軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

136.アーリット達の実力

「取り合えず折角来てくれたんだから、早速稽古つけて欲しいぜ」

「クイトもこう言っているし、師匠達も良いですか?」

「いいよ、僕もエルがどれだけ強くなったか見てみたいし」

「よーし、カルガー、てめえも強くなってるんだろうな?」

「大丈夫っす、あれから何度も強敵相手にして強くなったっすから、ゲレロさんびっくりするっすよ」

「そんじゃあ、ザリアも見てやるよ。ついでにハーサも来い」

「はい、トレオンさん、お願いします。ハーサもいいって」

「ありがとうございます」

連中は楽しそうに稽古場のあるだろう方に仲良く歩いて行った。

「・・・・・・・・・」

俺?俺は行かねえよ。

「え?筆頭は何で行かないの?」

「エフィルさんに稽古つけに来たんだよな?」

「何であの派手な帽子の手入れ始めているの?」

「相手を焦らす、基本的な卑怯技です。ここでは焦らず心を落ち着かせなければいけません。稽古は既に始まっているのです」

「おお!!」

「そう言えば、エフィルさん、自分のペースに持ち込み、相手のペースを乱せるかで勝負は決まるって、いつも言っているな」

何か周りか好き勝手言っているけど、全然違う。別に焦らし作戦とかじゃねえ。この高い帽子買ってじっくり見て無かったから、ただ、見ているだけなんだ。それに稽古するの面倒くさくなってきた。

「先生、私はもう大丈夫です。それでは稽古に行きましょう。エール一杯」

「はあー。面倒くせえけど実力見てやるか」

仕方ねえ、重い腰を持ち上げてエフィルに稽古場に案内してもらう。

「へえー。結構広いじゃねえか・・・っと!」

稽古場の広さに驚いていると、後ろからエフィルが襲ってきたので、こん棒で受ける。入口で立ち止まって、俺を先に行かせた時からその行動は読んでいたよ。

「流石ですね。先生」

「稽古場に足を踏み入れた時から警戒するのは当然だろ」

「おお!エフィルさん達いきなり凄いぞ!」

「入ってそうそう不意打ちと、それを読んで受ける!あの2人どんな考えしてんだ」

へへへ、ギャラリーの驚きの声が心地いいぜ。そんじゃあ、もっと驚け!と言いたいが、他の連中の動きも見たい。懲りずに殴りかかってくるエフィルが邪魔だから、殴りかかってきた所を足払いで転がして背中を踏みつけ押さえつけておく。

おっと、砂を握ったか。

「お前は卑怯技に意識が行き過ぎだ。使うなら、もっとまっすぐ攻めてからにしろ。ほら!握りこんだ砂と口の中のもだ!出せ!」

「ああああ!!」

もう一方の足で手を踏みつけると、エフィルは耐えきれなかったのか、声をあげて手を広げた。そして叫んだ事で口の中に含んでいた緑色の液体が地面に零れる。

汚ねえな。悪役レスラーの真似して、毒霧でも吹きかけてくるつもりだったのか?こいつ、顔はいいから、吹きかけられても喜ぶ変態が出てくるぞ。

「す、すげえ、あのエフィルさんが一方的に・・・」

「しかも容赦ねえ。弟子に厳しすぎない?」

「そりゃあ、クタイッシュも変わるよ」

弟子じゃねえんだけどな。まあ、いいや、周りの様子見よっと、あっちはシリトラがアーリットとクイト相手してるのか。シリトラのトリッキーな動きに2人が翻弄されてるな。シリトラは、ティッチの正攻法と動きが真逆だし、その癖小さいから、余計に惑わされるんだよな。

