシエル商会で負担しています。いずれイエニスは世界のモデル国家になるだろうと思います」

ライオネルが持ち上げすぎた説明をするから、ルーシィーさんの目が輝き出した。

「それは楽しみだわ」

ルーシィーさんは子供が好きなようだな。

「そういえばルシエル君は子供は好きなのか?」

「ええ、好きですよ。子供が楽しそうにしていると平和だって感じますから」

「そうか、好きなのか」

ルミナさんは頷きながら、微笑むのだった。

それからも聖騎士隊の皆からの質問に答えながら、二年間の修行やレベル上げの話をしている時に邪神との戦いについて触れた。

そして話す場合には誓約してもらうことを告げると、驚くことに全員が誓約を受け入れた。

しかも普通の誓約ではなく、主神クライヤと光精霊であるフォレノワールへ誓ったのだ。

誓約内容は俺が語る二年間の話を誰にも伝えないこと。

俺や俺の仲間に敵対行動を取らないこと。

但し、俺が教会を害そうとした場合のみ、その限りではない。

罰則は、もし伝えるか、それに準ずる行為をした場合、戦乙女聖騎士隊からの脱退、魔力封印、記憶の改変という厳しいものだった。

それでも皆は俺が強くなった理由など、全てを聞くことにしたようだった。

中途半端になることも考えて、聖龍を開放したところから説明していくと、どれもこれも想像よりも斜め上を行っていたようで、最初は驚かれるだけだったけど、後半になると呆れられていった。

特に師匠との特訓については、それはもう酷かった。

公国ブランジュの暗躍によって使われた転生者、グランドルの迷宮で力を本当に失ったことまで話すと、何人かが泣き出してしまったのにはこちらも驚いた。

そして賢者となり帰ってきたところへあの騒動が起こり、教会本部と決別を決意したこと、おまけで帝国とルーブルク王国の戦争を止めたところまで説明すると、ルミナさんが口を開いた。

「……ルシエル君、君に勝てない理由は良く分かった。だが、君とはこれからじっくりと話す時間を……この件が終わったら取らないといけないと思う」

「えっと、別に……あ、はい」

ルミナさんの目には頷かされる程の力強さがあった。

「うん。……だが、私達の認識はまだまだ甘過ぎた。命懸けで戦わないと直ぐ隣には死があることを理解したし、ルシエル君がどれぐらい仲間に助けられてきたのかも……」

「ルシエル様が公国ブランジュの一件を片付けられれば、ゆっくりされる時間もあるでしょう。その後については私達従者も話したいことがありますから、まずは生き残れるぐらい強くなれなければ、ルシエル様の隣に立つことも叶わないでしょう」

「ふふふっ、それは分かりやすいですね」

「……」

流石にこの微妙な空気のまま飛行を続けることが嫌だったので、ドランにも来てもらった。

それから二度の運転交代を挟み、イエニスの上空に飛行艇が到達すると、下からはこちらに手を振っている住人達の姿があった。

その光景を見たルミナさんが「ルシエル君の行く先々では、笑顔が溢れているのだな」と呟いたのが聞こえた。

その言葉が妙に耳に残るのだった。

こうして色々なことがあったけど、昼を少し回ったぐらいの俺達は、イエニスにある俺の自宅兼工場の庭へと着陸するのだった。