軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

島の裏側へ

「あと、三秒後に真っ直ぐに」

クロの指示に、じっと動きを止めるオボロと加藤。

クロが踏み出すタイミングに歩調を合わせて、二人もピタリと追随する。

クロはこっそりと島中を探査させていたワケミタマドローンから得た情報をもとに、加藤とオボロヘ指示を出していた。

大穴ダンジョンの雪原で使用した、自身にホログラムで反対側の映像を投影する技術の応用。それで、擬似的に透明化した超小型ワケミタマドローンたちの持ち寄る情報に一切の隙はなかった。

ただ問題があるとすれば同じユウト由来の力である、目黒のマジカルメイクアップの看破が出来ないことだった。

──油断して、マジカルメイクアップを解除するような隙は見せないでしょうね、目黒 詠唱(ありあ) なら。

そうやって、クロたち三人は、誰にも見つかることなく島の裏側へと潜入しているところだった。

今三人がいるのは、入り組んだ裏路地の一角。

一見寂れたように見える路地だが、それは偽装だと、クロは見抜いていた。

殺傷性の罠の類いは無いが、その代わり機械式、そして人力により監視網が張り巡らされているのだ。

しかし、それはクロにとっては利点でしかなかった。

ワケミタマドローンを通してハッキングを仕掛けて機械式の警報装置に誤報を伝えさせる。ただでさえ月の穴の件で騒然としているのだ。

どうしても生じてしまう監視の隙を縫うように、クロたち三人は島の最奥と思われる地点にまで到達しようとしていた。

「ここの、扉です。物理的に施錠されています。オボロ」

「はいよ」

扉の取っ手に手をかけるオボロ。

「──ふんっ!」

オボロの気合いを込めた掛け声。

扉の内部で、木が裂け鉄がひしゃげる音が静かな路地裏に響く。

「──斬ってと言おうとしたのですが……。まあ、良いでしょう。5秒後に開けます。代わってください」

「はいよ」

「3、2、1──ん……。んっ! んっ!」

オボロの壊した扉を開けようとするクロだが、中でなにかが引っ掛かっているようで開かない。

見かねたオボロが、やれやれ世話のやける──という顔でクロに代わると、力ずくで扉を開ける。再び何かが折れる音がしながら、扉が開かれた、

それをぷくっと膨れっ面で見ているクロ。そのまま三人は、開いた扉の中へと踏み込んでいった。

◆◇

「お客人、ですか。いま、ちょっと来客中でして、後にしていただけますか? って、加藤さん? あれ、カジノに居ると伺っていましたが──」

三人の前に現れたのは、丁寧な物腰の若い男性だった。彼は加藤の顔を見て不思議そうにしていた。

「すまんな、調整者さん。こっちも急ぎでな。顔を出させてもらったわ」

「それはそれはご足労をお掛けしましたね。ただですねぇ。そういった労力をかけて頂くと、こちらも気を使わないといけなくなってしまうんですよね。これまで積み上げさせて頂いた、私と加藤さんの気安い関係も、そのままって訳にはいかなくなるぐらい、には」

「悪いが承知をしている。その上での行動だと思って頂いてかまわんよ、調整者さん」

笑顔で話す加藤と調整者と呼ばれた男性。互いに穏やかな口調ながらもその間の緊張は一気に高まっていた。