作品タイトル不明
第346話 3本の手
2032年3月16日 7時
「よう! なんで昨日帰ってきて俺たちに声をかけてくれなかったんだ? そしてなんでこんな早い時間に1人で登校しているんだよ? 急によそよそしくなりやがって」
登校中に後ろから声をかけられる。
「昨日声を掛けたかったんだが、ちょっと忙しくてな。本当は今日もお前たち……ゴンたちと一緒に登校したかったんだけど久しぶりで言い出しづらくて……」
声をかけてきたゴンに素直に答えると
「水くせぇな! 少し離れたくらいで友達じゃなくなるのか!? まぁいいや、今日から今まで通りだからな!?」
ゴンが背伸びしながら俺の肩に右肘を置きながら言う。ゴンもかなり背が高くなったな。去年の夏ごろではこんな事出来なかったのに。
「ああ、ありがとう。これからは遠慮しないで声をかけに行くからな」
俺の言葉を聞いたゴンが嬉しそうに俺の背中を叩きながら頷く。
「そういえば昨日クラリスを部屋に連れ込んだって本当か? 知り合いが昨日興奮しながら吹聴していたからな」
ゴンの質問に答えようとすると後ろから
「言い方が悪いけど私がマルスの部屋に行ったのは本当よ。でもしっかりとリーガン公爵の許可は貰っているからね」
クラリスが答える。まぁ俺はゴンたちの他にもクラリスたちが後ろから走ってきているのはなんとなく分かっていたのだが、ゴンたちは気づいていなかったらしく、急に生クラリスを見たことでフリーズしてしまっている。
ちなみに走ってきたのはクラリスたちだけではない。しっかりとクラリスたちの後ろには早い時間にも関わらず男子生徒がついてきている。
俺の隣を歩いていたゴンたちがフリーズしてしまったのでクラリスとエリーがいつもの定位置に収まり、カレンとミーシャが俺の正面から、アリスは後ろから朝の挨拶と共に抱き着いてくる。
これは男子生徒たちからの熱烈なラブレターが来ることは間違いないだろうな。
男子生徒たちの羨望の眼差しを一身に浴び教室に向かう。
2032年3月16日9時
「ねぇ結果はどうだった?」
クラリスとエリーが興味深そうに話しかけてくる。
「180cmの85kgだったよ。もう身長は完全に止まったな。クラリスは?」
初登校で最初にしたことは身体測定だった。そして今【暁】全員の身体測定が終わり、教室で担任のローレンツが来るのを待っている。
日本であれば女性の身長や体重を聞くのはご法度だと思うのだが、この世界にそれはなく、俺と【黎明】女性陣の間にもそのルールはない。まぁ聞かれない限りは聞かないが。
「私は去年と全く変わらず……」
「160cm、48kg、上から85、60、84のDか?」
クラリスの言葉を遮り去年の数字を言うと、ビックリした表情で頷く。ちょっと引かれたかもしれないが、ここは世界一のクラリスマニアをアピールしておかないとな。
「……私……ウェスト1cm……細くなった……」
俺の言葉を聞いたエリーが心配そうに言う。きっと俺がクラリスのだけ覚えていて、エリーのを覚えていなかったらどうしようと思っているのかもしれない。安心してくれ。俺は 今(・) の(・) エリーの事も誰よりも知っている自信はあるからな。
「じゃあ165cm、54kg、上から90、62、89だな」
ウエストが細くなったことでカップ数は分からないが答えると、
「……正解!……嬉しい……」
不安な表情から一転、法悦の笑みを浮かべる。
クラリス、エリーの3人と話しているとそこにカレンとミーシャも加わる。
「なんかこうやって数字が出ると私だけ本当に背が小さくて嫌になるわ。5cm伸びて喜んでいたら、ミーシャが12cmも伸びているなんて……私も今日からアリスに神聖魔法でマッサージしてもらおうかしら」
カレンの言葉にミーシャが
「でもカレン出るところ出てるからいいじゃん! 私結局Aのままだよ? まぁマルスがこんな私でも好きって言ってくれているからいいけど……」
というとカレンが145cmでミーシャが157cmといったところか。やはりミーシャは急に大きくなったな。成長期というのもあるのかもしれないが、これはアリスの力もあるだろう。
しかしこの結果にちょっとミーシャがテンション落ちていそうなので一言声をかけようとしたが、思い出したかのようにアリスの結果を話し始める。
「でもね、驚いたのがアリスなの! アリス凄いんだよ!? 158cm、47kgで83、60、84のCカップだって! クラリスとほぼ一緒じゃん! 私も神聖魔法使いだったら、2人のように完璧なスタイルだったのになぁ……」
スタイルの為に神聖魔法使いになりたいという奴初めて聞いたぞ?
