軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

31.森の異変①

「うう。ちくしょう。ちくしょう。俺が『二本爪』と『斑』倒したんだ。本当なら俺が今日は主役のはずだったんだ。うう」

「おい、いい加減この鬱陶しいのどこか捨ててこようぜ」

「だな、全く、折角のタダ酒なのに酒がマズくなるぜ」

悲しくて泣いている俺にゲレロとトレオンは優しい言葉をかける所か、俺を捨てる話をしてやがる。何て冷たい連中なんだ。

そうして泣いている俺の所にティッチがやってきた。その顔はいつもよりすっきりしている感じがする。

「ちょっといいか・・・・ってベイルは何で泣いているんだ?」

「こいつの事は気にすんなティッチ」

「そうそう、いないもんだと思っとけ」

こいつら酷くねえ?

「そ、そうか。・・・取り敢えずお前達の耳にも入れておこうと思ってな。ベイルが乞食鳥捕まえたって話は聞いているか?」

「ああ、久しぶり過ぎて、そんなのいたのすっかり忘れていたぜ」

「お前に引き渡されたって聞いて、逆にそいつらが可哀そうになったぐらいだ」

そう言えば渡した後の事聞いてなかったな。

「連中はコムコムの3級組合員だった。依頼の帰りに立ち寄って、たまたま稼いでいる奴を見かけたから乞食鳥をやったそうだ」

「余所の街で気軽にそんなんやるなんてコムコムの組合はどうなってんだ?」

「あれ?ゲレロには言ってなかったか?あそこは今キングがいるんだよ。この間行った時も元気一杯調子に乗ってたぜ」

トレオンの言葉にゲレロが呆れた顔をする。みんなキングの悪い噂は耳にした事があるから、そうなるのも分かる。っていうかキングなんてどこに出てもいい話聞かねえしな。

「その割にはこっちに流れてくる組合員があんまりいねえな?」

言われてみればゲレロの言う通りだ。キングが出たら大抵居心地悪くなるから結構な数の組合員が別の街に移籍するって話だ。特にここコーバスなんて一番近いから移籍してくる奴が多くてもおかしくないのに、ほとんどいねえ。

「どうやらコムコムのキングは、次はコーバスを狙うって宣言してるようで、コムコムから離れた連中はコーバス以外に移籍してるみてえだ」

トレオンの言う通りなら、納得だ。移籍してもまたコムコムと同じ目に会う可能性があるならコーバス以外を選ぶよな。でもまあ、コーバスの連中がキングの横暴を許すとも思えねえけどな。たまに他の街に行く事もあるけどコーバスの連中って他の街の組合員より多分レベルが一つ違うと思う。なんつうか経験とか級が上の奴らの教えって言うのもあるし、そもそも4級同士でギスギスしてねえんだよな。余所の街だと派閥みたいなもんがあったりして面倒だけど、コーバスは4級同士でも一緒に依頼受けたりしているからな。で、今日のモレリアみたいに暇な時に下の級にお願いされたら、平気で訓練して鍛えてるからな。

「ああ、それは今日の乞食鳥の連中も捨て台詞で言ってたな。『次はコーバスだから覚悟しとけ』って」

「そう言えば、俺が預けた乞食鳥の連中どうしたんだ?」

「ああ、いつも通りボコボコにして裸にしてから手枷を嵌めて街から追い出した。門番にも説明したから、あいつらはもうコーバスには入れないはずだ」

・・・・思っていた以上に容赦ねえな。

「そう言えば剥いだ装備はどうする?一応落とし物として門番に預けてあるが、ベイルが欲しいなら引き取れるように話はしてある」

「いや、別にいらねえ」

引き取って売れば多少の金にはなると思うが、それで動くのが面倒くせえ。記憶にある乞食鳥の連中の装備を思い出しても、本当に多少の金にしかならねえのが分かっているからな。それに金ならあるんだ。使う予定が消えちまったけどな(泣)

「皆さん、少しお話いいですか?」

ティッチの話が終わると同時に今日の主役アーリットが話しかけてきた。さっきまで色んな奴らに絡まれて楽しそうだったのに今はかなり真面目な顔をしている。

「あっ、トレオンさんはあっちでザリアに話を聞いてもらっていいですか?」

「ああ?別に今日の主役に言われちゃ断れねえけど、何だ?愛の告白でもしてくれんのか?」

「絶対に違うに10万だ!」

「俺は50万だ!」

すかさず俺とゲレロが金を賭ける。

「くそが!こっちが不利すぎんだろ!」

当然そんな事ある訳ねえって思っているトレオンは、賭けに乗らずにプリプリ怒りながらザリアの方に向かっていった。

そしてそのザリアの奴はさっきから俺を何故か警戒して一番遠い距離で酒を飲んでいるのは何でだろうな?