そんでこっちはモレリアと女神か片手の指5本から魔力出してジェダイの騎士ごっこしている。色がころころ変わって凄いキレイだ。

「どうです、師匠!今は8本できるんです。5本ぐらい余裕ですよ!」

「そうだね。エルもかなり頑張ったんだね」

「はい!頑張りました!」

「そうかい、そうかい。それじゃあ、まだ片手だけど次に進もうか。ちゃんとガードするんだよ」

「はい?え?師匠今何と?」

「ガードだよ。ガード。防いでね」

そう言うなり、片手はジェダイの騎士ごっごのまま、モレリアが女神に蹴りを放つ。

「きゃあ!!」

それを悲鳴をあげながらも、女神は何とか足で防ぐ。その際に指からの魔力が一気にモレリア有利に傾く。

「ほら、エル。集中乱れているよ」

「で、でも師匠。いきなり、こんな・・・」

「大丈夫、大丈夫。最終的には10本でこの組手やるんだ。まだ片手だから余裕、余裕」

「余裕じゃ・・・くッ!!」

ドン引きしている女神に向かって、ニコニコ笑いながら蹴りを放つモレリア。それを受ける度に痛いのか苦しいのか顔をしかめる女神。それでも構わず笑い顔で何度も蹴っていくモレリア。こいつ鬼か!

「痛っ!!!」

何度目かの攻防の後、女神が手を痛そうに振りながら、モレリアから距離をとる。

「はい、エルの負けー」

「・・・・・」

・・・・・・・・

周りもドン引きして声出てねえぞ。仕方ねえ、女神の為だ。俺がモレリアに一発ガツンとやってやる。

「おい、モレリ「凄いです!!凄いです!師匠!10本で終わりだと思ってましたけど、まだその先があるんですね!師匠はどれだけ凄いんですか!・・・うん?何?ベイル、何か言った?」

「いえ、何でもありません」

女神はドン引きして声も出ないのかと思ったけど、凄すぎて驚いていただけか・・・。モレリア、女神が向上心のあるお方で良かったな。そうじゃなければ、お前死んでたぞ。女神に感謝しとけよ。

喜んでいる女神をほんわか眺めた後は、今度はトレオン達だ。

「ちょっと!ハーサ!」

「す、すみません!」

トレオン達を見れば、ザリアが手玉にとられて遊ばれてるのが分かる。ザリアは相変わらず動きが早いけど、トレオンはうまい事ハーサを障害物にして、ザリアの動きを止めている。こう言う所が経験の差って奴だな。

「ザリアは動きは速くなっているが、こういう連携はまだまだだな。ハーサはもうちょい周りを見ろ。次は一人づつだ。最初はザリアだ。行くぞ」

そう言ってトレオンが木剣片手に仕掛けるが、ザリアは結構互角に戦えている。ザリアの奴、大分成長しているな。コーバスにいた頃は・・・・あれ?どうだったっけ?そう言えば何故か俺を恐れて逃げ回るから実力見た事ねえんだった。

「ガハハハッ。盾の使い方うまくなったじゃねえか!」

「だから、強くなったって言ったっす!」

こっちはゲレロとカルガーが木の棒と盾でチクチク攻撃しあっている。凄い地味な画だ。

「いや、盾の使い方がうまくなっただけで強くなってねえよ」

「どういう事っすか?」

「こういう事だよ」

「!!ッ!!」

そう言うとゲレロは盾を構えてカルガーを壁際まで押し込んでいく。それに耐えようと踏ん張るカルガーだが、体格差がありすぎて、ズリズリと押されていく。そうして壁際まで押された所でカルガーが降参した。

「ほら、分かっただろ?」

「すみません、全然分かんないっす」

「何でだよ。カルガーもう一回盾構えろ。行くぞ!」

そう言うとゲレロが木の棒で槍みたいに突くと、カルガーをそれを難なく盾で受け、カウンターで逆に突いてくる。今度はそれを受けてゲレロが突き返す。それを繰り返す地味な画が続く。そうしてしばらく突き合っていると、カルガーの突きが結構良い感じで盾に入り、ゲレロが数歩後ろにたたらを踏む。

ゲレロを下げるとはカルガーだいぶ成長してんな。あれ?追撃せずに守りを固めるのか?カルガーってこんなに慎重なタイプだったか?

