作品タイトル不明
18.相棒を求めて④
で、無事に街に戻ってきたんだけど・・・
「おいおいおい!待てお前ら!そのヤバい呪物は何だ!」
・・・まあ、当然門番に止められるわな。だってゴブリンの死体が2匹くっついた白い良く分かんねえ物体だもん。
「えっと、ベイルさんから説明してもらっていいですか?」
おいおい、ショータンの奴俺に丸投げしやがった。まあ、対応するけど。
「あ、どうも、どうも、皆さんお馴染みベイルっす!ちょっとヘマしてこんなになりましたけど、何とか無事っす!『慎重着実に』のメンバーに助けてもらいました」
「ああ、何だベイルか。なら仕方ねえな。通っていいがゴブリンの汚いもんが見えているから布をかけておけ」
俺なら仕方ないってどういう事だ?理由を聞いてみたいけどまずは今の状態をどうにかする方が先だ。
で、解体場の方に最初連れていってくれたんだけど、どうにも出来ないってんで組合に向かっているんだ。ただゴブリンの見苦しいもんには布をかけているはずなのに何故か住人からの視線を感じる。
「おいおいおい!何だありゃあ?」、「何だよあれ?新種の魔物か?」、「死んだゴブが2匹ついてんぞ。どういう事だよ」
組合に着いて『慎重に着実に』メンバーが荷車から俺を持ち上げて組合内に入っていくと、暇そうにしていた組合員からも住人と似たような驚きの声があがる。・・・まあ驚くわな。俺も絶対驚くもん。
「ちょっと!ちょっと!ショータンさん!おかしなものを組合に持ち込まないで下さい!」
騒ぎに気付いた受付嬢がこちらに向かってきてショータンが注意される。
「そう言われても・・・カナ、よく見て。これベイルさんだよ」
「ええ?・・・うわ!本当だ!」
目があったカナはようやく俺の存在に気付いてくれた。彼女は中堅受付嬢だから俺とも顔馴染だ。
「ベイルさんかー。ちょっと私じゃ取り扱えないなあ。・・・先輩呼んでくるので待ってて下さい」
取り扱えないって何だ?俺は危険物か何かなのか?
「何ですか、カナ、仕事中ですよ」
「いいから来て下さい。これはリリー先輩か組合長しか扱えないんですから」
しばらく待つとカナに手を引かれたリリーがやってきた。すぐに俺に気付いたリリーは一瞬だけ驚いた顔を見せたが、すぐに表情を失くした。
「よお、リリー。ちょっとヘマこいちまったぜ」
「・・・はあああああ。一体何をどうヘマしたらこんな姿になるんですか?カナ、これは解体場に」
おいおい、リリーさん俺の事、物扱いかよ。ひどくねえ?
「リリーさんすみません。最初に解体場に持って行ったんですけど、組合に持っていけって言われまして・・・」
「・・・はああああ、なら商人ギルドに引き渡しますので邪魔にならないように隅に置いておいてください」
リリー、溜息吐いてばっかりだ。育児で疲れが溜まってんだな。後でエールでも奢ってやるか。
「リリー。商人ギルドってどういう事だよ?」
受付の脇に立てかけられた俺は近くで仕事しているリリーと話すぐらいしかやる事がない。
「ベイルさんと同じ状態の『堅皮虫』は商人ギルドに売ってるんですよ。あそこなら蜘蛛の糸を服に作り替えれますし、堅皮虫は外皮が色々利用できますからね」
マジで?あの状態のカナブン売れんの?知らなかった。今まで全部スルーしてたわ。
しばらくボケっとしてたら誰か依頼を終えて戻ってきたようだ。
「ああっ!疲れたあ!リリーさん聞いてよ。今日俺達初めて牙タウロス狩ってきたんだぜ」
「おめでとうございます。ライルさん達ならもうそろそろかと思っていました。これから安定して狩れるようになればすぐに3級にあがれますよ」
