軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

16.相棒を求めて②

まあ、そんなくだらない事を話していると、受付の辺りが騒がしくなっていた。

「お願いします!お姉ちゃん達を助けて下さい!」

「ええっと。そう言われても・・・」

見ると10歳ぐらいの少年が新人受付嬢に何やら必死に訴えかけていた。それを受けている受付嬢は困った顔で対応している。組合員歴の長い俺は、この光景がどういう状況か一瞬で理解した。

「ここは冒険者組合だから依頼するにはお金が必要です。それにそういうのは兵士の皆さんにお願いした方がいいですよ」

「お金ならあります!これで依頼をお願いします」

受付嬢の言葉に少年は手に握りしめた100ジェリー硬貨を差し出す。

「100ジェリーでは流石に依頼を受け付け出来ません。依頼料は最低1000ジェリー、そこから成功報酬が加算されますので、最低でも3000ジェリーは必要です」

受付嬢の答えに絶望した表情を浮かべる少年。まあ、その表情が演技だとしたら中々の演技力だ。そもそもさっき受付嬢が言ったみたいに街の住人のトラブルは兵士に言えば無償で動いてくれる。

それが何故組合に頼みに来ているのか・・・・当然訳アリなんだろう。このパターンは、依頼料を払いたくないから子供を使って親切心に付け込みタダですませようとしているってのが多い。あとは釣れた組合員を適当な所で待ち伏せして身ぐるみ剥ぐなんて事もある。

俺も故郷にいた頃は子供を使ったこの手口によく引っかかって無償で魔物討伐とかさせられた。こういうので本当なのは物語の中だけだ。大抵、話の中では助けにいったら仲間が増えたり、街の有力者や良い貴族と仲良くなるってのが多い。だから俺も最初はその可能性を信じて馬鹿みたいに助けまくったが、その全てが嘘だった。

だから俺はこういう時に助けに行く主人公ムーブは、かまさない事に決めた。そして他の組合員もその事を良く知っているので誰も助けに行かない。たまに新人が騙されるが、それもいい勉強になるだろうって事で誰も本当の事を教えない。これもまた組合員の『裏試験』って奴だな。そしてまた、今回も騙される連中が現れた。

「どうしたんだい?」

泣きそうな少年に声をかけたのは1級組合員アーリットだ。『全てに打ち勝つ』のリーダーをやっている。

「お願いします。お姉ちゃん達を助けて!・・・あっ・・・でも・・・お金が・・・」

声を掛けたアーリットに表情を明るくして再びお願いする少年だが、先程の受付嬢の言葉を思い出したのか表情が暗くなる。

「いいよ。100ジェリーで僕たち『全てに打ち勝つ』がその依頼受けるよ」

だけどそれを気にした様子もなくしゃがんで少年と目線を合わせると手に持つ100ジェリーを受け取り、少年の頭をポンと叩く。

「本当ですか!それならお姉ちゃんは多分、『死者の丘』に向かっているはずです。お願いします。お姉ちゃん達を助けて下さい」

「分かった。『死者の丘』だね。必ずお姉ちゃんを助けてみせるよ。ちなみにそのお姉ちゃんの名前教えてもらっていいかな?」

「エフィルです!エフィルお姉ちゃんです!」

少年に名前を聞いたアーリットは立ちあがり、後ろに立っている仲間達を振り返る。

「ごめん。悪いけど一緒についてきてくれないかな?」

「別に構わないぜ!」

「はあー、ちょっとはこっちにも相談しなさい。まあ当然構わないわよ」

「いいよー」

アーリットの言葉に誰も反対する仲間はいない。全員賛成して組合を後にした。

「おいおい、あいつら行っちまったぜ。ったく面倒くせえなあ」

アーリット達が組合から去った後、組合にいる連中の何人かが悪態吐きながら立ち上がる。当然俺らと飲んでたトレオンも面倒くさそうに立ちあがる。

「『死者の丘』ってまた面倒くせえなあ」

『死者の丘』は名前通りアンデッドが何故か集まっている丘の事で、そのアンデッドは特殊な方法でしか倒せないので、いい稼ぎにならない。ほとんどの組合員は依頼を受けなきゃ寄ることも無い、全く金にならねえ場所だ。

