軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

145 闇の波動の脅威

結局、村長の家で目ぼしい書類などは見つけられなかった。

「何も出てこないってことは、村長自体は何で魔族になったのか分からないってことだよな?」

「はい。それに斬った感触だと、最初の魔族よりも其処まで強いようには見えませんでした」

「……確かに最初の魔族と同等の力を持っていたなら、死んでいたニャ」

「一気に気配が変わったのと何か関連があるのでしょうか?」

「そうだな。明日、戦闘をした場所の検証と村民に話を聞こう。まぁ全てが分かるわけではないから、昼前に何も出なければメラトニへ向かうことにする」

「それが妥当でしょう」

「見張りは任せるニャ」

「ルシエル様もライオネル様もお休みください」

「ああ。些細なことでも何か違和感があったら起こしてくれ」

「分かったニャ」

俺はエリアバリアを発動させてから、空いている部屋で仮眠を取ることにした。

「眠る前に教皇様にこの村の魔族の件を含め、違和感を探ってもらうかな」

魔通玉で教皇様と連絡を取った俺は、天使の枕は使わず、いつでも動けるように横になり、目を瞑った。

人族が魔族なることが本当にあるのか、それだけが頭の中をグルグルと回っていた。

自然と目が開き、俺は起き上がることにした。

「この違和感はなんだ?」

部屋を出るとライオネルが眠りについていた。

「……ライオネルが俺に気がつかないなんてありえない」

俺は違和感を探るためにリカバーをライオネルに発動するが、効果はなかった。

「闇の精霊か、それとも魔族か……死にたくないんだけどな」

俺は居間へと移動すると、怪しげな光を放っていたのは、エスティアを運んだ部屋からだった。

正直面倒だ。

だけど一度信じると決めたのだから、自分の筋は通すべきだ。

俺はそうやって己を奮い立たせ、エスティアが眠る部屋の扉を開いた。

「……闇の波動? 吸収しているのか?」

エスティアはベッドに眠ったまま、瘴気とは別の発光する黒い霧を身体に吸収しては、放出していた。

「まるで呼吸だな」

これで奇襲を受けたら不味いと判断した俺は、隠者の鍵を使って、フォレノワールを呼んだ。

「悪いが頼む」

俺は浄化魔法とかけてから、エスティアとフォレノワールの体力が回復するようにエリアハイヒールを発動して様子を窺う。

白く発光するフォレノワールのその輝く姿を見るのは二回目だったが、その姿が天馬に見えたのは、今回が初めてだった。

発光した光が翼を作り、全ての足元に黄金の輪が見えた気がした。

その瞬間、光がエスティアに吸い込まれていった。

それを最後にフォレノワールの発光が止み、隠者の厩舎へと戻ろうとした。

「よく分からないがありがとう」

俺は効果があるかも分からなかったが、エクストラヒールと浄化魔法をかけてから戻した。

フォレノワールを見送った俺はエスティアに向き直ると、黒い波動は消え去り、意識が覚醒した闇の精霊がいた。

「姉様を呼んでくれて感謝するぞ、ルシエル。あのままであれば、闇の波動で精神異常を引き起こしていたかも知れない」

「目が覚めたか……。自分の状況が分かるのか? 力を使った反動かどうか分からないが、闇の波動が呼吸するように出たり入ったりしていたけど?」

闇の精霊の暴走に気がつかなかったら、きっと酷いことになっていた気がする。

「すまない。エスティアの身のままで、そこまで強くの波動を使ったことがなかったから、今回は自爆したようなものだ」

「……気をつけてくれ。それより魔族なんだが、あの時の一体ではなく、あと二体居たことに気がついていたか?」

「なんと、他にもいたのか?」

少しオーバーリアクションだったが、嘘を吐くメリットはないと判断して、話を続ける。

「ああ。村長と村人の一人が魔族へと変身した。フォレノワールも気がついていなかったみたいだから気になってな」

「……姉様でも気がつかなかった? それが本当ならルシエル、全ての国をまとめるか、絶対的な力を持つかしないと帝国が動き出すぞ」

「はっ? もう少し分かりやすく教えてくれ」

いきなり帝国の話が出てきたことにより、闇の精霊が俺達の知らない情報を握っていることが分かったが、無茶な要求を俺に突きつけてきた。

普通に考えれば無理だということも分かるはずなのだが……俺はこれ以上の混乱をしないために、一つずつ聞いていくことにした。

「帝国が戦争を仕掛けるまでの時間が、あまりないということだ!!」

「……何故そんなことがわかる?」

「……帝国は本来勇者を作り出す研究をしていたのだ。それが魔族の力を生み出す研究へとシフトチェンジしたことは知っているか?」

「初耳だ」

「勇者と言えば聞こえはいいが、要は人間兵器が欲しかったのだ」

どうしようもないな。

戦争だけじゃないことで、争えばいいだろうに。

力で勝ち取ったものは時代が流れれば、また泡と消える。

だったら、より豊かになる方法を研究した方が建設的だ。

それに争うなら魔物がいるし、迷宮だってあるのに……。

「……その実験は成功したのか?」

「いや、勇者を作り出すことは出来なかった。先程も言ったが、その成果が今回の件だ。これが報告されれば……待てよ、全て倒したと言ったな?」

「ああ。儀式の最中に聖域円環がうまく発動したおかげで、証拠だけでなく、全てを消し去ってしまったらしいが……」

