軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第176話 3人の吸血鬼

エルハガンを北東に進んでいくとゴブリン達がエルハガンに向けて列を成して移動していた。

ただ昨日よりは明らかに少ない気がする……これならば俺たちがゴブリンを倒さなくてもエルハガンの冒険者達でも十分に対応が出来るな。

俺たちは敢えてゴブリン達を1匹も倒さず隠れながらひたすら北東に進む。

もしも俺が考えているようにこの先にヴァンパイアがいるのであれば、ゴブリンを倒してしまうと、燃やす時にヴァンパイアに見つかってしまう可能性があるためだ。

昼くらいまで北東に進んでいるとやはり予想通りの物が見えた。

500m先くらいに、以前見たものと同じような壁が宙に浮いている。だが思っていた大きさよりも何倍も大きい。

ウピアルが作っていた壁より大きいので、こんなに遠くからでもハッキリわかった。サーチを使うと相手にバレるかもしれないのでここはエリー頼みだ。

「3人……気配……多分ヴァンパイア……」

なんと……ヴァンパイアが3人もいるのか……もう少し近づくと2人のヴァンパイアが確認できた。

もう1人はここからでは見えないところに居るのだろう。俺はみんなに小声で

「もしかしたら、ヴァンパイアが蝙蝠に変身するかもしれない。その時を見計らって攻撃しようと思う」

俺の意見にみんなが同意し、この場に留まる事にした。せこい考えかもしれないがヴァンパイア相手に正攻法なんて言っていられない。

しばらくヴァンパイアたちの様子を窺っていると何かを話しているようだ。流石にここからでは聞こえない……

「ちっ……さすがにここからでは何を話しているか分からない」

俺が言うと、俺の言葉を聞いたソフィアが

「ウピオルは遅いな……なにやっているんだ……」

意味不明な言葉を呟く。俺が何を言っているんだという顔でソフィアを見るとソフィアはまだ言葉を発し続けた。

「あいつは自由人だから……そのうち帰ってくるだろう」

「違いない。あいつは末っ子気質だからな」

……もしかして今のはヴァンパイアたちの会話か?

「ソフィア。もしかして今のはヴァンパイアたちの会話か?」

ソフィアに聞くと

「ええ。そうよ。あれくらいの音量だったら聞こえるわ」

す、すごい……俺なんて少しも聞こえないが……アリスを除いた全員がソフィアの地獄耳に驚いていた。

「今の会話はそれぞれ別の人物の会話か?」

「ええ。エリーの言う通り3人いるわね。1人は恐らく壁の反対側に居るのかもしれないわ。1人だけ声が聞き取りづらかったから」

蝙蝠になるまで待つと、もう1人戻ってきてしまう可能性があるのか……決断をしなければならないな……

「ソフィア。ありがとう。お手柄だ」

俺はソフィアにお礼を言うと、ソフィアはまんざらでもない様子で頷く。その様子を見てから、俺はみんなに

「蝙蝠になるのを待とうと思ったが、もう1人来られるとかなりきつい。これから奇襲攻撃をする。大きな魔法を放つときは慎重にな。特にカレンの火魔法と俺の雷魔法は光と音が凄いからな。もう1人が気づいて戻ってきてしまう可能性がある。ヴァンパイアたちと戦うのは俺と、クラリスとエリーの3人で」

