軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第四十一話 四つの剣

俺はパッチワークと刃をぶつけ合う。

だが、力では圧倒的に相手に分があるため、かなり圧され気味であった。

パッチワークはただでさえ巨体故のリーチがある上に、腕が三本もある。

おまけに下手に攻めれば、即座に飛んでくる〈デスソード〉の餌食にされる。

攻撃を往なし続けるのが限界だった。

パッチワークはステータスも恵まれているが、この三本の腕と〈デスソード〉が凶悪すぎる。

本当にレベル以上に厄介な相手だ。

つくづくまともに相手をしていい魔物ではないと痛感する。

「ルーチェ! 常に相手の右側に入り込むように動け! 三本目の腕が左側についているから、左に入ったら猛攻を受けることになる! 正面も危険だ! 常に一メートル以上の距離を保って、同じ位置に一秒以上留まるな! 魔法の刃の追撃を避けきれなくなる! 自分から仕掛けずに防御と回避に徹して、攻撃はケルトとメアベルに任せろ! もし魔法陣の光が見えたら〈デスソード〉が来る! 正確に躱すのは難しいからとにかく距離を取れ!」

俺はパッチワークと斬り合いながら、大声でルーチェへと指示を出す。

パッチワーク相手に無策で攻めるのはかなり厳しい。

連撃を避け損ねた後に〈デスソード〉の直撃を受ければ、ルーチェのHPではまず耐えられない。

攻撃は捨てて回避に専念すべきだ。

ルーチェが自分から仕掛けていいのは、パッチワークの攻撃対象がケルトかメアベルに向いて相手の背中を取れたときだけだ。

「なるべく壁近くで〈曲芸歩術〉を駆使しろ! 壁の近くだとパッチワークも剣を思うように振り回せないから、斬撃を受けてもダメージを抑えられる! メアベルの白魔法でカバーが利くはずだ!」

