軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第197話 新たな仲間

「まさか、これほどとは……」

スザクが俺の剣捌きを見て驚いているが、俺もスザクの魔法に驚いていた。

これは数十分前の話。

訓練場に着いた俺たちは人払いをしてから2人で軽く模擬戦をすることにした。まずは距離を取り遠距離戦で戦う……というかまずは俺がスザクの魔法を受けることになった。

スザクのミリオンダガーとファイアバードの連携は強力だった。

ファイアバードを5体ほど周囲に発現させると、腰にぶら下げていた刀身のない柄だけの短剣、ミリオンダガーを手に持った。

ミリオンダガーに火魔法をエンチャントすると真紅の刀身が発現し、スザクはその刀身だけを 魔法の弓矢(マジックアロー) のように発射した。

周囲に待機をしているファイアバードの1体に着弾すると勢いよくファイアバードがこちらに向かって襲い掛かってきた。

ファイアバードの威力はファイア以上とカレンから聞いていたため、ウィンドインパルスで相殺しようとするが、1発では相殺できなく、もう1発放ちファイアバード は(・) 相殺することができた。

しかしファイアバードの中にあったミリオンダガーの刀身だけは全く減衰することなく俺の方に向かって飛んできた。

素早く雷鳴剣を抜き、ミリオンダガーの刀身を弾くと、ミリオンダガーの刀身は地面に突き刺さり、やがて消えていった。

スザクは少し驚いた表情をし、

「かすり傷くらいのダメージを与えられると思ったのだが、さすがレッカが言うだけのことはある。実戦ではファイアバードを5体くらい飛ばして、その中にフレアボムを紛れ込ませて戦うことが多い。次はマルスの剣の腕を見せてくれ」

スザクの方が魔力が高いから、ある程度の火力は予想していたがこれほどまでの威力だとは思わなかった。

スザクがそう言ったので俺は雷鳴剣だけでスザクに襲い掛かる。筋力値、敏捷値が圧倒的に俺の方がスザクよりも高く、剣術レベル9の俺に対して、スザクは短剣術のレベルが8。全ての要素で優っている俺が簡単にスザクを追い詰めることができた。そして先ほどのセリフをスザクが言ったのだ。

「まさか、これほどとは……11歳の膂力、速さではないな。剣捌きも凄い。俺は接近戦でもフレスバルド騎士団の中では5本の指に入るのだが全く相手にならんとはな……剣聖と呼ばれるだけのことはある」

「お褒めの言葉を頂きありがとうございます。ですが僕も初めて魔法戦で負けた気がします。あのままファイアバードを連射されていたら間違いなく負けておりました」

雷魔法を使わなければ本当に勝てなかったと思う。

「よし。これで俺の方はスッキリした。マルスが臨時パーティに参加してくれるおかげで俺の悩みは大分解消された。まさかマルスのような戦闘に参加できる神聖魔法使いがいるとは思わなかった。しかもA級冒険者レベルの強さだ。本当はマルスをフレスバルド騎士団にスカウトしたいのだがセレアンス公爵家との関係もあるからな。それと先ほどのマルスの話だが、もちろん残りの2人はマルスの言う通り暫く選考を見送ることにする」

スザクがスッキリとした表情で俺に言った。

よし、これでクラリスとエリーを連れていける可能性が高くなったな。最初は2人を危険に晒したくないという気持ちが強かったのだが、2人の必死な姿を見ていると、次第に一緒に連れて行かないといけないと思うようになってきている。

それに戦力的にも申し分ないと思うし、やはり好きな女の子とは一緒に居たいという気持ちもある。

「ありがとうございます。スザク様。それでは僕はこれで失礼いたします。あと、ここに来る途中でリスター帝国学校の先輩を見かけたので、少しお話をさせて頂いてから戻ってもよろしいでしょうか?あまり長話は致しませんので……」

俺がそう言うとスザクはあっさりと認めてくれた。訓練所から出ると先ほどの人物を探し、広い建物の中をウロウロしていると俺が探していた相手が俺の事を見つけてくれて声をかけてくれた。

「マルス! 久しぶりだな! お前の事は噂で色々聞いているぞ!」

「ディバル先輩、お久しぶりです! ディバル先輩はフレスバルド騎士団に入団したのですね」

先ほど見かけた人物と言うのは城塞都市イザークで出会い、去年の武神祭の決勝でアイクに負けたディバルだ。

「ああ。まさか魔法が不得手な俺がフレスバルド騎士団の幹部候補として入団できるとは思わなかったよ」

「幹部候補とかあるんですね。知らなかったです」

「リスター帝国学校から各騎士団にはかなり人が流れるが、フレスバルド騎士団はその中でも1番人気で、幹部候補といえば、各騎士団の団長、副団長になれる可能性を秘めているんだ。魔法が不得意な者がフレスバルド騎士団の幹部候補として迎え入れられるのは異例の事なんだ。今年1年はここで訓練して来年からは死の森に配属される予定だ」

