軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第157話 延長戦

1体ずつリポップであれば簡単に倒せる。纏まると厄介なだけで1体ずつであればそうでもない。

俺は自分にそう言い聞かせて先ほど手に入れた剣と短剣を扉の前に置いて、すぐにリポップしたオーガに向かって突っ込む。

ちなみに俺のMPはもう3000を切っている。30分弱ファイアストームかブリザードを発現させており、 未来視(ビジョン) 、 風纏衣(シルフィード) 、それにウィンドカッターやウィンドインパルスを使っていたから30分間でMP5000も使ってしまっていた。

だから俺は超短期決戦でオーガたちを倒そうとしていた。持久戦になると絶対に俺に勝機はないと思ったからだ。

MPはなるべく雷魔法を使い、 未来視(ビジョン) 、 風纏衣(シルフィード) などの防御的な行動にはMPをなるべく割かないようにした。

攻撃9、防御1くらいの割合で戦わないと1人で16体のオーガを30分以内に倒せないと思ったのだ。

最初にリポップしたオーガを雷鳴剣、 火精霊の剣(サラマンダーソード) 、ウィンドカッターを駆使してすぐに倒し周囲を見渡すと、青いオーガ、つまりオーガソーサラーが遠くの方でリポップした。

俺の最優先の目標はオーガソーサラーだ。オーガソーサラーさえいなければオーガたちは俺のファイアストームのレジストで精一杯になりその間に近接戦闘で倒せると踏んでいた。

「ライトニング!」

オーガソーサラーしか居ないのを確認してライトニングを放ったのだが、俺の詠唱が終わる直前に、俺とオーガソーサラーの間にオーガが1体リポップした。

ライトニングはその性質上近い者に着弾してしまうからオーガソーサラーではなく、オーガにライトニングが着弾してしまった。

急いで俺は着弾してしまったオーガの首を刎ねて改めてオーガソーサラーを目標にしたがもうすでに俺の周りにはオーガ3体がリポップしていた。

大丈夫……まだしっかり考えはある……俺は自分に言い聞かせ次の行動に移った。

無詠唱でトルネードを放つとオーガたちは必死に今いるオーガたちだけでレジストをしようとする。

もちろん今のオーガの人数だけではレジスト出来るわけないが俺は敢えてトルネードの威力を弱めてオーガたちに諦めずにトルネードをレジストさせた。

必死にレジストしている無防備なオーガソーサラーの所まで鳴神の法衣に雷魔法をエンチャントしてすっ飛んでいき首を刎ねた。 これで今オーガ2体、オーガソーサラー1体倒した。

だが今のわずか30秒くらいの間にオーガバトラーを除く全てのオーガがリポップしてしまった。

俺1人対オーガソーサラー4体とオーガ8体……そしてオーガバトラーも、もうすぐリポップしてしまう……だがまだ希望はある……

「ファイアストーム!」

俺のファイアストームにオーガソーサラー4体とオーガ2体でレジストする。

この隙に俺は鳴神の法衣にまた雷魔法をエンチャントし、オーガソーサラーが2体纏まっている所まですぐに向かい2体の首を刎ねようとした。

するとそれを読んでいたかのようにレジストに参加していないオーガ2体が俺に対して棍棒で薙ぎ払おうとしていたので、俺は咄嗟に2体の薙ぎ払いを躱したのだが、躱したところにストーンバレットが死角から俺の心臓めがけて飛んできた。

全く反応できなかったがストーンバレットは俺の体を貫かなかった……鳴神の法衣に少し穴が空き、ギリギリ俺の筋肉に刺さった程度だった。

鳴神の法衣のおかげか、それとも俺の魔力と耐久が高いおかげかは分からない。だが俺にとってオーガの魔法は脅威ではないという事が分かった。

が少しほっとした俺のわき腹をオーガの棍棒が襲った。ファイアストームを制御し、左腕を上げている所に後ろから思いっきり薙ぎ払われたのだ。何メートルか吹っ飛ばされ、肋骨が何本か折られた。

「ハイヒール」

言葉に出すのもつらかったが、なんとかハイヒールで骨折も治ったようだ……今のは本当に危なかった……

オーガたちは俺がオーガソーサラーを狙っているのは分かっているらしい。時間があるならこのままファイアストームをレジストさせ続けて、その間オーガの攻撃を凌ぎ続ければ確実に勝てるのだがそうは言っていられない。

もう5分は経ってしまっている……絶対に次の16体は倒せない……残りMPも2300になってしまった。

俺はさっきと同じようにファイアストームを唱え、オーガたちも同じメンバーがレジストした。オーガたちのMPはまだまだ枯渇しそうにない。そしてまたまた俺はオーガソーサラーの近くに行くと近くにレジストに参加していないオーガの気配を感じた。

しかしここからさっきとは違う行動に出る。

「纏雷!」

一か八かの纏雷を纏い俺の近くにいるオーガたちに金色の雷が襲い掛かる。放電された金色の雷は全部で5本……MPが残り200くらいになってしまった。消費MPはファイアストームで100、纏雷で400×5といった所か……

だが俺のこの纏雷はとても有効だった。今感電しているのはオーガソーサラー2体とオーガ2体、そして先ほどリポップしたばかりのオーガバトラーだ。

オーガソーサラーが感電したことによって俺のファイアストームがレジストできなくなりオーガたちを炎の嵐が襲う。

俺は今のうちに感電している5体のオーガたちの首を雷鳴剣で次々と刎ねていく。残りオーガ6体にオーガソーサラー2体……そのうち2体のオーガは今まさに業火により絶命しようとしている。

残り15分であとオーガ4体に、オーガソーサラー2体……この6体のMPはもうほとんど残されていない……俺の残りMPは100ちょい……これならいける! 予想外のことが起こったが生還できる!