ちなみに需要は無いと思うが4人の男メンバーは
バロン170cm、68kg
ブラッド196cm、100kg
コディ172cm、68kg
クロム165cm、58kg
となっている。みんなしっかり成長をしているが、やはり獣人のブラッドはデカかった。
しばらくミーシャを中心に雑談を楽しんでいるとローレンツが入ってきてすぐに俺のA級冒険者の昇格を祝う集会が開催された。
2032年3月16日14時
俺は今教室でバロンとミネルバの2人と一緒に鎖術の練習をしている。ちょっと最近伸び悩んでいるというか細かい扱いが上手くいかなくて2人に教えてもらっているのだ。
クラリスたちはどうしたのかって? 【黎明】女子全員で校長室に抗議をしに行っている。なんでそんなことになっているのかというと、先ほどの集会での俺の紹介のされ方に問題があったのだ。
式では【黎明】のメンバー全員が紹介され、俺は最後に紹介された。
まずはアリスから紹介され、次にミーシャ、カレン、エリー、クラリスと続いた。そして俺の番になったのだが、A級冒険者になった軌跡を簡単に説明され、最後に司会の男がこう言ったのだ。
「最後にマルスの実績を紹介させて頂きます。2030年カレン・リオネル、ミーシャ・フェブラントを迎え、2031年にはアリス・キャロルを迎えいれました。本当に羨ましい限りです。そして今年2032年は誰がその座に収まるのか!? 今後の成長が楽しみで仕方ありません!」
この言葉には2通りの考え方があるよな。
1つめは純粋に仲間に迎え入れるという意味だ。今後の成長というのは強くなるという事だ。
しかしほとんどの者たちはそうは捉えない。どう考えても婚約者に迎え入れたと受け取るだろう。そして今後の成長に期待というのはハーレムが発展していくという意味になる。
実際最後の今後の成長が楽しみで仕方ありませんと司会が言った時の女子生徒たちの狂乱ぶりは凄かった。みんなに見てほしかったが、興奮しすぎて倒れ、医務室に運び込まれる子が多数おり、そのせいで式は中断となった。
来賓の貴族たちも大いに喜んでいたようだが、クラリスたちは当然青筋を浮かべながらもその場をやり過ごし、式が終わったらすぐにリーガン公爵に抗議しに行ったのだ。
俺も一緒に行こうと思ったのだが、それはクラリスに止められた。俺がいると話せないような内容がどうやらあるのかもしれない。
「マルス君は鎖を扱うときどういう思いで動かしているの?」
先ほどの俺の悩みに、ミネルバが鎖をバロンに絡ませながら聞いてくる。
「どういう思い? 右に行けとか絡めとか巻き付けとかかな?」
思ったままの事を答えると
「聞き方が悪かったね……じゃあ私が何を考えて操っているのか言うね。私は鎖を自分の3本目の手だと思って動かしているの」
「3本目の手?」
思わず聞き返すと、優しい表情でミネルバが
「そう、この鎖は私の手なの。こう思うようになったのは最近なんだけどね。マルス君は自分の手で好きな人を触りたいと思わない? 私はこの鎖からバロンの温もりを感じているの……鎖術の訓練にもなって好きな人にも触れることができる……やっぱり変かな?」
ミネルバは鎖をバロンの全身に巻き付け、締め付ける強弱を調節しながら語りかけてくる。締め付けるたびにバロンが愉悦な表情を浮かべる。バロンのリアクションを見るからただのプレイとしか見えないが、確かにミネルバの言うことは理解できるな。
さすがにクラリスたちの肌に傷がついたり、跡が残ったりしたら嫌だから実際には縛らないが、優しく縛る……いや触れるイメージで扱えばもっと早く上達ができるかもしれない。
クラリスの手に優しく触れるイメージで鎖を扱っていると、教室のドアが開いた。当然クラリスたちだと思って視線を向けると、意外な人物がそこに立っていた。