軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第343話 青天霹靂

2032年3月15日13時過ぎ

「結局ヨーゼフはあのままかぁ……でもヨーゼフを助けられただけでも良かったよね? あのままだったら絶対にヨーゼフは死んでいたわけだし。それにエリリンと遊んでいる時のヨーゼフはとても嬉しそうだったし」

結局ミーシャの言うようにヨーゼフの記憶は戻らなかった。俺とクラリス、そしてアリスの3人で神聖魔法を唱えてもだ。エリーは相変わらず幼い男の子に人気があった。カインに教皇の息子のセラフにヨーゼフ、そしてカインにカインだ。

それにしてもヨーゼフが呟いたアーリンという言葉……まさかキラーアントのアーリンじゃないよな? 人造魔石もアーリンの体内から発見されたのが気になるところだ。

子供返りしたヨーゼフと少し遊んだ後、リーガン公爵の屋敷でご飯をご馳走になり、今は応接間のようなところでゆっくりしている。リーガン公爵にも聞きたいことがあるしね。

「まぁ仕方ないさ。ミーシャの言うとおり助けられただけマシと言うことにしよう。リーガン公爵。今度は僕から聞きたいことがあるのですがよろしいでしょうか?」

今度はと言った訳は、食事中にリーガン公爵に遠征中の事を聞かれたのだ。特にアイクと眼鏡っ子先輩の事を細かく聞かれたのだが、そこはオブラートに包んでおいた。

あとスザクとビャッコ、レッカの3人はすでにリーガンに来ており、もう3人ともそれぞれ帰るべき場所に帰ったという。

まぁ俺たちがメサリウス伯爵領に行くのに相当時間が掛かったから、当然と言えば当然だが、スザクは何度もリーガン公爵に最高の人材をありがとうと頭を下げたらしい。

「私に答えられるものであれば、なんでも答えましょう」

リーガン公爵が優雅に食後の紅茶を口に運び、喉を潤わせてから答える。

ただ本当に聞きたいことは今聞くことが出来ない。俺が聞きたいことは【天災】という能力を知っているか? 前にリーガン公爵に渡したヨーゼフの体内から取り出した人造魔石の事を知っているか? そしてラースという人物を知っているか? という事だ。

ただエリーの前では聞けない事ばかりなのでこの件については聞かなかった。【剣神】の事すらだ。今すぐ聞かないといけないかと言われればそうでもない。だから俺は当たり障りない事から聞くことにした。

「久しぶりにリーガンの街に戻ってきて、随分と人が増えて驚きました。僕がここに入学した時から大陸1の人口だったと思いますが、あの頃よりも多い気がします。獣人もちらほらと見えたので、何があったのか教えて頂けませんか?」

俺の質問にリーガン公爵が嬉しそうに答える。

「ええ。確かに人口は増えました。数日間しか滞在しない商人や冒険者ではなく、定住者がです。獣人が増えたことも人口が増えた要因の1つですが、それだけではここまで増えません。どうして増えたか心当たりありませんか?」

心当たり? そんなのものないから聞いているのだが……

しかしクラリスは気づいたようでリーガン公爵に

「もしかしたらマルスですか!? マルスがA級冒険者になったからそれを目当てに……だからさっき街でマルスの事をやたらと見ていた女性が多かったのですか!?」

興奮したのか席を立ちながらリーガン公爵に問うと、エリーも

「……ずっとマルスを見てた……マルス様って言ってた!……」

クラリスと同様に興奮しながら立ち上がる。やっぱり自惚れではなかったようだ。エリーの言葉にカレンとミーシャの表情も変わる。

そしてそれを聞いていたコディがつまらなそうに「チェッ」と少し不貞腐れている。コディは本気で自分に気があると思っていたからな。

「え、ええ……もしも街で女性と会ってそのような事を言っていたのであればそうかもしれません。わざわざリーガンの冒険者ギルドの職員になりにきたり、あなた達がよく行くお店に働きに来たりなど様々ですが、中には今年の受験に備えて他の学校を辞めてまで受験しに来る者や、この学校の卒業生も再受験をしようする者までおります。彼女たちを護衛したり、身の回りの世話をする者も一緒にこちらに移り住んでいるので、それも人口が増えた要因の1つです」

リーガン公爵がクラリスとエリーの剣幕に少し押されているが、弁解するように言葉を続けた。

「増えているのは女性だけではありません。将来冒険者を本気で目指している者も使用人と一緒に来年の受験の為にすでに移り住んでおります。ほとんどが8歳や9歳の男子で当然貴族の子供です。皆第2のマルスになりたいと願ってここまで来ているのですよ」

異性から好かれるのも嬉しいが、同性から好かれるのもいいよな。もちろん変な意味ではないよ?