それでも文句を言いながらトレオン達は、アーリット達の様子を隠れて見にいくんだろう。で、ヤバそうなら助けに入る。相変わらず後輩の面倒見がいい奴だ。

「死者の丘かあ。ならこいつ貸してやるよ」

そう言ってゲレロが机の上に置いたのは短い槍。3級以上の大概の組合員はアンデッドに効果のある聖属性武器や聖水を持ち歩いているので、この短槍もそういう効果があるものなんだろう。

「じゃあ、僕はこれをあげる」

モレリアが差し出したのは小瓶に入った白い粉。ヤバい薬とかじゃなくてこいつは『清めの灰』って奴だ。撒くとその周囲にアンデッドは近寄ってこない。

そうなると俺が渡すものはこれだな。

「ほい、これ持っていけ」

そういって聖水と絶無名を机の上に差し出す。聖水はアンデッドにかなり有効だからぶっかけてもいいし、武器にかけて一時的な対アンデッド武器にしてもいい。まあ武器の場合は効果はあんまり長くないけどな。

絶無名は語る必要もない超有能武器だ。

「お、悪いな。まあ、多分使わねえと思うが、一応借りてくわ」

そう言ってトレオンは俺達が差し出した物を持って組合から出ていった。

そして机にポツンと残された絶無名・・・・・・。

・・・・・

おい!!ちゃんと絶無名も持って行けよ!

今日もフリーの討伐を終えて街に戻ってきた俺。大八車を預けて組合に向かう。

アーリット達のその後?知らねえ。興味もねえ。まあ、騙されたんじゃねえの?

組合で金をもらってエール片手にぶらついていると、珍しい組み合わせを見つけた。

「おお!神!」

「神じゃない!!」

今日も神々しいお姿のエルメトラ神。自分が神である事を頑なに認めようとしない謙虚なお方だ。そんなお方がなんとモレリアと話をしているじゃないですか。・・・あんまりモレリアと話すと汚れた知識でその身が穢れるからやめておいた方がいいですよ。

「じゃあ、師匠。ありがとうございました」

丁度話が終わった所だったのか、エルメトラは頭をペコリと下げて俺とモレリアから離れていった。その時隣にいた修道服のエルフも一緒に頭を下げてついていった。その修道女、かなりの美形で服の上からでも分かる中々いいものを持っている。いや、それよりも最後何て言った?

「師匠?誰が?」

「僕だよ。そこまで大した事教えてないのに何故かそう呼ばれるようになったんだ」

そう言いながら10ジェリー渡してきたので、モレリアのエールを冷やしてやる。

「モレリアが?師匠?・・・・ああ!分かった!夜の方か!大した事ないとか謙遜すんなよ。お前の夜の知識については胸を張って自慢していいぞ」

「違うよ。魔法の方だよ。夜の方も教えようとしたんだけど断られちゃった。エルメトラには想い人がいるんだって」

・・・

マジかよ。

・・・

いつの間にか俺、神に愛されちゃってた。

困ったなあ。色々と俺には言えない秘密があるんだけど・・・でも神になら話してもいいかもしれない。俺もいい加減腰を落ち着ける年齢だしなあ。

「・・・いや、汚い笑いで変な妄想しているけど、絶対ベイルじゃないからね」

「おいおい、モレリアさんよお。何でそんな事言い切れるんだあ?お前神から直接聞いたのかよ」

「いや、だってエルメトラ、君の事『ヘンな人』って言ってたよ。流石に想い人にその評価はつけないでしょ」

・・・ま、マジかよ。俺ってそんな評価なの・・・いや・・・でも・・・まだ

「ワ・・ワンチャンなんとか」

「諦め悪いなあ。それならエルメトラ見ていれば想い人が誰かすぐに分かるよ」

そう言われて神の様子を伺うとパーティメンバーと楽しそうに話をしている。そう言えば、普通は1級にあがってしばらくすると、街では各々バラバラに行動するのに『全てに打ち勝つ』の連中はまだパーティメンバーと行動している。仲いいんだな。

