軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第175話 至福

「エルハガンの無事を祝ってぇぇぇ!!!」

「「「「「かんぱーい!!!」」」」」

まだ危機は去ったわけではないが、ここでしらけるようなこと言うほど野暮じゃない。

テーブルに並べられた料理を食べてみると、どの料理もおいしかった。

クラリスが手伝っているから当たり前なのかもしれないが、アリーナの料理の腕も相当高い。男性陣は無心でご馳走を口に運んでいる。

女性陣はみんなお酒を飲みながら楽しそうにお喋りしていた。いつの間にかみんなアリーナと打ち解けておりお酒を飲むピッチが早い。

「美味いな……久しぶりにこんな美味い料理食べたぞ」

ヒスが口いっぱいに料理を詰め込みながら言うと教皇も

「確かに美味い。いつも以上に美味い気がする」

ヒスに負けないくらい、口の中をいっぱいにして答えた。教皇ってもっと大人っぽくて、厳かなイメージがあったんだが……ヒスと教皇の言葉にアリーナが

「クラリスをはじめ、みんな料理が上手でほとんど手伝ってもらっちゃった。みんな綺麗で可愛いし、料理の腕もいいから将来の旦那さんが羨ましいわ」

あ……この振りは嫌な流れになりそうだ……するとミネルバが

「何度も言うけど本当にマルス君は羨ましいわよね。クラリス、エリー、カレン様にミーシャ……そしてもしかしたらアリスまで?」

ミネルバの言葉を聞いたアリーナが

「ねぇ。さっき料理をしている間にみんなから聞いたけど、5人全員と結婚できるなんて、女の私からしても羨ましいわ」

俺のことをじっと見ながら言ってきた。この言葉にヒスが立ち上がり

「なんだと! アリスまでだと……? 俺なんて25年間……マルス今から決闘だ!」

語気を強めた。おいおい……25歳が10歳を……? と思っていたらドミニクがヒスに

「ヒス。恥をかきたくなかったらやめておけ。俺もマルスに決闘を挑もうとしたが、マルスの弟子を名乗る弓使いのクラリスに剣の勝負でボコボコにされたからな……」

ああ……そう言えばそんなこともあったな……ドミニクの言葉に教皇、ヒスだけではなく、アリーナも驚いていた。

「う、嘘だろ? クラリスも強いとは思ってはいたが、ドミニク以上に強いのか……?」

教皇がドミニクに聞くと

「俺よりも強いのはクラリスだけではない。2年Sクラスで俺よりも序列が高いものは全員強い。ちなみに俺は序列7位だ。1位マルス、2位クラリス、3位エリー、4位カレン、5位ミーシャ、6位バロンで次に俺だ。言っておくが顔がいい順ではないぞ。実力順だ」

ドミニクの言葉にヒスが女性陣を見ながら

「こんなに可愛い顔して……俺よりも強いのか……」

力なく席に座ると、それを見たミーシャが笑顔で

「ヒス。大丈夫。男は強さだけじゃない。ハートだよ、ハート」

なぜか上から目線でヒスを慰める。年上の準男爵相手にその口の利き方は……と思ったがよく考えたら準男爵と俺が知っているのは鑑定したからだった。ミーシャが知る由もない。

1時間くらいで帰ろうと思っていたのだが、楽しすぎて3時間も経っている。

もうお酒を何本開けたのだろうか? 女性陣はみんな出来上がっている。いつの間にか女性陣のMCがソフィアになっていた。

もうソフィアもだいぶこのメンバーには慣れたのだろう。そしてアリスも自然と輪に入っていけるようになっていた。

これは間違いなくソフィアのおかげだろう。最初は何でもソフィアを通じて会話をしている印象だったが、今ではしっかりみんなと話ができている。

特にアリスはクラリスに懐いているようだ。まぁ神聖魔法もクラリスに師事しているから自然とそうなるのか。アリーナも最初からパーティーメンバーだったかのようにはしゃいでいる。

そして教皇の息子のセラフはエリーをとても気に入っている。エリーは子供に好かれるな……

この様子を見ていた教皇が

「アリーナがこんなに嬉しそうにしているのは久しぶりだな」

「そうだな……最近はここで俺とソロンが話すといつも喧嘩になっていたからな。橋を落とすか落とさないかでな。正直アリーナも嫌だったろうな……」

教皇の言葉にヒスが目を細めながら言った。

飲んでいる間も教皇は神殿騎士から30分毎に外の魔物の報告も受けている。ヒスはかなり酔っているが、たびたび席を外しては外に出て冒険者達からエルハガン周辺の状況の報告を受けている。