「先輩方……とても言いにくいのですがマルス先輩であれば仕方ないです……私もその人達と同じ立場でしたし……」

ばつが悪そうにアリスが言うと

「ご、ごめんなさい。アリス……そんなつもりで言ったわけではないのだけれども……」

クラリスがアリスに謝るとエリーもアリスに対して謝りこの場が収まった。ホッとしたリーガン公爵が

「去年の受験生も過去最高、今年の受験生も去年を遥かに上回る数が期待できます。これもあなた方のおかげです。そこでマルスが史上最年少でA級冒険者になったという事で今度生徒の前であなた方の紹介をさせてください」

そこまで言うと思い出したかのように

「そうそう! マルス、あなたはA級冒険者93位となりました。去年なった8人で最上位です! そしてこれがA級冒険者のカードです!」

アダマンタイト製の冒険者カードをリーガン公爵から受け取ると

「あのー……僕は順位決定戦みたいなものに参加しなかったのですが、昇格した8人の中で1位になってしまってよろしいのでしょうか?」

「ええ、結局参加した者の中で決定戦を行ったのですが、参加人数自体も少なく、しかも全てゲンブが圧倒的に倒してしまったので、そのゲンブに形式上でも勝ったマルスが上となるので8人の中で序列1位がマルス、2位がゲンブとなりました。そのためA級冒険者94位はゲンブです」

そういうことか。ゲンブが頑張ってくれたから俺の価値が上がったという訳だな。ゲンブは普通に水魔法を包み隠さず使っていたから結局順位決定戦には出たのか。

「今年の1年はSクラスが創設されているのですか?」

別の質問をすると

「いいえ。残念ながらSクラスは創設されておりません。そもそも2年連続Sクラスが創設されたことが稀なのです」

まぁそうだよな。だが来年はどうなるのだろうか? リーナがここに入ってくるのであればSクラスになってくれた方が色々と都合がいいのだが……

「マルス、もうそろそろ14時になるわ。他の生徒たちの休憩時間が終わるから私たちもそろそろ戻りましょう」

クラリスが時計を見ながら言うと、最後にもう1つ質問をした。

「そういえば【黎明】部屋の前にプレゼントが置かれておりましたが、あれは何ですか? 僕は自分の部屋にまだ戻っていないのですが、僕の部屋の前にもあったとバロンから聞きましたが?」

俺の質問にリーガン公爵が困ったような顔をして

「え、ええ……あれですか。あれは大陸中からあなた達に贈られたプレゼントだそうです。私が報告を受けた時にはかなりの量になっており、送り返すのも手間がかかるのでそのまま部屋の前に置かせておきました。

女性たちに贈られたものに関しては危険なものがないか一応チェックはしておりますし、一番多かったのが生花でしたが、生花に関しましては枯れてしまうので学校側ですでに回収しております。他の物に関しては部屋の前においてあるので、気に入らなければ捨ててしまえばいいでしょう」

リーガン公爵の言葉にバロンが

「羨ましい限りだな。きっとマルスもあのプレゼントの量を見たらテンションが上がるぞ!? だがあれを1人で見るのもかなり苦労すると思うぞ!? 俺が一緒に見るのもおかしいし、せめてアイク様が居れば……それとも明日マルスだけ休ませてもらうか?」

「そこまでの量ですか……正直私は男子寮には入っていないのでどのくらいの量か分からないのですが……なるべくマルスには早く学校生活に戻ってきて欲しいのが正直なところでして……では仕方ありません。今日だけですが……」