クラリスとエリーが覚悟を決めたような表情で頷き、俺はさらに続ける。

「他の者たちは俺たちが交戦状態になったら周辺のゴブリン達を倒してくれ。その際、ヴァンパイアたちには気を付けるように。

ミーシャとバロンはゴブリンを積極的に斃すのではなく、ヴァンパイアを警戒しておいてほしい。もう1匹がきたらバロンの土魔法とミーシャの水魔法で防御優先で頼む。

カレン、ドミニク、ミネルバ、アリス、ソフィアはゴブリンをメインに倒してほしい」

残りの者もクラリス、エリーと同様に真剣な表情で俺の言葉に相槌を打つのを確認すると更に

「エリー、 戦乙女軽鎧(ヴァルキリーアーマー) は状態異常耐性UPの効果があるが、慢心はしないでくれ。ヴァンパイアは魔眼を持っている可能性があるからな。

クラリス、 聖女の法衣(セイントローブ) は状態異常無効だ。最初は結界魔法と水魔法で防御中心に戦ってほしい。今鑑定するとバレてしまって奇襲が成功しなくなる可能性があるから鑑定はしないが、多分ヴァンパイアにはホーリーが効果的だと思う。

鑑定したら結果を教えるから、もしもホーリーが有効だったら状況次第で攻撃に転じて欲しい。ホーリーもかなり光を発するから使う時は慎重にな」

みんなは最後まで俺の言葉に黙って頷くだけだったが、みんな気合の入ったいい表情をしている。

「俺が突撃したら作戦開始だ」

俺は 風纏衣(シルフィード) 、 未来視(ビジョン) のいつものセットを発動させて一番俺たちと距離が近い奴に襲い掛かった。

するといきなり 未来視(ビジョン) が1秒後に、3発のフレアが俺を襲う光景を見せた。ヴァンパイアたちにバレていたのか!

ウィンドで3発のフレアを減衰させ、雷鳴剣と 火精霊の剣(サラマンダーソード) で3発のフレアを斬った。

「みんな! バレていたぞ! 作戦通り頼む! カレン! 最初から火魔法を使ってもいいぞ!」

流石にフレア3発も撃たれたから近くにもう1人いたら気づくだろう。

俺が全員に号令をかけると一斉に飛び出してきて、それぞれ与えられた役割を全うする。俺の後ろにクラリスとエリーがついてくる。

「俺たちのフレアを3発も凌ぐとは……その制服はリスター帝国学校の者か……」

壁の後ろに居て見えなかった3人目のヴァンパイアがゆっくりと2人のヴァンパイアの所に歩きながら話しかけてくる。俺は話に応じながらも鑑定した。

「ああ。俺はリスター帝国学校の者だ! お前たちはここで何をしている!?」

するとウピイルが笑いながら

「ちょっとデアドア神聖王国が邪魔になったんでな……軽く潰して俺たちヴァンパイアの国にしようと思ったんだが、ただ潰すだけではつまらんから大量のゴブリンをお前らに殺させてお前たちのレベルを上げてから殺そうとしただけだ。俺たちのレベルアップの為にな。素晴らしい計画だろ?」

ふざけたことを抜かしている。だがこの会話の最中にしっかりと鑑定することが出来た。

【名前】ウピイル・バートン

【称号】-

【身分】魔族(吸血鬼)・バートン伯爵家当主

【状態】良好

【年齢】170

【レベル】50

【HP】224/224

【MP】520/600

【筋力】90

【敏捷】85

【魔力】85

【器用】40

【耐久】85

【運】1

【特殊能力】体術(Lv7/D)

【特殊能力】火魔法(Lv7/D)

【特殊能力】門魔法(Lv4/E)

【特殊能力】HP回復促進(Lv7/C)

【詳細】神聖魔法に弱い

他の2人もウピイルと同じようなステータスで3人ともイザークで倒したウピアルよりも少し弱い……それに3人とも魔眼をもっていなかった。まぁ魔眼はレアだからいくらヴァンパイアとはいえ、全員が魔眼を持つという事はないらしい。

