作品タイトル不明
第446話 黎明の実力
【名前】-
【称号】-
【種族】アーリマン
【脅威】B
【状態】良好
【年齢】1歳
【レベル】10
【HP】122/122
【MP】101/101
【筋力】45
【敏捷】58
【魔力】54
【器用】60
【耐久】48
【運】1
【特殊能力】風魔法(Lv6/C)
【詳細】自分より魔力が低い者を様々な状態異常にする
ステータスは予想よりも低かった。状態異常攻撃もクラリスが予め予想していたが、気になる点が1つ。年齢だ。こいつここでポップしたわけじゃないのか? まぁ今考えても仕方のないことだが。
「作戦通りやるぞ!」
鑑定したと同時に一匹のアーリマンがこちらに気づくと、他のアーリマンも次々と俺たちを目がけて飛んできてはウィンドカッターを唱えてくる。
「姫! 相殺だ!」
「任せるのじゃ!」
俺の風魔法と姫の芭蕉扇で、アーリマンのウィンドカッターを相殺する。俺1人でも十分なのだが、俺には別の役割もあるからな。
「クラリス! ミーシャ! 撃ち落とせ!」
俺が叫ぶとクラリスは 魔法の弓矢(マジックアロー) 、ミーシャは 氷槍(アイススピア) を撃ちまくる。次は俺の指示をまだかと待ちわびているエリーだ。
「エリー! アーリマンの気を引ければそれでいい! ダメージを受けたらすぐに戻ってこい! MPが枯渇する前にもだぞ!」
待ってましたと言わんばかりに、風のブーツの効果で空を舞う。いつもは俺からくっついて離れないエリーだが、戦闘となると塩対応。それに状態異常になるのであればエリーの可能性が一番高いし、無茶をするから目が離せない。
そんなエリーに注意を向けたアーリマンたちが次々とクラリスとミーシャによって撃ち落とされる。
落ちたら待っているのはカレンとアリス。
羽を撃ち抜かれ飛べないアーリマンに対し、カレンのファイアボールが襲う。風魔法を連射してなんとか耐えるのが精一杯のアーリマン。そこにアリスの細剣が突き刺さる。
「カレン! アリス! お互いの状況をよく見て戦ってくれ! ないとは思うが状態異常にかかったら報告するように! 腐っても脅威度Bだ! 風魔法も使ってくるし、突進もしてくるかもしれないから油断するなよ!」
カレンのことは心配することはないだろう。遠距離からの攻撃が得意だからな。
問題はアリスだ。ステータス面ではほぼ互角。傷ついたアーリマンとはいえ、複数を相手にするにはまだ早い。
――アーリマンを倒すだけであれば、もっといい戦い方はある。俺がメインで戦って、女性陣にサポートしてもらうという戦い方だ。当初はこの作戦でいく予定だった。
しかしその作戦にしなかったのには理由がある。アリスだ。
アリスは1日でも早く他の女性陣に追いつきたいと、日頃から 弛(たゆ) まぬ努力をしてきた。しかし先の作戦では、遠距離攻撃を持たないアリスは後方支援になってしまう。
それを不憫に思ったクラリスが、皆の意見を聞き、考えたのがこの作戦だ。アリスは大いに喜び、女性陣も皆この作戦の支持を表明した。
危険度は増すかもしれないが、皆がアリスをフォローし、俺の判断で作戦を変更することができるという条件の下、この作戦を実行したのだ。俺だって頑張るアリスに寄り添いたい。
だから皆がアリスに注意を向けて、声を掛け合う。
「アリス! もう少ししたら目の前にアーリマンを落とすわよ!」
「はい!」
「目の前の死体が邪魔になったら言いなさい! 私が燃やすわ!」
「ありがとうございます!」
アリスが手一杯になりそうになると、皆でカバーする。ガルが見たら、アリスばかり働かせて虐めるなと怒鳴るだろうなと思いつつ、俺もそれに加わる。
「ちょっ!? マルス君!? みんな飛ばしすぎじゃない!?」
そんな中、カストロ公爵が叫ぶ。確かにカストロ公爵の気持ちも分かる。現にミーシャのMPはもう枯渇寸前。ミーシャはそれに気づかないのか、まだ魔法を撃ち続けていた。
「ミーシャ! 来い!」
俺に呼ばれたことで自分のMPが枯渇寸前になっていたということに気づいたミーシャが、すぐに駆け寄ってくる。
