軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

おい、まだ僕は本気じゃないぞ

「う……う……」

突如にして、ダドリーが呻き声を発し始めた。

「うおおおおおおおおおっ!!」

そのまま両腕を大きく広げるや、すさまじい叫び声を響かせる。彼の周囲をまとっていた白銀のオーラが、より一層の大きさと密度を帯びる。

「……ぬ」

僕は目を細め、警戒心を強める。

――ダドリーの奴、やっと本気を出す気になったか。

さっきまでとは風格が段違いだ。やはり手を抜いていたようだな。

「……ふふ、そうじゃなくては面白くない」

僕の呟きに、ダドリーが

「なんだと?」

と眉をひくつかせる。

「僕だってまだ本気を出してないからね。こんなに呆気なく終わっては締まらないだろう」

「あれで……本気じゃない……?」

なぜかダドリーは一瞬だけ絶望したように俯いたが、数秒後、乾いた笑みを浮かべる。

「へへへ……。冗談も大概にしやがれ。この上なにをするつもりってんだ」

「まあ――戦っていくうちにわかるさ」

「けっ。いちいち勘に触る野郎だな……」

ダドリーは顔をしかめるや、再び戦闘の構えを取る。

そして。

ダッッッ!!

咄嗟に地を蹴り、僕に向けて突進してきた。

空気を切り裂くその速度は、さきほどとはまるで別人。

「おおおおっ……!」

観客たちも歓声をあげる。

喜ぶべきか悲しむべきか、僕にも剣士としての血が流れているようだ。ダドリーのスピードに、すこしだけワクワクしている自分がいる。

――面白い。

やはりこうでなくては!

視界に剣が迫る。

キィン! と。

僕は難なく受け流す。

隙ができたところに殴打を敢行。

「ごげっ!!」

ダドリーが唾を吐き散らしながら吹き飛ぶ。

だがそれだけでは終わらない。

咄嗟に受け身を取り、再び襲いかかってくる。僕はそんなダドリーの剣を、難なく受け止めていく。

「は、速い……!」

「さすがはダドリー様……!」

「で、でもよ……なんでアリオスはあのスピードについていけてんだ……?」

「しかも余裕そうだぞ?」

観客たちのそんなどよめきさえ、僕の意識には入らない。

まだだ。

もっと上を目指せる。

剣聖の、その先へ――!

僕は大きく後退すると、スキル《チートコード操作》を発動する。

――――――

使用可能なチートコード一覧

・攻撃力アップ(小)

・火属性魔法の全使用

・対象の体力の可視化

・対象の攻撃力書き換え(小)

・吸収

――――――

選ぶ能力は《火属性魔法の全使用》。

いま効果的な選択はこれだろう。

「ふぅ……」

僕は片腕を突き出すと、手の平に魔力を集中させる。魔法の特訓をしてこなかった僕だが、その使い方はなんとなく肌にわかった。

「ん……? おい、まさかおまえ――」

ダドリーが目を見開くが、この隙を逃すわけにはいかない。

――中級魔法、フレアゾーン。

途端、大の男ほどもある火球がダドリーの周囲にいくつも発生する。

「はっ? はっ? 魔法? 嘘だろ!?」

ダドリーは困惑がおさまらぬ様子。

まあ、そりゃ驚くよな。

リオンからも、僕が魔法を使えるなんて聞いてないだろうし。

「お、俺……夢でも見てるのか……? あれは魔法――しかも中級魔法じゃ……」

「剣も魔法もあそこまで使える奴なんて、王都にいるのか……?」

「ダドリー様もさすがに魔法なんて使えないよな……」

観客のどよめきを聞き流しつつ、僕は

「はっ!」

魔力を解放する。

ダドリーを囲んでいた火球は一斉に動きだし、剣聖候補に襲いかかる。

「ぬあああああああああっっ!!」

爆発。

閃光。

轟音。

終極魔法ほどではないとはいえ、看過できぬダメージが通ったはず。これで戦局は僕に傾いただろう。

念のため、チートコードの《対象の体力の可視化》を選択。

視界に奴の残り体力が表示された。

うん。

思った通り、ダドリーは限界が近い。いまだに倒れないあたり、さすがにこれまでの敵とは格が違うか。

よくよく見てみると、右足がそろそろ危うい様子。これで奴の動きを封じることができれば勝ちだ。

念のため、チートコードの《攻撃力アップ(小)》も選択しておく。油断は禁物だからな。

「けほっ……けほっ……!!」

ダドリーはいまだに黒煙にもたついている様子。

決めるならいまだ。

「おおおおおおおっ!!」

淵源流。

一の型。

真・神速ノ一閃。

僕の振るった剣が、ダドリーの右足を的確に捉えた。

「う、う、嘘だろぉ……?」

情けない声を発しながら膝をつくダドリー。

――終わりだ!!

その頭部のギリギリ手前に、僕は剣を差し向けた。