軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第265話 5人の婚約者

「初めまして。アリス・キャロルと申します……」

ガチガチに緊張した様子でアリスがジークに挨拶すると、

「あれ? 君は確か今年の新入生闘技大会に出ていたよな?」

ジークはアリスの事を覚えていた。

「はい、副将で出させて頂きました」

「あの時は貴賓室からしか見なかったが、近くで見るととても1年生とは思えんな……」

この言葉にクラリスが

「お義父様。アリスは神聖魔法使いで私たち【黎明】の最後のメンバーです」

「なんと!? やはり神聖魔法使いか!? という事は【黎明】の神聖魔法使いは……なんとも贅沢な。クラリス? ここでアリスを神聖魔法使いと言ったという事はもうお前たちの事も?」

ジークの言葉にクラリスは返事に困り、俺の方を見る。

「はい。ここに居るメンバーには全て話しておりますし、話す予定ですので大丈夫です。僕はこの前A級冒険者になりましたので。世間には【黎明】の神聖魔法使いはアリスだけという事にしておくつもりですが」

「っ!?」

ジークとマリアが俺の言葉に驚く。

「A級冒険者? 本当か?」

「はい。ここにいるみんなに応援してもらい、先日A級冒険者になる事が出来ました」

「そうか! 後で祝わないとな! 話を戻すがアリスは戦闘に参加するのか?」

「はい、前衛として参加しております」

「となると【黎明】には3人の神聖魔法使いがいて、全員戦闘に参加するというとんでもないパーティになっている訳か……」

ジークの言葉にアリスが答えると、マリアの顔が少し険しくなり

「アリスさん。変な事を聞くようだけれども……もしかしてマルスの事を?」

「はい! 去年のリスター祭でマルス先輩を見てからずっと好き……愛しております!」

アリスの言葉にマリアが困ったような顔をして俺の方を見る。

アリスの事を認めてもらおうと俺が話そうとすると

「お義父様、お義母様。アリスはとても誠実でいい子です。私も1年間一緒に居りました。アリスのマルスを想う気持ちは本物です。どうかマルスの 5(・) 人(・) 目(・) の婚約者として認めて頂けませんでしょうか?」

クラリスの言葉に思わずジークとマリアが顔を見合わせる。

「クラリスはいいのか? どんどんマルスの婚約者が増えてしまって。俺たちはクラリスとエリーを昔から見てきて実の娘のように思っている。その2人の悲しむ顔は見たくはないのだ」

「変な女性であれば、私も反対します。ですがアリスは違います。マルスの為だけでなく、私たちの為にもアリスを……いえ、カレンとミーシャも含めて3人の事を考えて頂ければと思います」

クラリスが深々と頭を下げるとクラリスに倣いカレン、ミーシャ、そしてアリスも慌てて頭を下げる。

「……分かった。こんな息子だがマルスをよろしく頼む」

ジークの言葉に3人の顔が一斉に明るくなる……ことは無かった。カレンとミーシャは目を充血させて必死に涙をこらえている。アリスだけは緊張がほぐれたこともあって大号泣だ。

ミーシャの顔を見てサーシャの顔にも涙が溜まる。

「これでは先が思いやられるわ。来年また1人増えているかもしれないわね。5人ともマルスをお願いします。みんな、変な女が近づいてきたら絶対に何とかしてね。まぁ5人を見る限りマルスの女の子を見る目はとてもいいようだけど」

マリアが呆れながら5人に俺の事をお願いすると5人とも声を揃えて「はい」と返事をした。

「勝てないわね。クラリスには」

眼鏡っ子先輩がボソッと言うとアイクも小声で

「クラリスと競う必要はないさ。それにエーデにはクラリスにない物があるからな。それでいいじゃないか」

眼鏡っ子先輩の肩に手をまわしながら言った。

「さて、どうする? もう昼過ぎたが飯にするか? それとも風呂にするか?」

ジークが俺とアイクに向かって聞いてきたので

「先にお風呂に入りたいです。さっぱりしてからゆっくりと過ごしたいので」

俺の答えにジークが頷き

「お前たちの部屋は用意してあるからセボンに案内してもらいなさい。俺たちは悪いが先にご飯を食べさせてもらう。風呂から上がったら食堂に来てくれ」

ジークがそう言って手を叩くと先ほどの執事が俺達をそれぞれの部屋に案内してくれた。

俺の部屋は他のみんなの部屋よりも広かった。

詰めれば10人くらい横になれるベッドに大きなソファ、そしてテーブルも置かれていた。

どうしてこんなに広いかというと理由は簡単だ。

この部屋に【黎明】全員が通されたからだ。

もしかしたらジークは元々カレンとミーシャの事を認めるつもりだったのかもしれない。

そうでなければアイクと同じサイズの部屋が用意されるはずだからな。ちなみにアイクと眼鏡っ子先輩は同室で、バロンとミネルバの部屋も同室だ。

そして驚いたことにこの部屋専用の風呂が備え付けられていた。

それもかなり広くみんなで入っても問題ない。すっかり調子を取り戻し、俺と一緒に浴室を見ていたミーシャが上目遣いで小悪魔的な笑みを浮かべて、

「マルス、もしかしてみんなで入ろうと思っているんじゃない?」

と俺の体にぴったりくっつきながら話しかけてくる。

なっ!? ミーシャも俺の心が読めるようになったのか?