「それで話というのは今日の『達磨』討伐の話です。本当に運よく討伐出来ましたけど色々反省する事も多く、ベテランの皆さんならどう動くか聞いておきたくて・・・」

アーリット真面目だなあ。聞けばエルメトラ神も今日の戦いで思う所があったので、モレリアに訓練をお願いしていたらしい。まあ、俺も2級のこいつらがどうやって倒したか気になるし話を聞いてみる事にした。

・・・・・・・・

「ええええ!お前それ運が良かったってレベルじゃねえぞ!」

「ちょっと、マジでこれどう動くかって言われても、アドバイス何も出来ねえんだけど」

「わ、私達が狙っていた『達磨』が・・・・こ、こんな・・・・」

アーリットの話を聞いて驚く俺と、ゲレロ、ティッチ。

話によると森を探索中、まず最初に斥候のザリアが『達磨』を見つけて、仲間とどうするか話あったそうだ。

「普通、そこで撤退を選ぶだろ」

「私もそうだな。街に戻って組合に報告しただろうな」

2級が『達磨』に出くわしたらどうするか、極当り前の答えを返すゲレロとティッチ。俺も普通はそうするもんだと思う。

ただ、アーリット達は何故か戦うを選択したらしい。・・・何でだよ!

そして初撃はエルメトラ神の魔法だったんだけど、それが全く効果なし。追撃のザリアの投げナイフが運よく片目を潰す。そこにアーリットとクイトが仕掛けるが、流石『達磨』片目になっても二人を軽く相手する。そこに再度エルメトラ神の魔法!と言ってもアレンジしたヌルヌルするだけの水魔法を『達磨』の足元に巡らせスッテンコロリン。そこにエフィルが、目に突き刺さったままのナイフをこん棒でブッ叩いて討伐完了って話だ。

マジで運良すぎだろ。アドバイスなんて初手で逃げろぐらいしか言えねえぞ、これ。

「・・・ハハハ。ですよねえ。色んな人から怒られました。やっぱり運が良かったんですよねえ」

乾いた笑いをして去っていくアーリットにドン引きの俺達は何も声を掛けれなかった。ティッチもゲレロも引いてるって大概だぞ。

「おいおい、あいつら危ういぞ。あの調子ならいつか絶対全滅すんぞ」

「ベイルの言う通りだな。マジで運が良かっただけじゃねえか。変に自分の実力勘違いしねえか心配だぞ」

「うーん。そうは言っても私達ではどうしようもないな。私の方でもパーティメンバーに気にするように言っておくから、そっちも頼む。今はそれぐらいしか出来ん」

そう言ってティッチは俺達の机から離れていった。そして空いた席に座ってきたのは、なんと組合長だった。

「あれ?組合長も酒飲んでんすか?珍しいですね?」

「ああ、アーリット達が職員の分も奢るって言ったからな」

ジョッキを持った組合長が楽しそうに答える。

「昔は賞金首倒したら、その日は倒した奴らの奢りって暗黙のルールがあったんだが、いつの間にか廃れちまったみたいだ。・・・・それよりもお前らに話がある」

急に暗くなったり、明るくなったり良く分かんねえ組合長だけど、話ぐらいは聞いてやるか。普段迷惑ばっかりかけているからな。

「どうもここ最近の報告を聞いていると森がおかしい気がする。アーリット達が倒した『達磨』なんて2級の縄張り辺りにいたんだ。それにベイルが倒した『斑』と『二本爪』がいた場所もおかしい。あいつらの目撃情報はもっと森の奥の方だったろ」

「そいつは確かにおかしいな。けど俺達のいつもの狩場には、特に異変みたいなもんは感じないけどなあ」

「おお、組合長!飲んでるなんて珍しいっすね」

ゲレロと組合長が話をしていると、周りの組合員も話に加わってきた。

「森の異変?・・・俺らは特に感じねえっすねえ」

「ああ!そう言えば2級の奴らが牛や豚を見かけたとか言ってたような」

「2級の狩場でもたまに見かける事ぐらいあるだろ」

「だなあ、別におかしくねえか」

集まってきた組合員が森の異変について話をしているのを聞きながら、俺も何かあったかなあと思い返してみる。

「そう言えばここ最近、ベイルの奴がめっちゃ真面目に働いていた、ってのは森の異変・・・な訳ねえよな」

おい?俺は魔物と同類か?今言った奴誰だ?

「そう言えばそうだったな。・・・あれ?今思い返してみればベイルってその日のうちに帰ってくる事多くなかったか?」

「・・・言われてみればそうだったような。『俺の日頃の行いのおかげよ!』とか自慢気に言いやがるから話聞きたくもなかったんだが、今、考えるとおかしいよな?」

・・・・・・

全員の視線が俺に集まる。また俺何かやっちゃいました?・・・いや、俺何もしてねえよ。

「俺の方にもベイルが真面目にやっているって報告は上がってきてたが、こいつが日帰りしている事は聞いてねえ。まあ、お前がこの森の異変に関わっているとは思ってねえが、もしかしたらお前以外だと森の異変に気付くようなおかしな事があったのかもな。取り合えずここ最近日帰りで狩りが終わったのは何回ぐらいだ?」

組合長から問い詰められ、周りの組合員からも取り囲まれる。何で俺こんな取り調べみたいな事されてんだ?