あとステータスとは関係ないのだが3人ともバートン伯爵家当主というのが意外だった。

ここにはいないウピオルというのもバートン伯爵家当主なのだろう。きっとこのバートン家というのは魔族の中でも相当優秀なのだろう。

俺はウピイルとの会話をやめて、クラリスとエリーに対して

「この3人は魔眼を持っていない! それに前に倒したウピアルよりも少しだが弱いぞ! クラリス!やはり神聖魔法が弱点だ!」

俺の言葉にクラリスとエリーの士気が上がったが、それ以上に相手の士気が上がった。

「な! 貴様らがウピアルを殺したのか! おい! ウピウル、ウピエル! 気を抜くな! ウピアルの仇は俺たちがとるぞ!」

ウピイルが2人の士気を鼓舞してから俺に

「1対3でウピアルを倒せたからって図に乗るなよ! 今日は3対3だ! それに……絶対にお前たちを殺す!」

怒鳴りながら怒りを露わにした。俺がウピイル、クラリスがウピウル、エリーがウピエルとそれぞれ分かれて戦う事になった。

どうやらヴァンパイアたちはウピアルが1対3で負けたと思っているらしく、1対1では絶対に負けないと思っているらしい。俺たちとしても1対1で戦うつもりだったから好都合だ。

クラリスとエリーはもう戦いを始めている。予想通り互角か互角以上の戦いをしている。

俺はと言うと少しでもウピイルから情報を引き出そうとまだウピイルと話をしていた。ウピイルは他のヴァンパイアが苦戦していても、狼狽えてはいなかった。HP回復促進に絶対の自信があるのかもしれない。

「誰の命令でこんなことをしている」

俺がウピイルに聞くと

「冥土の土産に教えてやろう。俺たちのヴァンパイアの王、カミラ様だ。イセリア大陸は土地が瘦せているのでな。中央大陸に進出するという訳だ」

こいつは前に倒したウピアルよりも口が軽いな……それにしても冥土の土産に教えてやろうって……言ってみたいセリフ上位にランクインするかもしれない……っとこんなことを思っている場合ではない。

「ヴァンパイアは何人いる?」

「100人いないくらいだな」

この調子でどんどん聞き出せることは聞きだそう。そう思っていたらクラリスとウピウルが戦っている戦場から物凄い轟音が響き、ウピウルがかなりダメージを受けていた。

何をどうしたらあんな轟音が? エリーの方も全くウピエルを寄せ付けていない。予想以上に2人のヴァンパイアが劣勢になっている事に気づき、ウピイルはいきなり襲ってきた。警戒はしていたのだが少し不意を突かれてしまった。

ウピイルはフレア2発を放ちそのフレアに隠れてウピイルが特攻してくる。ウピアルと同じような事をしてくるのだな……

あの時は 神威(カムイ) を使って緊急回避したが、今の俺は全てのステータスがウピイルよりも高い。俺は真っ向からフレアに向かって飛び出した。

フレア2発をウィンドインパルスで弾くとびっくりしたウピイルの顔が現れた。

構わず俺が雷鳴剣で斬りかかるとウピイルは俺の雷鳴剣を左手で捌いたが、捌いた瞬間に雷鳴剣から電撃がウピイルの体に伝わる。ただ雷鳴剣から伝わる電撃は纏雷やライトニングほどの威力はなく感電(小)となっていた。

ウピイルは驚いて距離を取ろうとするが、俺はそんなに甘くはない。一気に距離を詰めて今度は 火精霊の剣(サラマンダーソード) でウピイルの右腕を斬り飛ばした。

必死になってウピイルは距離を取ろうとするが敏捷値は俺の方が高いうえに 風纏衣(シルフィード) を展開している俺から逃げ切るのは不可能だ。

「き、貴様! 何者だ! なぜ俺たちに対して敵対行動をとる!?」

ウピイルが斬り飛ばした右腕を再生させながら俺に対して叫んだ。

「冥土の土産に教えてやろう。俺の名前はマルス・ブライアント! デアドア神聖王国の平和を願う1人だ!」

勢いに身を任せウピイルの首を刎ね飛ばし、死体をその場で燃やした。ウピイルを倒すとレベルが上がったが今はそんなことを確認している場合ではない。

クラリスとエリーの戦闘を援護するべくそれぞれの戦場に向かった。