どれかでも残っていれば良かったんだけどな。

「……それなら研究の失敗となるから、また数年の研究があるかもしれない? だとしたらその隙に……」

闇の精霊はこちらを射抜くような目で見る

「な、なんだ?」

「ルシエル、死にたくなければ、全ての加護を集めよ」

「……その言い方だと早く、精霊と龍の加護を集めろとでもいうのか?」

「その通りだ。火の精霊と風の精霊から加護を受け取り、フルーナの元で至れ……」

そこまで話していた闇の精霊は限界が来たのか、寝オチした。

「大事なところで力尽きるとか……何で俺は次々と巻き込まれるかね?」

エスティアを見ながら呟いた俺は静かに部屋を出ることにした。

ドアを開くとライオネルが控えていたが、顔色が悪い。

「大丈夫か?」

「はっ。少し意識が混濁としていましたが、行動に支障はありません」

「それは大丈夫だとは言わないだろ……。俺は外の二人の様子を見てくる」

「私も行きます」

ライオネルが無理に立ち上がったところを見ると意思が固そうなので、同行を許可することにした。

俺とライオネルは村長の家から外へ出ると、二人を直ぐに発見したが、身体がふらついていて様子がおかしかった。

「念の為だ」

俺はリカバー魔法陣詠唱で発動させると、二人が武器を持ってこちらを向いた。

俺の前にはライオネルが炎の大剣を構えて立っていた。

「ルシエル様とライオネル様ニャ」

「……吃驚した」

二人とも膝を突いて座ってしまった。

「何かあったのか?」

「村長の家の方から凄く強い闇の波動が飛んできて、意識が混濁していたニャ。近づいてくるルシエル様とライオネル様にも気がつかなかったニャ」

「いきなり魔法を使われたから最初は敵だと思いましたが、意識がしっかりし始めたので、踏み止まれました」

闇の精霊が暴走したら、簡単に村や小さな町を狂わせてしまう。

その事実を聞かされているように感じながらも、まずは二人の身体のことを優先する。

「……明日には聖騎士隊が到着するから、それまではこの村に残って捜索する。一旦仮眠してくるといい」

「「はっ」」

二人は村長の家へ入っていった。

そこでライオネルが、こちらを窺うようにして口を開く。

「何か分かったことはありますか?」

「ああ。どうやら魔族が出てきた時に対処出来ないと、帝国が動き出すかもしれないことが分かったぞ」

「……やはりそうですか……ルシエル様だけはお守り致します」

いつもとは違う雰囲気を持つライオネルに違和感を覚えた俺は、今後の方針を語ることにした。

「ああ。それでも圧倒的に人が足りないから、俺は味方を増やすことにするよ」

「……忙しくなりそうですな」

「ああ。ライオネルにも動いてもらうから、ちゃんと鍛えておけよ」

「はっ」

ライオネルの気持ちは分からないが、先程よりは柔らかくなった表情をみていると、徐々に村の様子が見渡せる程の明るさになってきた。

俺とライオネルはそのまま村を眺めていると、朝日が昇る直前にエスティアを含めた三人が村長の家から出てきた。

「エスティア、体調はどうだ?」

「はい、大丈夫です。ご迷惑をお掛けしました」

闇の精霊ではなく、エスティアだったのは問題ないのだが、このままメラトニへ向かうのは大丈夫なのだろうか?

そんなことを考えてしまった。

気を取り直してケティとケフィンを見ると、二人はいつも通りに見えたが、一応聞いて今後のことを指示することにした。

「二人は?」

「完全回復ニャ」

「問題ありません」

「よし。これから食事をしたら、もう一度家捜しと、ここで消えたものの手がかりを探すこと、村民達への聞き込みだ」

「「「「はっ」」」」

食事をとった後に村長の家捜しをして見つかったものは特になかった。

それでも魔族に変身した村長や村民が、よく外部から来た人間と話しているところは目撃されていた。

そこまで調べていると聖騎士隊の応援が来てくれて、俺達は現場を引き継ぐことになり、メラトニへ出発することになった。

「戦乙女聖騎士隊じゃなかったニャ」

「残念でしたね」

ケティとケフィンが最近俺に攻撃的なのは何故だ?

それを聞こうとするとライオネルが真面目な顔で二人に見て口を開いた。

「ケティとケフィン、御主等は結婚したいか?」

俺でも吃驚な爆弾を落とした。

その唐突な発言に先程までニヤニヤしていた二人の顔が固まった。

「……どういうことだ?」

「ルシエル様、二人が家族になることを認めていただけますか?」

「……本当にお互いがそう思っているなら、もちろん許すが……」

「今回、魔族が出てきたことで、いつまでもこの平和な時間が続くとは私は思えないのです」

「……ライオネルの気持ちは分かったが、奴隷を解放して、結婚したとしても従者は続けてもらうぞ?」

「もちろんニャ」

「私にも夢があるので、ついて行きます」

ライオネルは二人を何とも言えない顔で見ると、今度は俺を見て溜息を吐いた。

「こっちが溜息を吐きたいわ。二人の代わり?を直ぐに見つけるのは難しいし、魔族が現れたからといって、一気に危険が強まるという訳じゃないだろ? ライオネルは一旦、ブロド師匠との再戦だけを考えていろ」

「……分かりました」

この後、ライオネルが落とした爆弾のせいで、メラトニへ着くまでの間、何となく気まずい雰囲気が続いたのは言うまでもなかった。