作品タイトル不明
128.野盗討伐
翌朝、俺はペコー達と合流し野盗に会いに向かった。
「この道って封鎖されてんだろ?何でそんな道に野盗が居付いてるんだ?獲物いねえだろ」
道が封鎖されてちゃ、商人も旅人も通らねえ。来るのは魔物目的の組合員ぐらいだろ?流石に野盗も組合員を狙わねえだろ。
「封鎖されているのは街道だけですから、道を外れて強引に通る連中も多いんですよ。今や国中を騒がすコーバスですから、一獲千金の夢でも見てるんでしょうね」
『蜂蟻撤退』のリーダー、ウトリが俺の疑問に答えてくれた。こいつらは今回3級昇格試験の一つ『野盗殺し』の試験も兼ねている。そのメンバーで唯一の3級ミルシーは、今回可能な限り手を出さない事になっている。で、俺やペコー達はその試験官だ。試験官って言っても、野盗生け捕りにして、こいつらが野盗殺せるか見るだけなんだけどな。
「当然、そんな連中は単独、多くても少数で行動してる。護衛なんて雇えないから、野盗にとっちゃ、いい獲物だ」
今度は隣を歩くペコーが険しい顔で答えてくれた。何でこいつこんな顔してんの?
「どうした?うんこでも漏れそうか?」
「そんな訳ねえだろ。アウグと一緒にするな。・・・何かずっと見られている気配がすんだよ。・・・いや、素人臭い奴に横から見られているのは分かっているが、もう一つ後ろから気配がするんだよ、ただ確信は持てねえから、そいつが余計に気持ち悪い」
「マジで?俺どっちも全然分かんねえ」
「ベイルは何でそれでしぶとく生き残ってんだろうな。まあ、俺の勘違いなら別にいいんだが、これが勘違いじゃなかったら、後ろのは相当強い奴だ。何で素人臭い奴と別々で見張っているか分かんねえけど、どっちにしても野盗の可能性が高い。戦う時は注意しろよ」
そんな奴がいれば結構楽しめそうじゃねえか。まあ、今からやる野盗いじめも楽しいんだけどな。
「しかし、いねえな」
封鎖された街道を結構な時間歩いているが、野盗が出る気配が一向にない。このままじゃ、隣領の境界に着いちまうぞ。あそこは今、関所みたいになって騎士が守っているらしいから近づきたくねえんだよ。そう、騎士なんだよ、ティッチ達みたいな平民の兵士じゃねえ。騎士爵とか準男爵とか貴族の中で底辺と言っても爵位を持っている貴族だ。
出来ればそこまで近寄りたくねえ。ペコーも絡まれると面倒だから、そこまで行かないって言ってたから大丈夫だと思うが・・・・本当に大丈夫か?
「ここから森に入るぞ。聞いた話じゃ鐘半分ぐらい奥に進んだ所で襲われたそうだ」
ようやくペコーが動いてくれた。このまま進むんじゃないかと、マジでちょっと焦ったぞ。
聞いた話ってのは、野盗に襲われて身ぐるみ剝がされたけど、命だけは助かった商人が少ないながらもいるらしい。そいつらから今回、野盗が俺らを名指しで指名しているって情報があってペコーに話がいったそうだ。まあ、助かった商人ってのも俺らをこうやって呼び出す為だけに利用されたんだろう。
「・・・・いたぞ。作戦通りにちゃんとやれよ」
本当にペコーが言った通り鐘半分ぐらい奥に行くと、大勢の野盗が俺達を待ち構えていた。
・・・・馬鹿じゃねえの?少しは隠れて奇襲とかねえの・・・・無いらしい。マジでこいつらずっと待ってただけ?・・・なんだろう・・・どこかの連中にも同じ事思った記憶がある。
「へへへ。流石のてめえらもこの数に声も出ねえか?」
「まさか、挑発したらノコノコやってくるとは思わなかったぜ」
「お前らの動きは見張っていたから筒抜けだったぜ」
「てめえら、絶対許せねえからな」
俺らが近づいていくと、前に出て元気に叫んでいるのがいるが、多分あれが野盗落ちして俺達に恨み持っている奴らだな。人数は・・・・『蜂蟻撤退』と同じだ、ちょうどいい。
「おい、ベイル、あいつら生け捕りだ。他はどうでもいい」
「はいよ」
ペコーも俺と同じ事を考えたんだろう、俺に指示してくるので、返事を返しながら『絶無名』を野盗に向かって投げつける。ペコー達も同じだ。そして俺達よりワンテンポ遅れて『蜂蟻撤退』も投げナイフを投げる。
これは事前に決めていた作戦だ。俺はペコー達の動きに合わせる事が出来るが、『蜂蟻撤退』は無理だとペコーは判断した。逆に無理して合わせようとして、先走られても困るから、俺らが投げたの見てから投げるように指示を出していたんだ。
