軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

おい、その悲鳴はなんだよ

僕はいま、かつてないほど全力で疾走していた。

ダドリー・クレイス。

聞くところによると、召使いたるメアリーにちょっとした好意を抱いていたという。

それが高じてマクバ家では頻繁に暴力を振るっていたようだが……まさかこんなことになるなんて。

くそ。

ダドリーの奴……絶対に許さないぞ……!

ちらりと背後を振り返ると、遠くでレイが疾走していた。

全力で走ってしまうと、僕がどうしても先を行ってしまう。だが周囲に魔物の気配はないし、レイも「先に行ってて」と言ってくれた。申し訳ないが、ここはスピードを優先させてもらう。

急げ、急げ――

知らず知らずのうちに、鼓動が高鳴るのを感じる。

間に合え、間に合え、間に合え――!!

どれだけ走ったろう。

ラスタール村が見えてきた。

人だかりができている。

その中心に立つのはダドリーと……数名の剣士か。取り巻きも一緒に連れてきているようだな。

Aランク冒険者のカヤも仲裁に入ろうとしているが、ダドリーたちには分が悪そうだ。取り巻きたちに立ちふさがれ、にっちもさっちもいかない様子である。

そして――ダドリーの前でうずくまっているのが。

昔からずっと仕えてくれた忠実なるメイド――メアリー・ローバルト。

殴られたのかもしれない。

腹を抱え、両膝をついている。

「へっ、こんなとこにいたのかよメアリー」

遠くからでも、ダドリーの嫌みったらしい声はよく聞こえた。

「馬鹿だな。前から言ってるだろ? 剣聖を継げなかった《外れスキル》のポンコツよりも――俺のほうが断然いいってよ」

「…………いいえ。そんなことはありません」

白銀の剣聖に殴られてもなお、メアリーは動じない。

「彼は立派な人です。あの日……なにもできなかった私を、彼は慰めてくれました。前と変わらない、優しい声で」

「あ……?」

「外れスキル所持者? ポンコツ? 知ったことではありません」

そしてメアリーは立ち上がり、敢然とダドリーと対峙する。

「いかにあなたが強くとも……私のご主人様は、ずっとアリオス様です!」

「て、てめぇ……」

ダドリーが憎々しげな表情で両の拳を鳴らす。

「いいだろう。そこまで言うなら力づくでわからせてやるよ。俺様の凄さをな……!」

させない。

絶対にさせるものか――!

「ぬおおおおおおおっ!」

気づいたとき、僕は叫んでいた。

淵源流。一の型。

真・神速ノ一閃。

「なんだ……?」

「なにかいるぞ……?」

取り巻きたちが僕の接近に気づいたようだが、もう遅い。

僕は剣を抜き、振り下ろされたダドリーの拳を受け止めた。

「な、なにっ……!」

大きく目を見開くダドリー。

「久しぶりだな、剣聖候補。こんなところで――なにをしている」

「くおおおおおおおっ!」

それでも力づくで拳を押し込んでくるので、僕はスキルを発動する。

選ぶ能力はもちろん《攻撃力の書き換え》。

ダドリーの攻撃力を1/4に書き換えた。

「な、なんだ……? 力、出ねぇぞ……?」

ドォン!

目を見開いている間に、あいた片手でとびきりの一発を見舞ってやる。

もちろん攻撃力(小)を重ねがけしたうえで――だ。

「ウボァー!」

情けない悲鳴をあげて吹き飛ぶ剣聖候補。

「なっ……!?」

「ダドリー様!?」

取り巻きたちが慌ててダドリーを起こしにいく。

「いて、いててててててっ……!」

情けない悲鳴をあげながら、取り巻きたちに起こされるダドリー。

「てめぇ……誰かと思えば、アリオス・マクバかよ。わざわざ自分から来るとはな」

奴の妄言を無視し、僕はメイドの頬をさすった。

「大丈夫か……メアリー」

「は、はい……。ありがとうございます。また助けられちゃいましたか……」

「いいんだよ。気にするな。おまえは遠くへ下がっててくれ」

「はい。愛しています、アリオス様」

メアリーはぺこりと頭を下げると、そそくさと人垣のなかに消えていく。心なしか、うっすら頬を染めていた。

「ちっ」

その様子が気にくわなかったのだろう。

「あああああああああああっ!!」

ダドリーが突如として大声を発した。

「うぜぇうぜぇうぜぇ!! おまえは外れスキル所持者だろうが! 俺のほうが断然強いんだっての!! わかる!?」

「ダドリー、おまえは……」

「リオンさんも言ってたぜ! 俺のほうが、アリオスなんかよりよっぽど剣筋がいいってな! アリオスを捨てて正解だって言ってたぜ!」

「っ…………」

その言葉は――重かった。

あれほど慕っていた父上が。

剣聖である以前に、息子として尊敬していた父上が。

裏で、そんなことを……

僕の様子に満足したのか、ダドリーは鼻を伸ばして胸を張る。

「あのリオンさんがそう言うんだ。俺のほうが断然優れた剣士。そうだろ?」

「――頭の悪いミソッカス剣士さん。寝言はそこまでにしてもらえるかしら? 耳にウジ虫が湧きそうですので」

そんなダドリーに水を差したのは、遅れてやってきたレイ。

いや。

意図的に変装を解除したのだろう。深く被った帽子をはずし、自身の顔がよく見えるようにしている。

「な……な!?」

今度こそ、ダドリーの目が大きく見開かれた。

「レ、レレレレ、レイミラ様!?」