「は、はい! アタシ、とにかく全力でやってみます!」

さすがのケルトも、見捨てて逃げようとした上で助けられた手前、今は逃げずに加勢してくれているようだった。

跳び回りながら矢を放ち、パッチワークの意識がルーチェに向きすぎないようにしてくれている。

メアベルはルーチェの回復を第一に動きながら、余裕ができれば〈アイス〉の魔法スキルで攻撃している。

かなり時間の掛かりそうな戦い方だが、あれでいい。

パッチワークが恐れられているのは、高ステータスからの三本の腕による連撃と、大ダメージ技の〈デスソード〉を持っているからだ。

だが、その反面、足は遅いし、遠距離攻撃のスキルは持っていない。

パッチワークは、逃げに徹する相手を追い詰める能力は低いのだ。

パッチワークを相手取る際には、とにかく丁寧に戦って、パーティーメンバーの事故死を避けるのが重要だ。

ダメージを与えようと焦れば〈デスソード〉の餌食になる。

ルーチェ達の方は安定して戦えているといえる。

問題は俺の方だった。

パッチワークの気を逸らしてくれる仲間もいないし、重騎士は足が遅いため逃げ回ることもできない。

常に距離を取ったり、相手の右側を維持する余裕もない。

正面からパッチワークの連撃を往なし続けるしかない。

「しかし……これはなかなか神経を使うな」

パッチワークが〈デスソード〉を持っているという事実が大きい。

〈デスソード〉が発動した際に対応できない位置へ動くわけにはいかないので、こちらの行動が大幅に制限される。

パッチワークはこっちが攻められないでいるのをいいことに、どんどん攻撃の激しさが増してきている。

俺のステータスでも〈ミスリルの剣〉であればそれなりのダメージは通る。

パッチワークの方がレベルが高いため〈番狂わせ〉による攻撃力上昇効果もある。

ここで一撃小突いて、相手の勢いを落としておきたい。

一方的な攻撃に出られているのは苦しいが、それだけ相手の守りが疎かになっているということでもある。

必ずどこかに隙は出てくる。

「〈パリィ〉!」

俺はパッチワークの剣を弾き、もう一本の腕が振り下ろしていた別の刃の軌道を防ぐ。

相手の動きに迷いが生じた隙に右側へと跳び、剣を振るった。

パッチワークの腐肉が抉れ、黒い体液が舞う。

続けて二振り目を振るったとき、視界に光が入った。

即座に俺は背後へ跳び、盾を構える。

〈デスソード〉の紫の光が盾に当たり、衝撃で俺は弾き飛ばされた。

「うぐっ!」

盾で防ぎきれなかったダメージが入ってくる。

〈デスソード〉は発動が速く、術者の体勢に関係なく狙った位置に刃を走らせられるため、防御としての性能も高い。

本当に凶悪なスキルだ。

体勢を崩した俺へと、パッチワークが突進してくる。

俺にダメージが入ったのを見て、勝利を確信して一気に畳み掛けに来ているようだ。

だが、勝ちを確信したのは俺もまた同じことだった。

パッチワークを倒す条件は順調に積み上がっている。

「あまり時間を掛けていられる余裕もないんでな」

俺は向かってくるパッチワークを正面から迎え撃つ。

ひと振り目の剣を弾き、ふた振り目の剣を〈パリィ〉で受け流す。

三振り目の剣は横へと跳んで躱した。

そこで俺は、ぐっと立ち止まった。

隙を見せた俺に対し、パッチワークは素早く〈デスソード〉を放つ。

紫の光の刃が俺に迫る。

盾で防いだが、衝撃を殺し切れずに身体にダメージが走る。

俺はついに耐え切れず、盾を手放してしまった。

〈狂鬼の盾〉が床を転がっていく。

「……これでようやく、完全に条件が整った」

パッチワークを倒すために、必要な条件がいくつかあった。

一つ目は〈死線の暴竜〉のためにHPを調整すること……そしてもう一つが、パッチワークのHPを減らしつつ、MPを使い切らせることである。

〈デスソード〉は強力なスキルである。

発動までの時間が極端に短く、威力も恐ろしく高い。

パッチワークの腕の数と合わさり、一対一で正攻法で隙を突くのは不可能に近い。

ただ、その分、もちろんちゃんと弱点がある。

――――――――――――――――――――

魔物:パッチワーク

Lv :67

HP :189/228

MP :12/66

――――――――――――――――――――

〈デスソード〉はMPの消耗量が【18】なのだ。

パッチワークのMPはそう高くないため、三回までしか使えない。

このためにわざわざ俺は適度に隙を見せ、〈デスソード〉を使わせつつHP管理を行ったのだ。

加えてパッチワークは、HPを三分の一以下に減れば、攻撃的な性質が薄れ、堅実的な戦い方へと切り替えてくる。

そうなれば長期戦を強いられる。

パッチワークのHPを〈死線の暴竜〉で一気に倒せる範囲に調整しつつ、〈デスソード〉の発動に必要なMPを使い切らせる。

俺が一人でパッチワークを突破するために必要な手順であった。

「〈ライフシールド〉!」

俺の生命力が光の壁となり、俺の全身を覆っていく。

――――――――――――――――――――

〈ライフシールド〉【通常スキル】

HPを最大値の20%支払って発動する。

支払ったHPと同じ耐久値を持つシールドで全身を覆う。

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そしてこれによって、もう一つのスキルが発動する。

――――――――――――――――――――

〈死線の暴竜〉【特性スキル】

残りHPが20%以下の場合、攻撃力・素早さを100%上昇させる。

――――――――――――――――――――

赤の光が、俺の身体を覆っていく。

力が漲ってくる。

「決着を付けるぞ!」

地面を蹴って素早く駆ける。

今のパッチワークのHPであれば、二回攻撃を当てれば倒し切れる。

俺の剣と、パッチワークの剣がぶつかる。

だが、動きは今や、俺の方が速い。

力負けもしない。

俺は三本の剣を捌き切った。

パッチワークの身体が強張る。

頭部がないため表情はわからないが、動きの変わった俺に気圧されているのが伝わった。

「今のお前に、四本目の剣はないぞ!」

横ざまに刃の一閃が駆ける。

パッチワークの胸部が抉れ、黒い体液が噴き出す。

俺は即座に、パッチワークの右へと駆ける。

パッチワークは、すぐさま俺を追って強引に剣を振るう。

俺は避けずに、敢えて足を止めてそれを受け止めた。

〈ライフシールド〉が砕け散り、その衝撃で俺は飛ばされる。

その先はパッチワークの背後であった。

あの体勢から無理に俺を斬ろうとすれば、この角度になるのはわかっていた。

〈ライフシールド〉を捨てずに堅実に隙を探る手もあったが、それよりも今は時間が惜しかった。

「これで終わりだ!」

赤い輝きを放つ剣を振るう。

パッチワークの手から三つの剣が離れ、ついに巨体が膝を突いた。

【経験値を4349取得しました。】

【レベルが64から66へと上がりました。】

【スキルポイントを2取得しました。】

厄介な魔物ではあったが、どうにか一人で突破できた。