当然不意打ちで投げた俺らのナイフを野盗如きが躱せるはずもなく、的確に急所に刺さり、悲鳴をあげる。で、その悲鳴に意識を向けた野盗にワンテンポ遅れた『蜂蟻撤退』のナイフが突き刺さる。・・・・ちょっと狙いが甘くて、躱されたのもあったが、上出来だ。
この先制攻撃だけで、大体40人以上いた野盗を30人ぐらいまで減らせた。作戦成功だ。
ただなあ・・・・
・・・・俺以外『絶無名』使っている奴がいねえ。みんな普通の投げナイフだ・・・。
「てめえら!卑怯だろ!」
「クソが!汚ねえぞ」
本当にこいつらは誰を相手にしてんのか分かってんのか?俺らは勝つ為なら何でもありの組合員様だぜ。下手な野盗よりも汚ねえ集団だ。
呑気に叫んでいる奴にペコーの仲間の盾使いが盾でぶん殴って沈黙させる。他の一人は弓使いに足を撃ち抜かれて戦闘不能だ。ペコーもいつの間にか距離を詰めて両足を斬り落としてやがる。
俺?俺は手加減面倒くせえから、気にしなくてもいい連中だ。誰かの投げナイフで目を潰された野盗に距離を詰め、頭をぶん殴る。一匹目。
「ハハハ!!おらあ!」
頭が潰れ、力なく倒れ込もうとする野盗を捕まえると、近くの剣を持った野盗にぶん投げて、一緒に倒れ込んだ所を、頭を叩き潰して終わらせる。二匹目。
次はそいつの持っていた剣を、近くの奴に投げると腹に突き刺さり、絶叫をあげる。そこに走り込んで突き刺さった剣の柄を思い切り蹴り上げて3匹目。
「ベイル!待て!止まれ!!」
4匹目を狙おうとしたら、ペコーから待てがかかった。ペコーの方は生け捕り予定の連中を既に地面に転がし無力化している。
「ああ?何だよ?良い所なんだから止めるなよ」
「お前が張り切ってどうすんだ。『蜂蟻撤退』にもやらせろよ」
「『蜂蟻撤退』は生け捕りの奴らだろ?」
「それは殺せなかった奴がいた場合の保険だ。今回は試験官の依頼もあるから、あんまりはしゃぐな。もっとペースを落とせ」
「・・・・ったく、面倒くせえなあ」
そうは言っても今回の依頼の頭はペコーだから素直に従うぜ。じゃねえと組合長からゲンコツ飛んでくるからな。
「おらあ!クソ野盗が!かかってこい。遊んでやるよ!」
「な、な、何なんだよ、てめえら。何でそんな馬鹿みたいに強いんだ」
俺が挑発すると、へっぴり腰で情けねえ事を言いながら、1人の野盗が斬りかかってきた。
「俺らは日々命がけの戦いしてんだ。お前らみたいに抵抗しない弱い相手ばっかり狙ってねえんだ。強いのは当たり前だろ」
野盗はサビ付いた剣でへっぴり腰で何度も攻撃してくるが、こん棒で軽く弾き返しながら、周囲の状況を見渡す。
ペコー達も暇そうに野盗の攻撃を弾いて遊んでいるのが目に入る。ただ、仲間の弓使いだけは、逃げ出そうとする野盗を射る事に忙しそうだ。
『蜂蟻撤退』もまあ、普通に戦えている。ウトリやケーレは普通に野盗殺しているから2人は試験合格だな。
「クソ!クソ!何で!こんなに攻撃してるのに当たらねえんだ!」
「だから、お前らが弱いからだって。ほい!」
俺が相手している野盗が我武者羅に攻撃してくるが、俺はこん棒で剣を軽く跳ね上げて、がら空きの腹にこん棒を叩き込む。
「グハッ!!!」
腹を押さえて蹲った頭にこん棒を振り下ろして4匹目。次は・・・・あれ?もう終わり?残った野盗は誰かが相手している・・・余った奴いねえ。
「何だよ、もう終わりか。もうちょっと楽しませろよ」
「クソが、ハァ、ハァ。てめえら絶対に許せねえ」
お!元気な声が聞こえるぞ。・・・って生け捕りの奴か。手首から先が斬り落とされて痛いだろうに、よくそんな元気だな。
元気そうな奴に近づいて行って、声をかける。
「てめえらのご指名通り遊びにきてやったぜ、楽しめたか?」
「何も楽しくねえよ。最悪の気分だ」
「ハハハ、指名する相手間違えたな。次・・・はねえけど、残り少ない寿命でしっかり反省しろ」
そもそもこいつらが俺達を呼ばなきゃ来る事も無かったんだ。それに倍程度の野盗の数、俺らが苦戦する訳がねえ。俺達の実力を見誤ったな。こうなる前に大人しく他所の街に移籍して組合員続けてれば良かったのにな。
「おーい。お前らも終わったか?ベイル、そいつはまだ殺すなよ」
軽く話し込んでいると、ペコー達も終わったようで近づいてきた。
「試験用だから殺さねえよ。そんでこいつらどうするんだ?俺から見たらウトリとケーレは合格だから、こいつら必要ねえぞ」
「こいつらは野盗と言っても元同じ街の組合員だった奴らだ。さっきの野盗と同じように殺せるかな?ウトリまずはお前が最初だ」
