軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二十一話 勧誘

その後も一通り今回のデスアームドの事件についてギルド長のハレインと話し合ったのだが、具体的な情報は得られなかった。

結局、なぜデスアームドへの存在進化の条件が満たされていたのかは謎のままだ。

この事件に黒幕がいるのか、それとも〈マジックワールド〉にはなかった自然現象のようなものなのか、それさえわからず仕舞いである。

ひとまず大貴族であるハウルロッド侯爵家が調査に出てくれるようなので、一冒険者でしかない俺がこれ以上考えても仕方ないことではあるのだが……。

「では、俺達はこれで失礼させていただきます。ギルド長殿、話を聞いてくださり、ありがとうございました」

「まあ待て。そちの実力は充分にわかった。余計な嘘を吐いているとも思えん。本来であれば、C級以上の昇格には実力以上に実績や活動内容が重要視されてくるのだが……特例として、この場で二人のB級冒険者への昇級を認めよう」

「B級冒険者に?」

D級冒険者から、飛び級でのB級冒険者への昇級。

ありがたい話だ。

本来、多少結果を出したとしても、黙々と〈 夢の穴(ダンジョン) 〉に潜っているだけでは昇級はできない。

冒険者の階級は、この世界では身分の保証にもなる。

それに隠しパラメーターの名誉点にも関係する上に、こちらはスキルツリーの割り振り上限にもかかわってくる。

いつかギルドの階級のために細かい依頼をいくつも受ける必要があると考えていたが、しばらくそちらは考えなくてもよさそうだ。

「ハッ、ハレイン様! いいんですか!? そんな気軽に特例を出してしまって……! せめて、もう少しお考えになられた方が……!」

受付嬢のマルチダが慌てて口を挟む。

ハレインはその言葉を鼻で笑った。

「構いはせん。私はこのラコリナのギルド長に、侯爵家の当主様から直々に任命された身だ。他都市のギルドも、私の判断に異を唱えるような者はおらんよ」

「ありがたい話ではありますが……見返りに何か、俺達に求めるつもりでは?」

ハレインが責任を負ってまで、特例的に俺達を昇級させてくれる理由が全くわからない。

「何を言う。優秀な冒険者を相応の地位につけるのは当然の職務だ。これからも冒険者として活動してくれればそれでいい。それがこのギルドと……そしてこの国のためになるのだからな」

ハレインはあっさりとそう言い切った。

ハウルロッド侯爵家にあまりいい印象はなかったのだが、少なくとも彼女からは、真摯に自身の役目を全うしたいという気概を感じた。

「か、格好いい……!」

ルーチェも頬を仄かに赤らめ、ハレインを見つめている。

「……でだ、これとその話とは全く関係がないんだが……ウチのギルドで職員側の冒険者を増員したいと考えていてな。実力主義のつもりではあるが、どうしてもギルドの面子というものがある。B級以上の冒険者からの選出になるだろう。収入は安定するし、かなりの額を出せる自信もある。まず危険な仕事を強要するようなこともないのだが……」

「……そっちが本音なんですね」

ルーチェががっくりしたように肩を落とし、ハレインをジト目で見る。

「どうしますか、エルマさん? アタシはエルマさんの判断にお任せしますけれど……」

「俺は少し、立場的にな……。無論、ルーチェが行きたいなら止めはしないが」

追い出された身とはいえ、元エドヴァン伯爵家の人間である。

実家への義理立てというわけでもないのだが、ハウルロッド侯爵家の下につく……という気にはなれない。

「でしたら、アタシもお断りでお願いします」

ルーチェがハレインへと頭を下げる。

「む、むぅ……条件も聞かずに、あっさりと振られてしまうとは。ラコリナのギルド付きになることを目標とする冒険者も多いというのに。私はそちを高く評価している。同レベル帯の冒険者の、倍以上の高給は約束するのだが……」

エドヴァン伯爵家のことがなくとも、活動がギルドの指針に縛られるのはごめんである。

まだまだ色々と試しておきたいことや、行ってみたい〈 夢の穴(ダンジョン) 〉、手に入れておきたいアイテムがあるのだ。

それに報酬にしても……ルーチェのアイテムドロップ並みの額を、ギルド職員の給与で用意できるとは思えない。

「昇級の話も辞退させていただければ」

「はぁ、仕方あるまい。是が非でもそちは手許に欲しかったのだが……これ以上交渉しても意味はなさそうだな。これとその話とは全く関係はないと前置きしただろう。先の言葉も、偽らざる私の本音だ。借りを作ったと気負いする必要はない」

「そういうことであれば、ありがたく受け取っておきます」

「…………ただ、ただ、もし気が変われば、そのときはまたいつでも相談に来てくれるといい。私は少々忙しい身ではあるのだが、そちらであれば、最優先で時間を作ろう」

み、未練がましい……。

本当に素直に昇級を受けて大丈夫なのだろうかと少し不安にはなったが、ありがたい話なのは間違いない。

俺とルーチェはB級冒険者へと昇級することになった。

B級はこの冒険者の都ラコリナでもかなりの上位に入るはずだ。

A級冒険者もいないわけではないだろうが、恐らくは二人か三人程度だろう。