「ふう、カルガー、これでも分かんねえか?」

体勢を立て直したゲレロは何故か構えていた盾を下ろしてカルガーに問いかけた。問いかけられたカルガーも意味を理解したのか落ち込んだ顔で盾を下げた。

「分かったっす。自分、攻撃してないっす」

「そうだ。今、俺が体勢崩したのは攻めるチャンスだった。それなのにお前は守りを固めた。そしてさっきからお前はカウンターしか狙ってない。別にカウンター狙いが悪いとは言わねえが、自分から先に攻撃してこねえ奴は全く怖くねえ。クワロからも教えてもらっただろ?盾使いは守るのが仕事だが、そればっかりじゃ駄目だって」

「はいっす」

「たまに先に攻撃するだけでいいんだ。それだけで、敵はお前を警戒する。チャンスなら責め立てろ。そうなりゃ、隙も生まれやすくなってこっちのもんだ」

「はいっす。ありがとうございます」

「全員腕はかなりあがっていますね。ただ、王都では魔物討伐ばっかりしていたんでしょう、全体的に対人や乱戦が弱いです。王都に来てから野盗討伐に何度行きましたか?」

今は訓練が終わってアーリット達のハウスで反省会だ。組合はもう用事が無ければ寄らない方がいいって言われた。絶対にまた絡まれるからだってさ。

「一度もないですね」

「一度も??王都ならたくさん依頼が来るでしょう?」

「ええ、そういう依頼は5級が先に受けますから、回ってこないです。『秘薬』を野盗が誰かから奪って持っているみたいな噂がありますので、余計にですね」

「『秘薬』?嘘でしょう?」

「多分デマですね。みんなそう言ってますし、見つけたって話もありません。そもそも『秘薬』を奪われた被害者がいないです。でも万が一って所ですかね。それに野盗討伐は当たれば稼ぎもいいですから」

コーバスじゃティッチ達が依頼出る前に討伐する事が多かったけど、依頼があれば争奪戦になるぐらいには人気の依頼だもんな。

「そうすると、困りましたね」

「人型の魔物の巣とかレッドウルフ率いる群れの討伐とかさせればいいんじゃねえか?」

野盗の依頼が無いんじゃそれぐらいしかねえな。後は自力で依頼より先に野盗を見つけて倒すって方法だけど、王都周辺は警備がしっかりしているからいねえって話だ。

「それなら、しばらく僕らに稽古をつけてくれませんか?」

「ええー。嫌だ!面倒くせえ」

さっき稽古つけたからもういいだろ。

「王都にいる間、僕らのハウス使っていいですよ」

「いらねえ。宿代は組合から出ている。エフィルも懲らしめたし、依頼は終わった。明日には帰るぞ」

「ベイル、別にいいじゃねえか」

「そうだぜ。俺はまだ娼館満足に楽しんでねえんだよ」

「知らねえよ。だったら勝手に残ってろ」

大道芸人の衣装は勉強になったが、それぐらいだな。後は特に気になる事はねえな。

「タロウと遊ばないっすか?」

おっと、そう言えばタロウがいたな。タロウと二日ぐらいは遊んでやるか。

「先生、ウイスキーは美味しかったですか?」

おっと!こっちも忘れていたぜ。コーバスじゃウイスキーまだ買えねえから、大量に買って帰らねえと駄目だったな。

「ああ、美味かった。ありゃあ、帰る時に大量に買って帰るつもりだ」

「それならその手配を私がするので、もう一日時間を下さい」

要するに後3日は王都にいろって事か・・・・うーん。どうすっかなあ。

「その間のお酒は俺達の奢りだぜ」

「チッ!仕方ねえ。ならあと3日はいてやる。ただし4日目の朝には帰るからな」

って訳で酒につられて滞在を延長したんだが、そのせいでこの後、ちょっとした騒ぎを起こして、危うく貴族が出てくる所だった。

欲に目が眩んじゃ駄目だって、コーバスへの帰り道、深く反省する苦い経験だった。