作品タイトル不明
加藤の努力
「はぁ、目黒の触れた可能性のある端末は、これでとりあえずは全てだそうだ」
加藤が疲れた様子でクロに告げる。
クロとオボロ、そして加藤はダンジョン公社本社にいた。
そうして、クロの指示で集められたのは、ダンジョン公社で目黒の触れた可能性のあるPC端末。公社の職員たちが、会議室に集めたPCを並べていく。
「ありがとうございます。ワケミタマドローンによって、支部の方のPCは全て解析しましたが、それらしき手がかりは見つかっておりません。やはり、こちらが本命かと」
「だと、いいんだがな……」
「何か?」
「いやな……」
言い淀む加藤。ダンジョン公社本社地下の会議室の一室に集められた大量のPC端末。
これだけのものを公社中から集めるというのは肉体労働以上に、業務使用中のPCを大量に奪ってくるのに根回し、調整に要した心労的な意味で、かなり大変だったのだ。
そして今から加藤が自分で口にする可能性は、その労力をさらに加算することになるのが明白だった。
それでも加藤は口を開く。ここで言い淀んでも益はないという大人の判断だった。
「目黒個人のIDでログインした形跡のあるPCは、これで以上なんだが……」
「そうですね。個人IDなど抜け道はいくらでもあります。その時はこの公社内のすべてのPC端末を一つ一つ解析していきます」
「まあ、ですよねー」
クロの発言に疲れたように笑う加藤。
そんな二人を他所に、オボロは会議室の椅子に腰かけて、うつらうつらしていた。何か夢を見ているようだ。寝言らしきものが漏れ聞こえる。
「──ユウト、様?」
そこではっとオボロが顔をあげると、クロへ向かって鋭く声をかける。
「おい、クロっ」
「はい。こちらでもユウト様にひそかに同行させていたワケミタマドローンにて確認しました。加藤、目黒詠唱です。場所は早川姫の家の近く。ユウト様の前に姿を現しました」
「な、なにっ!」
「すぐに向かいます」
そういうと、即座に黒雪だるま化するクロ。オボロはすでに臨戦態勢だ。
そのまま、クロの小脇に抱えられる加藤。横になったまま、慌てて加藤は会議室にいた公社の職員に急ぎ情報を課長に伝えるようにお願いする。
荷物のように搬出されていく加藤。
部屋を出る加藤の瞳に映るのは、会議室に並ぶ心労の成果たち。無理をして集められたPCたちは、事態の急変のため、ただただ会議室に放置されるのだった。