軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

おい、どんな夢を見てるんだ

――すごい。

両断された大木を遠目に見やりながら、僕は自身の両手を見下ろす。

あれを……僕がやったのか。

剣聖というスキルを得ることができず。

《外れスキル所持者》としてマクバ家を追放された僕が。

淵源(えんげん) 流。

それは初代剣聖が生みだし、マクバ流の根元となった流派。

振るう者はまさに鬼のような身のこなしで戦場を駆けめぐり、味方からは賞賛され、敵からは恐れられていた。

それだけに扱いが難しい。

剣の極地に至りし者のみが使える、伝説の流派とされていた。

その力を――手に入れることができた。

やばい。

こればっかりは、さすがに。

さっき、ファルアスは次世代に力を引き継ぐと言っていた。

まだ詳細はわかりかねるが、その跡継ぎに僕が選ばれたということだろうか?

当代最強のマクバ流をも上回る、歴代最強の後継者として。

チートコードの一覧を開くと、さきほどの《&%%%$》という表記は消えていた。

あれがいったいなんだったのか、結局わからずじまいだな。

「はは……ははは……」

駄目だ。

頭が混乱してきた。

寝よう。

こういうときは寝るに限る。

「すー、すー……」

家に戻ると、レイが呑気に寝息を立てていた。わりと際どい格好をしていたので、とりあえず毛布をかけてやる。

「むにゃむにゃ……ああアリオス、大好き……あっ」

「…………」

ずいぶん幸せな顔してやがる。

なんの夢を見てるんだこいつは。

僕は壁にもたれかかると、座った姿勢のまま眠りにつくのだった。

一方その頃。

マクバ家の屋敷では。

「おい……おまえも辞めるのか」

アリオスの父――リオン・マクバは絶望の表情を浮かべていた。

「はい……。ダドリー様には、もうついていけませんので」

「そうか。いままでより報酬を上げることはできるが、それなら――」

「結構です」

きっぱり言い放ち、召使いが部屋から出ていく。

「…………はぁ」

ひとり、リオンはため息をつく。

仮にも剣聖と名高き自分が、こんなにも冷たい態度を取られるなんて。

前までは、自分が通るだけで尊敬の眼差しを向けられたのに。

いまではそれすらない……

原因はわかっている。

剣聖の跡継ぎ――ダドリー・クレイスだ。

横暴な彼に対し、思い切った態度を取れないことが不信感に繋がっているのだろう。

それはわかっている。

わかっているんだ。

だが彼はマクバ家にとって希望の星。もし家を出られでもしたら、王族との結びつきが弱くなってしまう。代々続くマクバの伝統が、自分の代で終わってしまう。

それだけは避けねばなるまい。

――いまは耐え時、か。

ダドリーもいつか自身の未熟さに気づくはず。それまで自分が頑張るしかない。

「リオンさん! なぁ、リオンさん!」

ふいに部屋の扉が開けられた。

ダドリーだ。

なんだか様子がおかしい。涙目を浮かべているような……

「ダドリーか。どうした?」

「リオンさんの実の息子……って、名前なんていったっけ?」

「ん? たしか……アリオスだった気がするが」

「やはりそうか……」

妙に納得するダドリー。

「なんだ? アリオスがどうかしたのか?」

「……俺、そいつだけは許さねえ」

「ん?」

意味がわからなかったが、ダドリーが腫れた右頬をさすっているのを見て、なんとなく理由を悟った。

――メアリーだ。

「あのクソ女、《アリオス様のところに行く!》とか言いやがって……。俺のほうが強いってのに、見る目ねぇよな」

「……まあ仕方あるまい。メアリーはアリオスにぞっこんだったからな」

「俺は納得できねえよ。なあリオンさん、いまアリオスはどこにいるんだ?」