依頼を終えた2級の若造が楽しそうにリリーに報告している。後ろにいる仲間の様子から察するに、こいつリリーに惚れてんな。残念!リリーは旦那一筋だから希望は欠片もねえんだよ。
「・・・うん?・・は?ゴブ!!」
リリーに目を奪われていた若造の仲間が、壁に立てかけられている俺に気付いた瞬間大きく後ろに下がった。仲間の連中もそれに併せて各自武器を抜いて一瞬で臨戦態勢に入った。中々いい動きと連携じゃないか。
「組合で武器を抜かないで下さい。驚くのも無理はありませんが、よく見て下さい。ベイルさんですよ」
「どうも!皆さんご存じ3級組合員のベイルでーす!」
ここでピースでもしてやりてえが腕が動かせねえ。
「ベイルさん?おお、マジでベイルさんだ。何の遊びですか?驚かさせないで下さいよ」
「遊びじゃねえよ!ちょっとヘマこいたんだよ」
「ベイルさんってヘマこくとゴブの死体2匹くっつけて白い良く分からない物体になるんですか?・・・・マジで意味わかりませんよ。何をどうしたらこうなるんですか!!」
いや、マジでオレの方が聞きたいよ。何でこうなんだよ。
そんな感じで3組ほどが俺に驚いた後、ついに来てほしくねえ奴が現れやがった。
「いやあ、疲れたあ!リリー。ほら木札これな。なるはやで頼むぜ」
「ちょっと!リリーさんに失礼っすよ!申し訳ないっす、リリーさん」
「気心知れた仲と言っても最低限の礼儀は必要だろう。悪いなリリー。急ぎじゃないから明日でもいいぞ」
『守り抜く』の連中だ。運が悪い事に今日依頼を終えて戻ってきたようだ。他の奴はいいんだが、ゲレロの奴には会いたくなかった。
そして最初に俺に気付いたのはカルガーだった。
「・・・は?・・・え?・・・ゴブ?何で?」
戸惑いながらも即座に盾と槍を構える。他の連中はまだ俺に気付いていなかったがカルガーの動きに合わせて全員武器と盾を構える。この辺は流石だな。
「だから!組合で武器を出さないで下さい。あの物体はベイルさんです」
「え?・・・本当っす!ベイルさんっす!どうしたんっすか?」
「いやあ、ヘマこいちまったよ」
「・・・普通ヘマこくと怪我か獲物逃がすとかになるっすけど?これヘマこいたって言い方正しいっすか?あと、ゴブリンの汚いもの丸出しにするのやめてもらっていいっすか?」
いや、それは俺のせいじゃねえ。さっき隠していた布が風で飛んで行ったんだよ。
「おいおい、ベイル、お前邪神召喚でもしようとして失敗したのか?」
優しいカルガーがゴブリンに布をかけてくれているってのに一番絡まれたくねえ奴が絡んできやがった。
「違えよ!ヘマこいたんだよ!」
「お前があ?黄黒蜘蛛如きに?そいつはおかしいだろ。今をときめく3級組合員のベイル様が糸を躱せねえわけねえ。・・・あー!分かった!この前モレリアが娼館で男縛って楽しんでたって話聞いてお前試してみたくなったんだろ!」
「おいいいいいい!ふざけんなよ!ゲレロ!俺にそんな趣味はねえよ!」
慌てて否定するが、時既に遅し。リリーやカルガー、他女組合員の冷たい視線が俺に向けられる。男?腹抱えて笑ってやがる。
「うわあ、流石に引くっす」、「マジでもう話しかけてこないで欲しいわ」、「やっぱりレッサーウルフの噂も本当だったんじゃない」、「・・・・・・・」
色々言われているけどリリーの無言の冷たい視線が一番きついわ。取り敢えずゲレロの馬鹿にこれ以上ここにいられると、ある事無い事言われそうだからどこかに行ってもらおう。
「おい、ゲレロ!ライルの奴らが今日初めて牙タウロス討伐したんだってよ!お前なんかおごってやるって約束してなかったか?」