「どうだったかなあ?日帰りは10回以上はあった気がすんだけど、あんまりはっきりと覚えてねえなあ」

「お、お前、日帰りしているって事は当然豚や鳥を狩って帰ってきてるんだよな?」

俺の言葉に組合員の一人が馬鹿な質問をしてくる。

「当り前だろ!お前馬鹿か!手ぶらでその日の内に帰ってくる訳ねえだろ。そんなん唯の散歩じゃねえか!」

・・・・・

「ふうー。って事はベイル、お前は日帰りできる距離で豚、牛、鳥を狩ってたって事だ。それってどう考えても3級の狩場じゃねえよな?」

「おう!大体2級の狩場で見つけてたな。ありゃあ多分、神様から真面目に働いている俺へのご褒美って奴だな」

俺の言葉に全員が大きくため息を吐いた。何でだ?

「これって2級の狩場に、この短期間に最低10匹以上の3級の魔物が入り込んでいたって事だよな?・・・お前何でこれを異常って思わねえんだ?」

「・・・え?いや、だって3級の魔物って言ってもたまに2級の狩場にも出る事あんじゃん?」

「普通の組合員なら1匹で、『たまたまか?』、2匹で『変じゃねえ?』、3匹目で『絶対おかしい』って思うんだよ!お前は10匹目を見つけた時に何考えてたんだよ」

「・・・え?・・・『ラッキー!』・・・だったかな?」

俺の言葉に再び全員が大きなため息を吐いた。何でだ?

「こいつマジで何なん?頭おかしいんじゃねえか?」

「普通は『ラッキー!』で終わらねえだろ。何食ったらそんな風に考えられるんだ?」

「ベイルが狩りまくったせいで、他の2級は異常に気付けなかったんじゃねえか?」

「マジでこいつ頭ベイルかよ・・・・・ベイルだったわ」

こいつら人をボロクソ言い過ぎじゃねえ?

「まあ、待て、お前ら。本来なら報告を受けていた俺も、おかしいと気付いておくべきだった。職員にも今後はすぐに報告をあげるように言っておく」

「組合長のせいじゃないでしょ。それに職員って言っても元組合員でも無ければ今回の件、気付けるとは思えませんけど?」

頭を下げた組合長のおかげで俺への暴言もおさまった。流石組合長。

「まあ、そこは後から考える。それは置いておいて。ベイル!お前に異常に気付けってのは諦める。代わりにお前が狩りの時に『ラッキー!』って思った事は他に何かなかったか?」

「うーん。敢えて言えば1級の狩場歩いてた時に結構な種類の魔物に出会ったぐらいかなあ」

あん時は確か仲間になる魔物を探して単眼ゴブリンと死闘を繰り広げた時だな。レッサーウルフ、黄黒蜘蛛、ゴブリン、スライム、スケルトン、ゾンビで1級の狩場で出会える魔物を一日でコンプしたぜとか思った記憶がある。

・・・・・・

おれの答えに全員が口を閉ざす。

あれ?別に1級の魔物が1級の狩場にいたってだけだからおかしくねえよな?

「おいおい、何でスケルトンやゾンビが死者の丘以外にいるんだよ」

「一日で全種類と遭遇ってありえねえだろ」

「やっぱり、何かおかしな事が起こってんぞ、これ」

「マジでベイルは何でおかしいって思わねえんだ?」

「こいつ自体がおかしいからだろ」

お?誰だ今言った奴?喧嘩か?俺と喧嘩してえのか?

「はあ、お前ら落ち着け。お前らも色々言いたいだろうが、ベイルだからですませとけ。別にベイルは悪い事している訳じゃねえんだからな」

おお!組合長分かってるう。そうだよ!俺何も悪い事してねえんだもん!文句言われる筋合いはねえぜ。ただ俺だからって言い方が気になるけどな。

「取り敢えず、組合としては森に異変が起こっている前提で動く事にする。4級はしばらくあんまり遠くへの依頼は受けずに、すぐに集合出来るようにって連絡しておく。そんでロッシュ!」

「はいはーい」

遠くで酒を飲んでいたロッシュが元気に返事したが、呼んだのが組合長だと分かると露骨に顔を顰めた。

「お前ら『上を目指す』に依頼だ。内容は森に異変が無いかの調査。俺の予想だと奥に強いのがいるはずだ」

それを聞いたトレオン達が露骨に顔を顰めている。ざまあ!頑張って仕事しろ!俺もこの一月頑張ったからな。

「後は4級の斥候が得意な奴にも同じ依頼をする。そして今話を聞いて事情を知っているお前らもこの話を他の連中に広めておいてくれ。そんで少しでも異変を感じたら組合まで報告するって事もだ。組合でも掲示板に張って周知させる。取り敢えず五日だ!明日から五日後には必ず何か結論を出して連絡する。それまであんまり森の奥に行くなよ」

酒も入ってんのにテキパキと指示だすなんて組合長相変わらず凄えな。更に酒を飲んでいる職員にも指示を出しながら自室に戻っていく組合長を見て、俺は思った。

頼まれても組合長なんてやりたくねえなあ。