軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

外れスキルの所持者は、剣聖を超えていた

メアリー・ローバルトは、己の不運を嘆いていた。

新たな剣聖の跡継ぎ、ダドリー・クレイス。

彼に嫌気が差し、メアリーはマクバ家を抜け出した。

彼女だけじゃない。他にも多くのメイドがマクバ家を抜け出していた。

とはいえ、メアリーに行く宛なんてない。

強いて言うなれば、ラスタール村だろうか。

風の噂で、《外れスキル所持者》がそちらに向かったと聞いたのだ。

もしかすれば、そこにアリオスがいるかもしれない。

――ほら、これあげるから泣かないで。君のために作ったんだ――

どうしても忘れられなかったのだ。

優しい表情でハンカチを手渡してくれた、前の剣聖候補を。

――その道中で、謎の集団にさらわれた。

悲鳴も抵抗もままならなかった。

呆気なく手足を拘束され、謎の場所に連れ込まれた。

その動機も、集団の正体も、メアリーにはわからない。

けれど。

「ククク、いい女だ。 色々(・・) と使えそうなことよ」

「くうっ……」

メアリーは現在、拘束されていた。

壁面に立たされ、両手と両足を鎖に繋がれて。

力を持たないメアリーには、もはやなすすべがない。

「君もたしか、王都の住人だったね。クク、これはいい材料になりそうだ」

「あ、あんた……」

メアリーはそっと相手を睨みつける。

灰色のローブをまとい、顔を完全に隠した謎の男。他にも同様の格好をした者を何人か目撃している。

こいつらはいったい何者なのか。なぜ自分をさらったのか。

なにもわからない。

なにもわからないまま、メアリーは現在、拘束されている。

「だが、いまは美しい女性が目の前にいる喜びを 言祝(ことほ) ぐとしよう。ククク……」

男の手が、メアリーに向かってゆっくり伸ばされていく。

「いや。やめて……!」

このとき、脳裏に浮かんだのはやはり 彼(・) の顔だった。

アリオス・マクバ。

もし叶うのなら、もう一度、彼に会ってみたかった――

「メアリー!!」

ふと聞こえたのは、懐かしいあの声。

泣き虫だった私をずっと気にかけてくれた、優しい男性の声。

笑い話だ。

彼を思うあまり、こんな瀬戸際で幻聴まで引き起こすとは。

「おおおおおおおおっ!!」

いや。

違う。

幻聴じゃない。

この懐かしくも頼もしい、この声は……!?

「アリオス様!?」

彼は剣聖候補で、だけど《外れスキル》の所持者で。

王都では誰もが彼の落ちぶれっぷりを噂していて。

けれど――次の瞬間に彼が見せた剣技は、ダドリーどころか剣聖リオンすらも圧倒しかねない迫力を秘めていた。

「淵源流、神速ノ一閃!!」

「ぬ……おわああああああっ!!」

ローブ男の悲鳴が響きわたった。