「どうですか? 外の様子は?」

俺が教皇に聞くと

「すまないな……宴会の楽しい時に……外の方は大丈夫らしい」

教皇はだいぶ飲んでいるが、あまり酔っぱらっているようには見えない。もともと強いのか、今は酔える状況ではないのか……ヒスはと言うと……こちらはだいぶ酔っぱらっている。ドミニクに絡んでは激昂し、そして落ち込み、また絡む……

夕方前に始まった宴会は20時でお開きとなった。明日からはゴブリン達が湧いてくる街の北東に行くからあまり羽目を外すわけにはいかない……

教皇とアリーナ、セラフとヒスに別れを告げて俺たちは宿に戻った。

女性陣はもうみんな飲み疲れたのか、笑い疲れたのか、話し疲れたのかぐったりしていた。

ちなみに俺も結構飲んだ……というかこの世界に来てから一番飲んだかもしれないが酔ってはいない……いや……いっぱい飲んで自分は酔っていないっていう奴ほど信用できないか……念のためキュアをかけて街の外の様子を見ようと宿を出ると

「マルス。どこに行く?」

ドミニクが俺に聞いてきた。ドミニクの後ろにはバロンもいた。

「ちょっと、街の外が心配だから様子を見てこようと思ってね」

「俺たちも一緒に行っていいか?」

俺が答えると、ドミニクが一緒に行きたいと言ってきたので2人にもキュアを唱えて酔いを醒ましてから宿を出た。

街の外に出ると、なんとそこには神殿騎士に厳重に警護された教皇がいた。

さっきまで俺たちと一緒に宴会をしていたのに……教皇が俺たちを発見するとすぐに俺たちの所に来て

「おお! もしかして心配で見に来てくれたのか? 俺も報告は受けていたんだが、実際に自分の目で確かめてみないと安心できなくてな」

微妙に酒臭い息で話しかけてきた。

「ええ。僕も大丈夫とは分かってはいたんですが……だけどこれで安心して寝ることが出来ます」

俺たちの目の前にはかなりの冒険者が警備しており、その数は優に100を超えている。

「では僕たちは宿に戻ります。おやすみなさい」

教皇に挨拶して街に帰る道中、バロンが

「凄いな……教皇様は……ヒスさんの気持ちがなんとなく分かる気がする。デアドア神聖王国から外に出ない理由が……」

そうか……ヒスはきっと教皇と一緒に居たいんだな。まぁあの教皇の為とあらば何かをしてあげたいよな……そしてそう思うのはヒスだけではないのであろう。3人で教皇とヒスの話をしながら帰り、宿に戻ってから眠りについた。

2031年4月3日 6時

1人を除いて昨日の疲れはないらしい。ミーシャ以外は……キュアでミーシャの二日酔いを治したら

「マルス!大好き!」

と言ってほっぺにキスをしてくれたのだが、まだ微妙に酒臭い……

朝ごはんを食べて出発する前に

「今日から俺たちはデアドア神聖王国の北東を目指すが、出発する前に聞いてもらいたいことがある」

俺の声が真剣だったのか、みんなの顔が引き締まる。

「俺はこのゴブリンたちの湧いてくる先にはヴァンパイアがいると思っている。イザークの時と共通する部分が多いからな。みんなもそのつもりで最大限警戒してくれ!」

俺がそう言うとクラリスが

「やっぱり……私もなんかそんな気がしていたわ……もしヴァンパイアがいたら今度は私も戦うから! 倒す事は不可能かもしれないけど疲弊させることは出来るわ」

クラリスの言葉にエリーも

「……今度……絶対に……私が……倒す!」

拳を握りしめ、決意を表明する。カレン、ミーシャもそれぞれやる気なようだ。

宿を8時に出発し、街の外に出ると教皇が俺たちを見送りにきてくれていた。教皇の周囲には冒険者ではなく100名以上の神殿騎士が警護していた。

「昨日はごちそうさまでした。わざわざ見送りに来て頂きありがとうございます。アリーナさんやセラフ、エルハガンの街の為にもこの魔物が発生している元を潰してきます」

俺の言葉に教皇が申し訳なさそうな表情で

「マルス! こっちのことは任せてくれ! とにかく無事を祈る……マルスたちばかりに頼って本当に申し訳ない」

そう言って教皇は俺たちを送り出してくれた……