軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第298話 暗雲

2032年1月17日10時

今日は3パーティに分けての連携訓練を行う。

3パーティというのはリムルガルド城に潜るスザク班とリルムガルド城下町に残る2パーティなのだが、スザクたちは思い切った案を出してきた。

「リムルガルド城下町に残る班を発表する!

まずはカレン班!

カレン、ミーシャ、バロン、ミネルバ、ブラッド、コディ!

次にサーシャ班!

サーシャ、エーディン、ライナー、ブラム、アリス、そしてクロム!」

カレンの方は予想通りだったが、もう1つのパーティになんとクロムが入ったのだ。

それにいつもであれば、俺はライナーをリーダーにするのだが、スザクはサーシャを指名してきた。後衛から全体を見た方がいいとの事だ。うん、確かにそのとおりかもしれない。

「レッカは補助に回る! 基本サーシャ班の補助だが、カレン班の方もしっかりとケアをする! 今日はこの6人での連携を深めてくれ!」

クロムは自分が認められたのがよほど嬉しかったのか、右手でガッツポーズをしていた。

「では俺たちも連携訓練をしよう。基本的にリムルガルド城では2対1を作りながら戦っていこうと思う。とにかく先手必勝だ。そして必ず前衛と後衛で組む。理由は前衛だけで組むとオーガの魔法攻撃の餌食になるからな。必ず後衛が前衛をサポートするように。

それに乱戦になる事が予想されるからとにかく自分のパートナーの位置だけは把握しておいてくれ。絶対に1人で孤立するような事態は避けるようにな」

スザクが俺たちに向かって語り掛けてくる。

「俺とビャッコ、マルスとアイク、クラリスとエリーで組むことにしようと思うが異論はあるか?」

スザクの問いに

「スザク様、僕とクラリスの合体魔法というのを見てもらってもよろしいでしょうか?」

スザクが頷くとクラリスが恥ずかしそうにラブラブヒールを見せる。

「ふざけているように見えるかもしれませんが、これは僕とクラリスが密着していないと発現しません。もしも戦闘中に抱き合っていても変な誤解はしないで下さい」

これはしっかりと言っておかないといけないからな。

現に最初クラリスが俺の後ろから抱き着いてきた時、スザクとビャッコから何見せつけてくれているんだというような表情をしていたからね。

「2人の神聖魔法使いが揃うとこんな事も出来るのか……範囲回復魔法なんて初めて聞いたな。だがこの魔法はリムルガルド城で絶対に役に立つな」

スザクがそこまで言うと

「スザク様、もう1つ見せたいものがあります。今度は僕とエリーの連携攻撃というか特殊な移動方法なのですが」

俺がそう言うとエリーが自身の影に潜って俺の影から出てくる。

「な、なんだ今のは!? 影に潜るだと?」

「はい、エリーは影に潜って、僕の影から出てくることが出来ます。消費MPはかなり多いですが、僕にはラブエールというMP譲渡魔法がありますので、これでエリーのMP枯渇を防ぐことが出来ます」

これにはスザクとビャッコが考え込んでしまった。

「マルスとアイク、クラリスとエリーで組んでもらおうと思っていたのだが、それだと長所を打ち消してしまうのか……分かった。お前らは乱戦になったらとにかくマルスの下に集まれ。エリーはすぐにマルスの所に行けるかもしれないから、アイクとクラリスは常にマルスを視界に入れているように。マルスとクラリスは合流出来たらとにかくラブラ……範囲回復魔法を唱えることを最優先に。いいな?」

スザクが少し照れながら言うと俺たち4人は笑いを堪えながら頷いた。

2032年1月17日12時

「よし、少し早いが今日はこれくらいにしておこう。もしもまだ訓練をしたいというのであればまだしてもいいが、疲れを残さないようにな」

スザクがみんなにそう言い残し西リムルガルドの街へ戻っていった。

「アイク兄、今からジオルグ殿下の所に報告しに行きませんか?」

「そうだな。今日は伝令も来ていないしな」

実は昨日、俺たちが訓練している時にジオルグからの伝令があり、今日の報告はいらないから明日来いと言われていたのだ。

俺とアイクは少し訓練した後、ジオルグの所へクロムの事を伝えに行こうとすると、クラリスとエリーも絶対に同行すると言い、それにつられてカレン、ミーシャ、アリス、そしてなんと眼鏡っ子先輩も一緒に来ると言い出した。

