軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第447話 マルス式マッチポンプ

マルス君が右手を振り下ろすと、アーリマンたちが高所から飛び降りたみたいに地面に叩きつけられる。

風の呪縛から逃れようと懸命に羽搏こうとするも、圧倒的な魔力に屈したアーリマンは羽すら動かせない。

アーリマンたちを地面に叩きつけた風は、逃げ場を失い地表に広がり、幻獣の森を激しく揺らす。

その風の威力は、木を根こそぎ吹き飛ばしてしまうかもと思わせるほど。

そして今まさに私たちにもその風が迫ろうとしている。アーリマンですら抵抗できなかった風。私を中心にフランとフレンの3人で身を寄せあっていたとしても、小石のように飛ばされてしまうのは目にみえている。

少し離れたところにいるクラリスたちでさえ、髪は乱れ、スカートは捲れ上がり、抗うのがやっとの状態。

吹き飛ばされながら神聖魔法を唱えることができれば、なんとか生き残れるかなと思っていた時だった。

「皆さん、大丈夫ですよ。リラックスしてください」

穏やかで心地よい声が太陽の匂いと共に響く。振り向くと、優しく微笑むマルス君が、フランとフレンの肩に軽く手を乗せ、私たち3人を包むように立っていた。

――――刹那、地面を揺らすような暴風が、ある所を境に爽やかな風となり私たちを通り抜けていく。

再度振り向くと、クラリスたちの方を見ていたマルス君がお日様のような笑みを向けてくれる。

その笑顔にフランとフレンの長く凍っていた心が溶かされていくのが分かる。男嫌いの2人が触れられても拒否反応を起こさないのが何よりの証拠。

やはりマルス君の同行を認めたのは失敗だったかもしれない。その笑顔は2人の心だけではなく……。

「みんな! 大丈夫か!?」

ダウンバーストの風が収まりクラリスたちに声をかける。

すると皆が一斉に振り返り、笑顔を見せるが、すぐにその表情が曇った。

「今の魔法で、3人ほど被害を受けた人がいまーす。重症でーす」

ミーシャがジト目で見てくる。

「す、すまない! 木の枝か何か飛んできたのか!? すぐに回復を!」

カストロ公爵たちの無事を確認してから、皆の方に駆けよると姫が一言。

「マルスよ、妾たちは大丈夫じゃ。それよりお主、今の狙ってやっていたのではないのかえ?」

「ああ。思いついたらやってみたくなって……ただ効果は抜群だ。見てくれ」

気絶しているアーリマンたちを指さすが、皆は反対方向を見ている。そっちはカストロ公爵たちしかいないのだが……。

「確かに効果は抜群じゃ……はぁ……妾が言えた義理ではないが、お主たちも大変じゃのう……」

【黎明】女性陣を同情するように見る姫に、カレンとアリスが答える。

「まぁ仕方ないわよ。これがマルスだもの」

「そうです……だからこそ私も自分を磨き続けなればならないのです!」

さらにクラリスが俺の右手を取り、可愛く頬を膨らませる。

「もう。ダウンバーストは禁止ね!」

「え? でも、かなりの成果を……ほとんどが気絶しているし……それに……」

弁明しようとするが、クラリスが俺の手に人差し指をあてる。

「き・ん・し! 分かった!?」

「は、はい……」

クラリスの圧に押され渋々頷く。でもよくよく考えたらダウンバーストを使うとスカートが捲れてしまからな。ブラッドやコディの前では使うのを控えた方がいいだろう。

「フラン様、フレン様。アーリマンが気絶しているので今のうちに倒していただけませんか? カストロ公爵がお2人を強くするようにとのことでしたので」

俺の言葉に満足したのかクラリスが、まだ身を寄せ合う双子に声をかける。しかし2人は俺を見つめたまま動こうとしない。

恐らく俺が気絶させたアーリマンを倒したら経験値の横取りだと思われてしまうと思っているのだろう。