リーガン公爵の提案に驚いたが、俺は喜んでその提案を受けた。

2032年3月15日18時

「ようやく片付いたわね……元々マルスの部屋が片付いていたから良かったのものの、汚い部屋だったらまだまだ終わっていなかったわね」

クラリスが一息ついてベッドに座っている俺の隣に座る。

リーガン公爵は1日も早く俺に学校生活に戻って欲しいとの事から今日だけクラリスを俺の部屋、つまり男子寮に入る事を許可したのだ。

なぜクラリスだけかって? エリーとミーシャは散らかす専門、カレンも当然苦手、アリスだけはしっかりと家事が出来るが、アリスまでこっちに来てしまうと【黎明】部屋の明日が怖い。ミネルバ1人では無理だろうからな。

尤もエリー、カレン、ミーシャは入学当初よりはマシになったらしい。カレンに至ってはフレスバルド公爵家ではメイドの仕事を奪う行為になるので、屋敷では絶対に家事をやってはならないそうだから仕方ないよな。まぁこういうのはフレスバルド家だけではないのだが。

「助かったよクラリス。俺1人ではどうしようもない物もあったから来てくれて良かった」

クラリスに感謝の気持ちを伝えると

「本当よ。剣や槍などの武器や応援の手紙は私が見ても嬉しいんだけれども……ギリギリ恋文もいいとしても流石に女性用の下着を送り付けるのはおかしいわよ」

クラリスが可愛く頬を膨らませながら言う。そうなのだ。剣などの武器が貴族たちから送られてきていたのだが、手紙や中には下着も贈られてきていた。

手紙類は恋文の他にも、うちの娘はどうですか? といったような手紙もあれば、俺の事を目標にしますといったような手紙、先ほどリーガン公爵が言っていたように、来年絶対にこの学校に入るからその時はお願いしますといったような男性からの手紙もあった。

まぁ男性から一番多かったのはリア充爆ぜろ系なのだが、それは仕方ない。下着類は病気とか移ったら困るとの事ですぐに燃やした。

「19時までまだ時間があるから手伝ってくれたお礼をしたいんだけど?」

今日は19時からリーガンの街に出て遠征お疲れさまでした会をすることになっているのだ。俺の言葉にクラリスが

「うーん、じゃあこのままマルスと2人で話をしたいかな。マルスと2人っきりになるのは難しいから……いつ以来かしら?」

確かになかなか2人っきりというのはないよな。記憶をさかのぼると……あ、あの日以来だ。そしてあの時のクラリスの姿を思い出すと急に相棒が目を覚ます。

考えてみればいくら寮とはいえ、俺の部屋に女の子と2人っきりだ。しかも2人ともベッドに腰を掛けている。これって普通に考えれば……

そう思うと急に緊張してきた。クラリスの方を見るとクラリスにも伝わったのか、目が合いそうになるとすぐにクラリスが視線を下に落とす。

「ねぇ? 何これ?」

照れているのかクラリスが話題を逸らそうとするが、俺は構わずクラリスの腰に手を回そうとしたが、クラリスの表情が真剣な事に気づき、俺も座っている足元に視線を落とすと、ベッドの下から光が漏れていた。

「さぁ? 何だろう?」

ベッドの下に何か置いたりしていたっけな? 筋トレ用品があったくらいだと思うけど……

「男子のベッドの下といえば……もしかして……」

クラリスが俺の顔を覗き込むように見てくる。だからそれは可愛いから反則だって。クラリスはそう言うとベッドから降り、四つん這いになりベッドの下を覗き込む。

俺もベッドから降りてクラリスと一緒にベッドの下を覗き込むと、ある物が光っていた。ベッドの下を覗く際、違う所は覗いていないから安心してくれよな。

それをベッドの下から取り出してクラリスと顔を見合わせると、突然クラリスが意識を失い、座った体勢から倒れそうになったので、とっさに左腕でクラリスの後頭部を守りながら床に倒れこむ。

左腕で後頭部を守る際、クラリス! と叫んだつもりだったが、なぜか声が出なかった。

どうして? と思うよりも先に、クラリスに外傷がない事を確認し、意識を失っているクラリスの右手首の脈を左手で確認すると、しっかりと脈はあったので、それに安心してしまったのか急に意識が遠のく。

何度声を出そうとしても、声が出ず、なんとか左手でクラリスの右手を握ると、先ほどから離そうとしても離れない右手に持っていた 剣(・) から眩い光が溢れ、その光が俺たちを包み込んだ。