「冒険者になるよりも騎士団の方が1番人気なのですか?」

疑問に思ったことを聞くと

「Aクラスで冒険者になる奴なんてよっぽどの物好きだよ。1発当てれば冒険者の方が給金は高いかもしれないが、危険度や将来の事を考えるとみんな騎士団に入るだろう。Aクラスだと夏の遠征クエストで貴族との顔つなぎが他のクラスよりも有利だから、こうやって騎士団の幹部候補として迎え入れてもらえる可能性が高いんだ。リスター連合国の騎士団の団長、副団長の50%くらいはリスター帝国学校出身者と思ってもいいくらいだ」

沢山学校があるなかでやはりリスター帝国学校はずば抜けているのか。全く騎士団に入ろうとかいう気が無かったから全然知らなかった。

「ではSクラスの人たちも騎士団に入る方が多いですか?」

疑問に思ったことを聞くと

「Sクラスはまた別格だからな。自分の腕に自信がある奴が多いから騎士団よりも冒険者になる者の方が多いのではないか? だがSクラスの生徒にも二通りいるからな。

グレンやマルスみたいに本当にずば抜けている奴とSクラスにするための人数合わせのような者がな。今の5年生も本当に実力のある者は3人だけだと思っている。

その3人がSクラスだから他の者もSクラスになった感が否めない。ちなみにその3人と言うのは、マルスも知っていると思うがグレンとエーディンとガルだ。

この3人は騎士団向きではないと思っている。逆に他の奴らは騎士団も選択肢に入っているのではないか?」

人数合わせって……あ、残念殿下は間違いなく人数合わせかもしれない。それとケビンも才能的にはSクラスではないよな。

クロムとアリス、そしてソフィアの3人だけがSクラスレベルだったがソフィアが抜けてしまったから、ブラッドの転入はリスター帝国学校としてもSクラス維持という点でもかなりありがたかったのかもしれないな。

ブラッドが転入してこなくてもSクラスは維持されていたかもしれないが。その後、少し談笑してから俺はフレスバルド公爵の屋敷に向かった。

フレスバルド公爵の門を抜けるとちょうどみんなが屋敷から出てきた。

「マルス、ごめんなさい。もう食べ終わっちゃったから出てきちゃったわ」

カレンが申し訳なさそうに俺に謝った。

「謝る事ないよ。ちょうどディバル先輩と会ったから話をしていたんだ」

カレンが少しホッとしたような顔をして

「お父様がセレアンス公爵領に行くことを決定したわ。私たちが食事中に執事が教えてくれたの。お父様は予定のほとんどをキャンセルしてセレアンス公爵と会談する事を優先したわ。口では色々と言っていたけれどもそれほどまで獣人たちとの友好を望んでいたという事ね」

フレスバルド公爵はすごい決断力だな。こんなに早く決定するなんて。

「という事は、俺達へのクエストはもう終わりか?」

「そうね。私たちができる事はここまでじゃないかしら。ブラッド、もう私たちがする事は無いわよね?」

カレンが俺の質問に答えてからブラッドに聞くとブラッドは

「いや、まだだろ? お前ら普通に考えて一番大事なことを忘れていないか?」

「何も忘れていないと思うが?」

俺は敢えてブラッドの質問に惚けてみせた。

ブラッドが何を言いたいのかみんな分かっているがみんなも俺に合わせて惚けた。

ブラッドは自分から言い出せないのかチラチラと俺を見てくる。まぁいじわるはこの辺りでやめておこう。

「ブラッド、【暁】に入らないか?」

俺がこのセリフを言うとブラッドの表情がぱっと明るくなり

「うーん、どうしようかな……どうしてもって言うなら入ってやってもいいが」

とニヤニヤしながら言うと

「え? ブラは入らないの? じゃあしょうがないね。マルス、ブラは帰るらしいよ?」

ミーシャがブラッドを煽るとクラリスもそれに乗っかった。

「ブラッドって言うとなんか怖いイメージだからミーシャの言ったようにブラの方がいいわね。じゃあブラまた学校で会いましょう」

「ブラ、私が死の森から戻ったら序列戦お願いしますね」

アリスもブラッドを揶揄うように言うと

「……ブラ……ブラ……ブラ……」

エリーはただブラと連呼しているだけだった。

「ブラ、残念だったよ。【創成】で一緒にやれると思ったのに」

バロンが全く残念そうではない表情で言うとミネルバも

「じゃあね、ブラ。ここまで楽しかったよ」

微笑みながらブラッドに言った。

「お、おい! どうしてもって言うなら入ってやってもいいって言っているだろ!」

ブラッドが慌てて言うと、

「ブラ? フレスバルド公爵家とセレアンス公爵家は対等よね? そんな態度ならば、別に入らなくてもいいわよ?」

カレンの言葉にさらにブラッドが慌て、

「わ、分かった。俺が悪かった。【暁】に入れてくれ」

頭を下げながら言ったので

「ブラ! ようこそ【暁】へ!これからもよろしくな!」

俺がブラッドの手を取り握手をすると他のみんなもよくブラッドがやるように頭や背中を叩いて歓迎した。

「やめろ」「やめろ」と言いながらみんなの手を振り払っているブラは、喜びを顔にみなぎらせていた。