「お!マジか?あいつら巨乳好きだったな・・・それならあの店に連れていってやるか!」
「・・・マジ、死ねばいいのに」
ゲレロの言葉にカルガーがボソリと言ったのが聞こえた。まあカルガーはシリトラといい勝負だからね。
■
「ふん!フン!ふっふふん!よーっす、リリー!明日の依頼やっぱりキャンセルしてくれ!」
ゲレロの馬鹿を遠ざけたと思ったらご機嫌な様子のトレオンが下手くそなスキップでやってきやがった。
「・・・・・・はい」
そう一言だけ言って事務処理に戻るリリー。やべえ。リリーめっちゃ怒ってんじゃん。トレオンの奴は依頼受けた後にギャンブル行って、勝てば依頼キャンセルするのは日常茶飯事だから、リリーが怒るのも仕方ない。ただ、リリーは流石ベテランなだけあって大声で怒りはしない・・・静かに怒るから逆に怖えんだけどな。
「おいおい。何怒ってんだリリー!育児疲れか?よーし日頃お世話になっているから俺がエール奢ってやる・・・・・うお!!!ゴブ!!!」
ご機嫌で話しているトレオンだったが、俺に気付くと慌てて後ろに飛び下がりながらシミターを構える。やっぱりベテランになってくると反射で臨戦態勢に移行できるんだな。
「組合で武器を出さないで下さい。これベイルさんです」
なんかリリー、俺の事さっきから物扱いしてねえ?
「へ?・・・うお!マジだ、ベイルだ。・・・何でこうなってんだ?邪教徒の生贄にでもされたのか?」
何回も同じ説明するの面倒くせえな。でもちゃんと言っておかないと好き勝手言われるから仕方ねえ。
「・・・・ブハハハ!何だよそりゃあ!相変わらず訳分かんねえ事してんな」
仕方ないから説明してやったらトレオンの奴腹を抱えて笑いやがる。そんなトレオンにさっき俺に驚いた2級の連中が近寄ってきた。
「トレオンさん。『全てに打ち勝つ』の奴ら、無級のエフィルって女と仲いいですけどあれってルール違反じゃないんですか?俺らの時は注意しましたよね?」
ああ、誰かと思ったら『全てに打ち勝つ』が無級だった時に声かけてた連中か。自分達だけ注意された事が気に入らないんだな。
「組合員になる前からの知り合いならルール違反にはならねえんだよ。お前らは組合員になってから声かけたから駄目だったんだ」
「それじゃあ、組合員になりそうな奴を入口で待ち受けて声をかけたら問題ないって事ですね?」
ルール上はそれで問題ないが、色々理由があってそれをする奴はいないんだ。
「そうだな、それなら問題ねえが、そもそもいつ来るかも分からねえ新人を、依頼を受けずにお前らずっと入り口で待ってんのか?金がすぐになくなるぞ?」
「う・・・確かに・・・」
「それにたまたま運よく捕まえられたとしても、どんな奴か分からねえんだぞ?性格最悪の可能性もあるし、無級で逃げ出すかもしれねえ。まあ、それでもいいってなら俺は止めねえよ」
「言われてみればそうですね。分かりました。すみませんでした」
「なーに、分かればいいさ。よーし、じゃあ飲みに行くぞ。今日は俺が奢ってやる」
「マジすか?」
「やった!」
さっきまでふくれっ面してた2級の連中もトレオンの言葉で笑顔に変わった。現金な奴らだ。そしてトレオンと肩を組んで組合から出ていった。そしてポツンと残される俺。・・・暇だなあ。
「リリー。商人ギルドってまだ来ないのか?」
「そうですね」
・・・・・・
「ただ、待つだけってのも暇だなあ」
「そうですね」
・・・あれ?リリーが「そうですね」しか返事してくれない。俺はいつからタモさんに転生したんだ?