「気にしないで下さい。僕たちはまだ機会があるので」

パワーレベリングはステータスが上がりにくいからな。スパルタかもしれないが、アリスに止めを刺してほしくはない。

双子に話しかけると、ぜんまいが巻かれたように急に動き出す。

「クラリス、エリー、アリス。フランさんとフレンさんを頼む。カレンは倒したアーリマンを燃やしてくれ。ミーシャと姫はカストロ公爵の護衛を」

まだアーリマンが来るかもしれないし、気絶したアーリマンが起きてしまうかもしれないからな。

俺も皆から少し離れたところで双子が止めを刺すのを見守る。驚いたことに2人とも両手に1本ずつ持っていた。

二刀流って俺とリュートだけだと思っていたが、結構いるものなんだなと思ったが、どうやら2人の剣は俺やリュートが持っていた剣とは違う。

鑑定してみたくなったので、ミーシャと姫が護衛するカストロ公爵の所へ向かう。

「カストロ公爵。あの2人を鑑定していいですか?」

無断で鑑定するとなんて言われるか分からないからな。

「いいわよ。もしかしてマルス君、あの2人に興味が湧いたの?」

カストロ公爵の言葉にミーシャが不安そうな表情を見せる。ちょっと配慮が足りなかったかな。

「ええ、あの剣が気になりまして。ミーシャ、変な意味じゃないからそんな顔しないでくれ」

優しく頭を撫でると、いつものミーシャに戻り、破顔する。やっぱりミーシャには笑顔が似合う。

ミーシャの頭を撫でながら2人を鑑定すると、2人も鑑定されていることに気づいたのか、チラチラこちらを見る。

やっぱり覗いているようで少し後ろめたい気持ちになる。もう興味本位で婚約者以外の女性を鑑定するのはやめにしよう。

で、その結果がこれだ。

【名前】フラン・ツイーネ

【称号】-

【身分】人族・ツイーネ女爵家当主

【状態】良好

【年齢】18歳

【レベル】38

【HP】85/85

【MP】12/12

【筋力】47

【敏捷】52

【魔力】5

【器用】66

【耐久】38

【運】5

【特殊能力】双剣術(Lv7/C)

【装備】ミスリル銀の双剣

【装備】ミスリル銀の軽鎧

やはり双剣使いか。妹のフレンも同じようなステータスで、2人ともB級冒険者クラスだった。

少し前のアリスが同じくらいのステータスだったが……今度はアリスを鑑定しようとすると、アリスが俺の視線に気づき、嬉しそうに手を振ってくれたので、俺もそれに応える。

【名前】アリス・キャロル

【称号】細剣王

【身分】人族・平民

【状態】良好

【年齢】11歳

【レベル】38(+3)

【HP】77/77

【MP】200/260

【筋力】54(+6)

【敏捷】66(+10)

【魔力】58(+7)

【器用】57(+6)

【耐久】53(+5)

【運】20

【特殊能力】細剣術(Lv8/A)

【特殊能力】神聖魔法(Lv4/C)

【特殊能力】水魔法(Lv1/G)

【装備】聖銀のレイピア

【装備】戦姫の法衣

【装備】偽装の腕輪

【装備】守護の指輪

偶然にもフランと同じレベルだが、やはりステータスはアリスの方が上か。毎日豊胸魔法と水魔法の訓練をしているからMPの伸びもいい。後でアリスも褒めてやらないとな。

「どう? マルス君? 改めてみると美人でしょ?」

どうやらカストロ公爵はずっと俺が双子を見ていると思っていたようだ。実際はほとんどアリスを見ていたのだが……もしかしたら手を振ったのも双子に振ったと思っているのかな? まぁカストロ公爵に誤解されても痛くはない。ミーシャもしっかり俺がアリスに手を振ったところを見てくれているしな。

「ええ。そうですね。ありがとうございました。アーリマンたちを倒し終わったみたいなので今日のところはもう帰りましょう」

初日の幻獣の森での戦闘はつつがなく終える事ができた。