うわー。ペコー性格悪いなあ。・・・・ってあれ?ウトリ普通に殺したな。
何か色々罵詈雑言を吐かれても、ウトリは気にすることなく首を斬りつけて試験を終えた。そしてケーレ達も次々と試験を終わらせていく。ただ、やっぱり弓使いと魔法使いだけは少し時間がかかったな。
・・・・それでも、こいつら結構優秀だ。3級にあがるのもすぐかもしれない。
「終わったな。それじゃあ、お待ちかねのこいつらの拠点漁りに行くぞ」
気落ちしている奴がいるが、そんな事気にせずペコーが次の指示を出す。これよ、これ。野盗討伐はこっからがギャンブルみたいで楽しいんだよ。こいつらは貯め込んでいるのか、いないのか。
「・・・・って、ペコー!こいつらの巣の場所知ってんのか?」
俺はすっかり聞くの忘れてた。
「何匹かに確認したから、大丈夫だ。このまま奥に行くと高い岸壁にぶち当たるからそこから右に行けばいいらしい」
流石ペコー。ちゃっかり聞き出していたか。これ忘れると、痕跡探しながら彷徨う事になって、かなり面倒になるから助かったぜ。
で、結論から言うと、まあ普通だった。
「もっと貯め込んで欲しかったけど、普通だなあ」
「そうは言っても街道封鎖されててこれだけ貯め込んでたんだ。俺は当たりだと思うぜ」
ああ、そうか、そこを考慮すれば確かに貯め込んでるな。
「そう考えると、結構な数の商人や旅人があいつらに殺されている事になるんですが・・・」
「多分そうだろう。まあ、そんだけのクソ野郎達だって思えば、ウトリ達も気が楽だろ」
デカい声で笑いながらウトリの背中をバシバシ叩くペコー。・・・・ウトリが痛そうにしているからやめてやれ。
■
「ロッシュ、どうだった?」
「特におかしな所は無かったよ。まあ相手が野盗程度じゃベイルも『身体強化』使う事もないでしょ」
「そうか。そうなると、こっちの暗号を先に考えた方がいいよな」
「王都のエフィルからの手紙か・・・中身は明らかに暗号だが、普通こういうのは隠すもんだ。見せびらかす意味が分からん」
「俺も分かんねえよ!ベイルはマジで何考えてんだか・・・ただ、これでベイルとエフィルが何か人に言えないやり取りをしている事が分かった」
「これでエフィルの方から『令嬢』か『ドルーフおじさん』に繋がる証拠が出てくればいいんだけどなー」
「それは王都の爺さんに任せよう。マーティンなら明日には王都に着くだろ」
「それで?今日、組合でその暗号解読で騒いでいたが、結局どうなった?」
「アウグやゲレロが頭悩ませていたが、結局分からなくてトートーに聞きに行ったんだ。そしたら『『げるな』を残し『!』は路地』』って言われた。そこからまーたみんなで考えてたんだが、一応有力な候補が『げるな』って文字を入れ替えた名前の街か村があって、そこは四角い塀で囲われているんだ。そんで『!』は言った通り路地を現しているんじゃねえかって話だ。で、暗号には左上の角に沿うように文字が書かれていただろ。そうすると、その街の左から二番目、上から3番目の路地が交差する場所に何かあるんじゃねえかって話になった。今は各自その『げるな』に該当する街か村を調べたり、聞き込みしたりしている状況だ」
「『げるな』ねえ。僕は聞いた事ないなー」
「俺もねえな」
「俺らも聞いた事なかったから、別の国だと当たりをつけて今はユルビルに調べてもらっている」
「なんかここに来て、どんどん手掛かりっぽいのが出てきてるね。もしかして既に何か極秘作戦の準備が終わって、バレても問題ない所まで来てるのかなあ?そうなると僕ら完全に出し抜かれた事になるんだよなー」
「心配しても仕方ねえぜリーダー。逆に何かの陽動かもしれねえぜ」
「もしお前らの言う通り、ベイルがそこまで考えて行動してたら・・・・考えてるのか?あいつが?何も考えてねえんじゃねえか?」
「ジークはいい加減ベイルの評価を改めた方がいい。今まで実力を隠し馬鹿の振りして僕らを欺いてたんだ。あいつ相当頭が切れるよ」
「うーん。・・・・・・そうかあ?」
「ジークは現役離れてカンが鈍ってるんじゃない?」
「ああ?ロッシュ!てめえ喧嘩売ってんのか?」
「組合長落ち着け。リーダーも煽るなって。取り合えず俺がベイル見張るから、リーダーは街を見張ってくれ。これが陽動だったら誰かが何かしら動くはずだ。組合長は情報集め。それでいいな?」
「異論はないぜ」
「取り合えずマーティンが王都から戻ってくるまではそれでいこう」