やはり眼鏡っ子先輩も口には出さないが、アイクの事を心配しているのだろう。

ちなみにブラッドとコディもクラリスと共に一緒に来ようとしていたのだが、ライナーとサーシャに止められて、渋々残る事になった。

訓練していたところからジオルグたちがテントを張っている野営地まではそこまで距離はなく、30分も歩けば着く距離だった。

「みんな、もうここまでにしてくれ。殿下にも俺とアイク兄の2人で来いと言われているしな」

と言い、6人にはテントが張られている野営地から数百メートル離れたところで待機してもらう事にした。女性だけとはいえ、この6人であれば何が起きても対応できるだろう。

野営地に足を踏み入れると、騎士や冒険者が慌てた様子で駆けずり回っている。その者たちの表情からは焦りや不安が読み取れる。

「リムルガルドの方で何かあったのでしょうか?」

「そうだな……あまりいい事は起きていない事は分かる」

アイクと2人で少し不安に駆られながらジオルグがいるであろう一際豪華なテントを目指す。

ジオルグのテントの近くには煌びやかな鎧を装備している者たちが集まっており、俺たちにも会話が少し聞こえてきた。

「何人が戻ってきていない?」

「突っ込んでいったのは我ら 中央貴族派(ジオルグ派) の方か?」

「ミック殿は何故止めなかった?」

「だからジオルグ殿下の言ったようにリムルガルド城下町には踏み込んではダメだったのだ」

煌びやかな鎧を着た者たちは俺たちに気づくと途端に口を噤んだ。

うーん……穏やかではないな。

ジオルグのテントの前まで辿り着き、取り巻きの者たちに謁見を求めると、取り巻き達からは非常時だからと拒否をされたが、俺たちが来た事に気づいたのか「通せ」とテントの中からジオルグの声がしたので無事に謁見することができた。

テントの中は意外にも人が少なくジオルグと2人の冒険者らしきものが居ただけだった。

「ジオルグ殿下、報告に上がりました」

俺たちが中に入るとジオルグに何を言われる事もなく、2人の冒険者らしき人物がテントの外に出た。

「申せ」

ジオルグの言葉に頷き、俺が報告をする。

「クロム殿下にクラン【暁】傘下の【創成】というパーティに入って頂きました。パーティリーダーはリスター連合国ラインハルト伯爵家嫡男で北の勇者と呼ばれるバロン・ラインハルトです。よろしかったでしょうか?」

「北の勇者か。知っているさ。マルスたちが現れるまでは、東の大魔道と呼ばれる魔族と1位2位を争う者だからな」

コディってそんなに有名だったのか!? 今じゃただのクラリスの追っかけに成り下がったが。まぁそれを言うと北の勇者様も今じゃ……

もしかしたら俺とクラリスのせいで2人の優秀な者の人生をかなり狂わしているのかもしれない。バロンも俺とクラリスさえいなければ今頃カレンと続いており、あんなキャラじゃなかった可能性がある。

「ではよろしいでしょうか?」

「うむ。よろしく頼む。まぁクロムが在籍出来るのは15歳までだ。さすがに成人になって王族がクランやパーティに 参(・) 加(・) しているようでは困るからな。もしもやるのであれば自分のクランやパーティを作らせる。これはクロムにだけ言えることではなく、セレアンス公爵家嫡男のブラッドにも言える事だろう。俺とスザクとブラッドは立場が一緒になるからな」

まぁそうだよな。ブラッドとクロムは15歳になる前に必ず抜けるだろう。そしてバロンとミネルバも抜けるだろうな。

俺がメンバーの事を考えているとテントの外からジオルグに謁見を求める声がした。

「ジオルグ殿下! リムルガルド城下町の件で報告に上がりました! よろしいでしょうか!?」

「うむ。入れ」

なんとジオルグは俺たちがいるにもかかわらずテントの中に招き入れた。

中に入ってきたのはこれまた煌びやかな鎧を着た者で、身長はアイクよりも少し低く175cmくらいだろうか? 彫りの深い顔立ちをしており、見る人が見ればイケメンと思うかもしれない。

イケメンも俺たちがいることを予想しておらず、報告していいのか迷っていると、ジオルグから催促されたので仕方なくという形で報告を始めた。

「リムルガルド城下町に突入した者たちが戻ってこなくなってからもう12時間以上経過しており、それまでは比較的穏やかだったリムルガルド城下町付近も魔物の数が増えてきております! ミック殿が言うには、最悪の事態を想定すると 迷宮飽和(ラビリンス) の可能性があるとの事です!」

この言葉に思わず俺とアイクは顔を見合わせた。