「当たり前じゃない。今のマルスの顔は誰がどう見てもみんなで入りたいって顔よ。そんなの 今(・) は(・) ダメだからね」

大奥総取締役にそう言われてしまっては仕方ない。

カレン、ミーシャ、アリスの3人は先ほどのジークとの一件でもう一生クラリスに頭が上がらないだろうし、最近のエリーはクラリスの言う事には絶対順守だからな。

屋敷の風呂の場所をセボンに聞き、案内してもらうと、どうやら他の部屋には風呂が備え付けられていないらしく、男湯に男性陣がみんな集まっていた。

男湯という事は女湯もあるわけでそっちには眼鏡っ子先輩とサーシャ、ミネルバがすでに入っているらしい。

メイドが浴室の前で見張っていた。

浴室に入ると2人が足を伸ばせるくらいの大きな浴槽が4つ並べられていたのでみんなで裸の付き合いをする。

アイクは1人で浴槽を使い、俺とバロンで1つ。ライナーとブラムで1つ。そしてブラッドとコディで1つだ。

「マルス、クラリスたちはどうした? 女湯の方に行ってないみたいだけど?」

ブラッドの質問に答えるかどうか迷ったが

「俺の部屋には専用の大きな浴室が併設されていてな。クラリスたちはみんなでそこに入っているよ」

俺の言葉にここにいる全員が驚いた。

「みんなで一緒に入っているのか?」

「多分。俺も見てないからなんとも言えないが」

「後で残り湯をもらいに……湯加減を見にいってもいいか?」

コディよ、もうそこまで言ったら取り繕うことは不可能だろう。

「間違いなく 百獄刑(ロンド) が執行されると思うがいいのか?」

百獄刑(ロンド) の言葉を聞いたコディは身も心も相棒も縮こまってしまった。

「なぁもう1つ聞かせてくれ。ジーク様が【黎明】の神聖魔法使いが3人って言っていたけどクラリスとアリスだけだよな? 単純に間違えただけか? もしかしたらエリーも神聖魔法使いってことはないよな?」

恐らくコディはエリーの発育がいいのと魔法が得意じゃないことから、エリーが神聖魔法使いかもしれないと思っているのだろう。

「いや、コディ。もう1人の神聖魔法使いは俺だ」

リムルガルドに行くメンバーには全員知っていて欲しいからな。コディの生存率が上がるという事は他のメンバーの生存率が上がるという事だ。

これで神聖魔法の事を知らないのはレッカだけか? ビャッコもクラリスが神聖魔法使いというのはエキシビジョンマッチで知っているとは思うが、俺の事は知らないかもしれない。今度リムルガルドに行くメンバー全員が集まったら周知をしておこう。

「嘘だろ!? その顔で剣聖、魔法使い、それに神聖魔法使い……そしてあのレベルのハーレムの主でクラリスの婚約者だと!? いくらなんでも恵まれ過ぎだろう! 返せ!」

何をコディに返すんだ? コディが興奮して湯船から立ち上がるとブラッドの顔の前には、コディの子ディが露わになる。

「コディ! てめぇ急に立ち上がんな! そんな粗末な物を俺の顔の前に出すな!」

クラリス親衛隊が同じ浴槽の中でじゃれあっているのを見ていると

「マルス、後でこの街を散策してもいいか? できれば夜も外に出てみたいのだが……」

「分かりました、ライナー先生。お父様に言っておきます」

今年の初めにジークが言っていたけど綺麗どころが集まってきていると言っていたしな。

ライナーも外で遊びたいのだろう。

「俺も後でミネルバと一緒にアルメリアの街を見て回りたいからいいか?」

「分かった。治安はいい方だとは思うが気を付けてくれよな」

みんなアルメリアの街に早く出たいのかもしれないな。かくいう俺も出たいのだが。

風呂場でかなり盛り上がってしまったので部屋に戻る時には、長湯のクラリスまでも風呂から上がっていた。

そしてミーシャだけ何故かテンションが低い。

「どうした? ミーシャ? 元気がないみたいだが何かあったか?」

「なんか……みんな凄かったの……エリリンが凄いのは分かっていたんだけど……

やっぱりクラリスはクラリスである意味別格だった……カレンももう育たなくてもいいくらい大きかったし、何よりアリスが私より立派だったのが……神聖魔法使いだから発育がいいのは分かるんだけど……」

みんなと比べて心が折れかかっているのか。

「ミーシャ、さっきも言ったけどまだ11歳よ? 4年後にはきっと立派になっているわ。それに今マルスに見せる訳じゃないんだから、ね?」

「……ミーシャ……寝れば育つ……」

「マルスが大きいのが好きとは限らないじゃない? 顔は一級品なんだからそんなに落ち込まなくても平気よ」

「ミーシャ先輩! あとでマッサージします! 神聖魔法でマッサージすればもしかしたら!?」

どうやらミーシャはアリスの提案が嬉しかったらしく、目を輝かせて

「そうね! 神聖魔法でマッサージしながら揉んでもらえば大きくなるかもしれないわね! アリス! これからよろしくね!」

ようやくいつものテンションに戻るとみんながホッとした顔になった。