俺はオーガソーサラー2体とオーガ2体が固まっているところにトルネードを発現させた。

これで残りMP50ちょいだが俺の計算では確実に4体はトルネードで倒せる。俺の気持ちに少し余裕が出来たことが良かったのかもしれない……俺は残りの2体の所に行き戦おうとし、念のため最初だけ 未来視(ビジョン) を発動させた。MPは1だけ残ればいい。

すると0.5秒後に俺の目にストーンバレットが直撃する未来が見えた。どこから飛んできているとかは分からない。

だがこのままでは確実に目にストーンバレットが直撃する事だけは分かる。もう雷鳴剣で攻撃態勢に入っているので緊急回避はあれしかない!

「 神威(カムイ) !」

無理矢理体を反転させたので体中が引き裂かれるような痛みが走る。俺の頬にストーンバレットが掠る……危なかった……もうハイヒールで癒すMPは残っていない……

「ヒール」

どうやらオーガソーサラーあたりがトルネードで、止めを刺す前にストーンバレットを発現させておいたらしい。

未来視(ビジョン) を使っておいて良かった……おかげでもう俺のMP3しかない……ウィンド1発ぶんか……ダメージが残る体でオーガ2体を相手にする。だがよく見ると残り2体のオーガもダメージを負っていた。

俺は最後の力を振り絞り雷鳴剣と 火精霊の剣(サラマンダーソード) でオーガ2体を仕留めにかかる。決着はすぐについた。

いくらダメージを負っているとはいえ俺のステータス値はオーガを凌駕している。MPがないオーガ2体であれば何の苦労もせずに倒すことが出来た。

そして2体を倒すとまた真ん中に宝箱が2つ出てきた。残り時間はあと7、8分……俺の性格上もう絶対に危険を冒したくないから、無視することも考えられたのだがこの宝箱だけは絶対に無視できなかった。

1つの宝箱は今までと同じ色の宝箱だったのだが、もう1つの宝箱の色が今までと違って光輝いており中からも光が溢れているのだ。

【名前】宝箱

【特殊】-

【価値】4

【詳細】何が入っているか分からない。出現率、中に何が入っているかは【運】によって変わる

今までと同じ宝箱の鑑定結果はこうだった。そしてもう1つの光輝く宝箱は

【名前】白銀宝箱

【特殊】-

【価値】-

【詳細】とても希少なものが入っている。

俺はそれぞれの宝箱からアイテムを取り出し、やっとの思いでボス部屋の扉の前まで辿り着いた。

☆☆☆

目の前で扉が閉まってしまった。あと少しだったのに……あと少しでマルスが戻って来れたのに……私は現実を受け入れることが出来なく呆然としていると

「マルス! マルス !マルス!……」

何度もマルスと呼び叫び扉を無理矢理開けようとするエリーがいた。扉が開かないと分かると思いっきりぐーで扉を殴りつけている。最初に扉を殴った時に拳の骨が折れる音が響いた。だけどエリーはそんなこと関係なく何度も殴りつけた。

「エリー! もうやめて! マルスは絶対に帰ってくるから!」

私はエリーを後ろから抱きかかえるように抑え、無詠唱でハイヒールを唱えてエリーの両拳を治した。だがエリーは止まらない。

「マルス! マルス! マルス! ……」

ひたすらマルスの事を泣き叫びながら壁を叩く。10分くらいしてエリーが少し落ち着きを取り戻したと思ったら

「もしも……マルスが……戻ってこなかったら……クラリスを……戻したあと……1人でここに来る……クラリスも大事……だけど……マルスの居ない世界はいらない……」

私もマルスのことは大好きだ。誰にもマルスのことが好きと言う気持ちで負けないと思う……だけどエリーには……

「エリー……その時は私も一緒よ……だからマルスを信じて待ちましょう……」

私たち2人は永遠と思えるような20数分を2人で抱き合い泣きながら過ごした。私たちの唯一の心の支えは時折ボス部屋の中から聞こえる物凄い轟音だ。きっとマルスの雷魔法が着弾した音だろう……

3人で戦って相当苦戦したのは私でも分かる。そしてMPもかなり消費していたことも分かる。普通に考えればいくらマルスでも生きて戻ってこられるわけがない……でもマルスだったら……という気持ちが少しはある。

しばらく経つともう轟音は鳴らなくなった……もしかして……エリーを抱きしめる力が強くなる。きっとエリーも同じなのだろう。私をきつく抱きしめてくる。

泣いていると扉の方からカチっという音が聞こえたような気がする。どうやらエリーにも聞こえたようだ。恐る恐る扉を開けようとするとビックリするくらい簡単に開いた。

部屋の中を見ようとするとすぐ扉の前にマルスがうつ伏せになっていた。最悪な状況が頭を過る……

「エリー! マルスを運ぶの手伝って!」

エリーはマルスの姿を見て気が動転しているようだ。そして私の声に反応するように

「ありがとう……クラリス……大丈夫だよ……ちょっと疲れただけなんだ……」

マルスがうつ伏せから仰向けになって空元気な声を出し、私たちを安心させようとしている。

エリーもマルスが無事なことにほっとしたのかまた泣き始めてマルスを運び出そうとしてくれる。私もマルスにハイヒールをかけようとするとマルスがボソッと呟いた。

「……今日もラッキーだ。綺麗なピンクと黄色が見られた……」