軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

おい、諦めるな!

「くっ……なぜだッ!!」

元剣聖リオン・マクバが、苦しそうな表情で叫び出す。

「なぜ……なぜ当たらんのだッ!! 私は剣聖、リオン・マクバであるぞ!!」

戦闘開始から数分が経っていた。

だが、リオンの攻撃は一向に僕に当たらない。すべての剣撃を、僕によって避けられるか防がれている。

そうして奴に生じた隙を、僕は見逃さなかった。

「うおおおおっ!」

僕はありったけの声量を発しながら、思いっきり剣を振り払う。

カキン――と。

振り下ろされてきたリオンの剣が押し負ける。

「なっ……!」

その反動で、リオンは大きく仰け反った。

「お、おい、やめっ……!!」

この致命的な硬直時間に、リオン自身も身の危険を察したのだろう。

必死に制止を呼びかけてくるが、いまさら攻撃をやめるつもりはない。

――淵源流、一の型。

――真・神速ノ一閃。

「ウボァァァァアアア!!」

聞き覚えのある悲鳴を響かせながら、大きく吹き飛んでいくリオン。

そのまま地面をころころ転げまわり、壁面に激突する様は、みっともないと言う他なかった。

「あ……ありえない!」

だが、腐っても元剣聖。

それでも負けじと立ち上がってくるあたりは、さすがの一言である。

「わ、私は最強の剣聖だ! その私がさらにステータスを上げたのだぞ! それでも敵わない相手など――いるはずがない! いていいはずがない!!」

「…………」

そうだな。

リオンは強い。

それは認めざるをえない。

けれど、僕には《対象の経験値蓄積の倍加》という能力がある。

この一週間、レイやカヤたちと特訓するなかで、強くなったのは彼女らだけじゃない。

僕も――その能力の恩恵に預かった者のひとりというわけだ。

とはいえ、相手は最強と呼ばれた元剣聖。

そんな彼すらも《スキルなし》で圧倒してしまうなんて、さすがに予想外だったけれど。

まあ、それでも。

僕のやるべきことは変わらない。

「元剣聖……いや、いまはもう、テロ組織に荷担する末端構成員か」

僕は気合いを込めてリオンと対峙し、その切っ先を奴に向ける。

「前言通り、おまえたちは全員拘束させてもらう。王都の牢獄で……みずからの半生を悔いてもらおうか」

その瞬間だった。

なにがあったのか、僕の身体がほのかに輝きはじめる。

薄暗い室内が、優しい光に照らし出される。

「なっ……。馬鹿な」

対峙するリオンが、大きく目を見開く。

「この風格は……まさか本当に、初代剣聖の……」

「初代、剣聖……?」

「ありえない。剣聖は私だ……。こんな奴であるはずがない……! そんなことがあっていいはずがないッッッッ!!」

そのまま突進してくるリオン・マクバだが。

「淵源流、三の型、光神之剣」

「ウボァァァァァァア!!」

初代剣聖の編み出した技に敵うはずもなく、返り討ちにあうのだった。

その一方で。

アルド家の 元(・) 奴隷、エムのほうは苦戦を強いられていた。

「ううっ……!」

さすがは影石の影響を受けているだけあって、アルセウス救済党は強い。二人の猛攻に、エムは防戦一方に徹するしかなかった。

鳴り響く金属音。

飛び散る火花。

無言で剣を繰り出す構成員に、エムは反撃の機会を見出せなかった。

「これは……驚いたな」

攻撃の手を止めぬまま、構成員のひとりが呟く。

「我ら二人の攻撃を受け続けるとは……驚嘆すべき実力だ」

「ああ。防戦一方とはいえ、上出来の部類だろうな」

エムに対して、構成員たちにはまだ余裕がある。いくらでも余力を残していそうな――そんな雰囲気だ。

「はぁ……はぁ。うぅ……」

「ふふ、だがさすがに限界か」

「うむ。我ら相手によくもったほうだろうよ」

駄目だ。

もう手が満足に動かせない。

振り下ろされる構成員の剣を、防ぎきることができない――!!

「エム!!」

ふと名前を呼ばれたのは、そんなときだった。

「諦めるな! まだ勝機はあるはずだろう!」

「ア、アリオス様……?」

見れば、彼はいち早く決着をつけたらしい。

元剣聖にして、さらに力を身につけたというリオン・マクバを、早くも気絶させている。

すごい。

私が戦っている構成員よりずっと強そうな相手なのに、こんなにも早く倒すなんて――

私は、こんなにも未熟なのに。

と。

「え……」

なにが起きたか、エムは身体の芯から力がわき起こるのを感じ取った。

なんだろう。

自分の力が数倍にも高められたかのような――

「エム! できる限り僕も君を助ける! いままでの苦しみも悲しみも――僕と一緒に乗り越えていこう!!」

「あ……」

アリオスのその発言に。

エムはさっき以上に、活力を高められた気がした。

「はああああああああ!」

エムは咄嗟に剣を振りかぶり、襲ってきた構成員の剣を力づくで弾き返す。

「なにっ……!」

仰天の声を発する構成員に向けて、エムは剣を振り下ろした。