軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

興奮と冷静

「ドーバーナ」

「ええ、メラニー」

大穴ダンジョンからからくも抜け出したドーバーナたちは、一度バラバラになったが、穴の出口から少し離れたところで再び集結していた。

加藤もイサイサも、メラニーのイケメンモンスターに騎乗していたので、自然とメラニーの元へと集まってきたのだ。

ただ、ひとり、おぼろを除いて。

「なあ、いまの遠吠えって?」

「始まり」

加藤の声に、普段は比較的饒舌なイサイサが言葉少なく、答える。

「──始まりって、どういうことだ」

「あれはあだむの遠吠えだ。偉大なるお方の下知を告げるな」

「そう、まさに誉れ」

相変わらず理解していない加藤に、イサイサに代わってドーバーナとメラニーが代わる代わる告げる。

「……えっと、大丈夫、なのか? なんかみな、凄くぶるぶる震えている、ように見えるが」

加藤はイサイサとドーバーナ、メラニーたちコボルド三人を見て心配そうに告げる。

特に長毛のメラニーなどは、全身の毛先が震えて、いつもより体が一回り大きくなったようにすら見える。

「武者ぶるいが、止まらないだけ」

「ああ、体の芯から、ぞくぞくする」

「ぅん……」

そんな話をしていると、いつの間にか進軍してきていたダークコボルドたちが加藤たちのすぐそばを進んでいた。

それはまるで押し寄せる黒い津波のようだった。

加藤たちがいる一角が高台かのように迂回しながらも、規則正しく一方向に向かって進み続けるダークコボルドたち。

その黒き津波を構成するダークコボルドたち一人一人。

加藤がすぐ横を通りすぎていく彼らを観察すると、どうやら極度の興奮と、怜悧なほどの集中状態にあるのが見てとれる。

そうしている間に、気がつけば、加藤は一人だった。

その黒き津波に、イサイサもメラニーもドーバーナも、呑まれていってしまったのだ。

興奮と集中が伝播したかのようになって、行軍へと合流するドーバーナたち。

加藤への別れを告げることもなく、気がつけばその後頭部が黒い波に浮かぶように見えかくれするぐらい、コボルドたち三人は加藤から遠く離れていってしまっていた。

「……おいおいおい、マジかよ」

背の高いドーバーナは離れても、辛うじて見てとれる。

しかしメラニーとイサイサはとっくにダークコボルドたちの行軍に紛れてしまっていた。

辺りを熱気が包む。

主の命に服せる喜びを爆発させた、混沌たちの放つ熱気。

末端の兵ですら人間とは比べ物にならないほど力を秘めた混沌たちが、まさにトランス状態とも言えるほどの興奮と冷静の狭間で、その秘めた力の暴発を極めて高いバランスで押さえつけられていることによって放たれたそれは、加藤から見ても火傷しそうなほどの熱量に感じられる。

そうして、加藤が見つめる先。

ドーバーナたちを呑み込んだダークコボルドの黒き津波の先端が、ついに魂の簒奪者、真っ白な巨大赤ん坊の群れと、激突する。