あれ?さっきの修道女も『全てに打ち勝つ』の輪に入って楽しそうにしている。

「なあ、モレリア。『全てに打ち勝つ』と一緒にいる修道服の女は誰だ?見た事ねえ顔だが?」

「ああ。僕もさっき紹介してもらった。あの子はエフィルって名前でこの間組合員になったばかりの見習いだよ。前にここで依頼しようと泣いてた子がいただろう?あの子が助けようとしてたのが彼女で、その時に助けてくれたエルメトラ達と意気投合して組合員になったんだって。そうそう、なんと彼女、珍しい事に聖魔法使えるらしいよ」

聖魔法・・・アンデッドに有効な魔法だ。これを使える奴がいれば死者の丘は1級では美味しい狩場に早変わりする。たしかコーバスだとティッチの『柔軟に行こう』に一人使える奴がいたはずだ。適正があるのはかなり珍しい魔法だ。

「・・・けるな」

「うん?何か言ったかい?」

「ふざけるなあああああああ!!!!!」

「おお!な、何だい?急にどうしたんだい?」

モレリアが珍しく驚いているが、俺はそれに気付いてねえぐらい怒っている。だって、あのエフィルって物語だとめっちゃヒロインポジションじゃねえか!俺も前世の記憶を思い出した時に思いつく限り俺のヒロインがどこにいるか、めっちゃ探したんだぞ。

それこそ、この間の子供のお願いなんて、その典型だから嘘臭くても必ず受けてたんだ!なのに全然見つからなくてようやく出てきたかなと思ったらトロルのバケモンだ。それに引き換えアーリット達は一発で見つけやがった。なんなん?あいつらが主人公なの?

「俺が今まで何回同じ事したと思ってんだ!いつかはツモれると信じて頑張ってきて、それでもツモれなくて、諦めてベタオリしてたんだぞ!それが後追いリーチしたあいつらが一発ツモ!しかも美人!巨乳!聖魔法!トリプル役満じゃねえか!」

「・・・えっと?ベイル?何言ってるんだい?つも?べた・・おり?鳥?」

「おい、またベイルの奴訳分かんねえ事で騒いでいるぜ」、「ほっとけ、いつもの事じゃねえか」、「いや、でも様子がヘンじゃねえ」、「あいつはアレが通常だ」

ふう、落ち着け。ここで『全てに打ち勝つ』に文句を言うのは流石に間違っている。あいつらはたまたま運よく、本当に助けを求めた人を助けた。そんで当たりを引いて景品があの修道女だったってだけだ。

・・・ただ、俺や他の組合員がハズレばっかり引いて来たってのも事実だ。って事は次に当たりを引ける確率はかなり低い。

そうなるとヒロインは諦めて次を探した方がいい。ヒロインポジションが出てきた、このタイミングならどこかにいる可能性がある。・・・そう、序盤で仲間になってくれる有能な魔物だ。『タロウ』達?あいつらはゴドリックのものだからちょっと違う。それにあんまり有能じゃなさそうだし。

出来れば言葉を話せる奴がいればいいんだけど、まあ、希望を言ってりゃキリが無い。善は急げだ。

「よし、俺には魔物しかいねえ!魔物が俺を呼んでいる!待っててくれ俺の相棒!」

「えー。行っちゃったよ。大丈夫かな・・・頭」、「ベイルやっぱりおかしくねえ?」、「変なもん喰っただけだろ」、「あいつはあれが通常だ」、「逆におかしくなった方がまともになるまであるな」

組合を飛び出していく俺の背後で何やら言われているが、気にせず俺は準備を済ませ近くの森に向かうのであった。