「ごめんごめん。夢中になり過ぎちゃって」
手を合わせて謝るミーシャ。
「自己管理はしっかり頼む」
ミーシャを抱き寄せラブエールを唱えると、ミーシャはお礼とばかりに俺の頬にキスをし、持ち場に戻る。
「エリー! エリーも戻ってこい!」
風魔法に俺の声を乗せて空を駆けるエリーに届けると、意外にもあっさり降りてきた。
「大丈夫か!?」
ラブエールを唱えてから聞くと、
「……うん……オーガより弱い……」
ぼそりと一言。確かにオーガの方が俺たちにとっては強敵だ。それもこれも対空攻撃があるからなのだが。
「分かった! だが慢心はするな! 何かあったらすぐに下りて来いよ!」
「……うん……ありがと……」
ミーシャがしてくれた反対側の頬にキスをしてくれ、再度空を駆ける。しばらくするとまたミーシャが俺の胸に飛び込んできて、俺の頬にキスマークを残して持ち場へ向かう。
そしてそれを見ていたカストロ公爵がついに痺れを切らす。
「マルス君!? ここは戦場よ!? さっきから何をイチャついているのよ!? それにみんなのMPは!? もういい加減枯渇してもおかしくないはずよ!?」
先ほど階段を補強しただけに留めたので、俺のMPにはまだまだ余裕がある。俺からMPを供給できる以上、【黎明】にMP切れの心配はない。姫も芭蕉扇を扇いでいるだけだしな。
「あ、いえ……別にイチャついていた訳ではなくてですね……あとMPのことはまだ気にしなくても大丈夫です。半分以上は残っていますし……」
「まだってどういうことよ!? そんなことありえるわけないじゃない! しっかり説明しなさい!」
曖昧な答えにカストロ公爵の怒りが頂点に達した時、エリーが空中から降りてきた。
「……仲間……呼んでる……いっぱい……来る……」
どうやらアーリマンもこのままでは勝てないと分かったらしい。申し訳ないがカストロ公爵に付き合っている暇はない。
「増援が来るぞ! かなりの数らしいから俺が一度蹴散らす! みんな下がってくれ!」
俺の号令に従い、目の前にいる魔物を処理し、皆が俺の後ろに下がると、幻獣の森から空を覆いつくす数のアーリマンが飛び立つ。
100体どころの騒ぎではない。そしてこの光景にカストロ公爵と双子が震えながら身を寄せ合い、お互いの体を抱き合う。一番厄介な3人がまとまってくれるのは都合がいい。
「みんな聞いてくれ! ちょっと試してみたいことがある! 説明する時間はないが、突風が吹き荒れるかもしれないから耐えてくれ!」
クラリス、ミーシャ、姫の風魔法が使える3人が女性陣の前に立つ。
これで準備は万端。俺がやろうとしていることは単純だ。
上昇気流の魔法……つまりトルネードがあるのであれば、下降気流の魔法があってもいいのではないか? しかしそんな魔法は聞いたことがない。数百年も生きる【風王】、リーガン公爵の側にいるサーシャですらもだ。
いくら風魔法が得意なアーリマンとはいえ、知らない魔法……未知の魔法についてはレジスト出来ないのではないか? そんな思いからこの魔法が頭を過った。これがダメでもやりようはいくらでもある。
もし失敗、あるいはレジストされても【風王】で風魔法レベル、魔力も圧倒的に上回っている俺は、アーリマンのウィンドカッターよりも射程も威力も数倍高い。遠くからウィンドカッターを唱えているだけでも完封できるかもしれない。
それに俺1人でもブリザードを発現できるようにはなっているが、クラリスとミーシャ、そして姫の力を借りれば、より威力の高いブリザードになるかもしれない。
大丈夫。絶対に負けない。
そう自身に言い聞かせ、右手を天高くかざす。
唱える言葉は既に決め、魔力を帯びた風をもう広範囲に漂わせている。あとはアーリマンたちが射程に入るのを待つだけ。
そしてすぐにその瞬間が訪れた。アーリマンが俺たちを射程に入れようと無防備に羽搏く。
「みんな! 吹っ飛ばされるなよ!」
緊張が伝わり、右手を振り下ろすと共にその言葉を発する。
「ダウンバースト!」