軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

十四章*天才魔導師の愛妻(2)

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あれから、シオン様の提言どおり、聖なる花園の聖花が検証され、続いていた凶事の現況はエリカの神聖力の濁りだと証明された。

エリカは自主的に神殿に謹慎し最も厳しい修行を受けることにしたらしい。

ローレンス殿下は王宮の自室で謹慎し、私への慰謝料をどのように返済するか、考えさせられているそうだ。時間がかかっても弁済するとローレンス殿下直筆の手紙が送られてきた。

(まぁ、反省してるなら慰謝料はいらないんだけどね)

そう思いつつ、当分のあいだは黙っているつもりだ。

(すぐに許して、またシオン様に迷惑をかけないように緊張感を持ってもらわなくちゃ)

避雷針については、シオン様が再現実験を開催し、その有用性が認められ、王国の重要建築物に設置されることが決まった。

そうして、今日は挙式当日である。

ここは王宮神殿の控えの間である。破婚を一方的に突きつけた謝罪として、結婚式を取り仕切らせてほしいと神殿側から申し出てくれたのだ。

もちろん、私は快諾した。

(だって、推しのウエディング写真なら、王宮神殿が一番映えるもの~)

王宮神殿は原作でエリカとローレンス殿下が挙式した場所だ。さすが王宮神殿と言うだけあり、写真撮影にぴったりの場所がたくさんあるのだ。

撮るべき場所とシーンはリストアップしてカメラマンに渡してある。

(ループス商会系列の写真店にシオン様の撮影を頼んであるから、楽しみだわ)

しかし、問題点もある。

「私が花嫁だなんて……、申し訳なさ過ぎる……」

落ち込む私を見て、カンナが笑った。カンナには結婚式のプロデュースを任せており、今は私の控え室で準備を手伝っているのだ。

「そんなことありません。ルピナ様は誰よりもお美しいですよ」

私は鏡に映る自分を見る。そう。ルピナは美しい。シオン様の隣に並んでもなんの遜色もないだろう。しかし……。

(中身が私なのよ……。いたたまれないもうしわけないというか、私が私を許せない!)

だからできるだけ記憶や記録に残りたくはない。

「今日の私はシオン様の引き立て役に徹するの! だから本当は黒子のごとく黒い衣装にしたかったのに……」

「黒ドレスを着たら、誰よりも目立ってしまいます」

カンナが突っ込む。

「そう思ったから、一番シンプルなドレスにしたからいいじゃない」

「とてもお似合いです」

そう言われても私はため息が漏れてしまう。

「本日の主役なんですからしゃっきりしてください」

「今日の主役はシオン様よ」

「普通は花嫁が主役なんです!」

ピシャリ、カンナに返される。

そのとき部屋のドアがノックされた。

「準備はできたか? ルピナ」

聞こえてきたのは我が推しシオン様の声である。

何度聞いても、いつ聞いても、至高の声色である。

「は、はぃぃ!!」

ドアを開けて入ってきたシオン様は、いつにましてきらきらしい。

純白のタキシードに、カラスの濡れ羽色の髪がサラリと落ちている。中のベストは黒に近い紺色で、首元のスカーフ風のタイはベストより薄い紺色だ。その中央にセレスタイト公爵家の象徴である空色に輝く天青石が輝きを放っている。

天使のような目映さに、私はクラリと眩暈した。

シオン様は私を見ると大きく目を見開き、息を止めた。

「や、やっぱり嫌ですよね? 式、やめましょうか? それとも女優を代理で――」

私が慌てて提案すると、シオン様は大きく息を吐き感嘆した。

「美しい……」

麗しい姿に甘い声、この世のものとは思えぬ光景に私は思わず呻く。

「……こ、ここは天界かっ!」

シオン様は苦笑いしつつ、私に手を差し伸べた。

「準備ができたなら行こう。ルピナ」

優しく誘うシオン様に、私は気圧され戸惑う。

「やっぱり、こんなに美しい天使様の横に私なんぞが並んで良いとは思えない……」

心の声が漏れるとシオン様は肩をすくめた。

「そんなことかと思った」

そう言うと、パチンと指を鳴らす。

すると、ユニコーンが鼻先でドアを開け、控え室に入ってくると私の前に跪いた。

「ユニコーン……?」

鼻を寄せるユニコーンを私は撫でる。

「君のことが心配らしかったから連れてきた」

「なんで、連れて……」

私が不思議に思っていると、シオン様は私を抱き上げユニコーンの背に横向きに乗せる。

そして、シオン様は私の後ろにまたがった。

ユニコーンは私たちを乗せるとスクッと立ち上がった。

「え? なに? なにごと!?」

「では、行くぞ。ユニコーン」

シオン様が手綱を握ると、ユニコーンはご機嫌で歩き出した。

「行く? どこへ?」

「神殿の大広間に決まっているだろう」

「え? え?」

動揺する私だが、ドレス姿ではユニコーンから飛び降りることもできない。そもそも、手綱を握るシオン様の手に囲われて、逃げることなど無理なのだ。

「攫われた日と逆転だな」

シオン様は愉快そうに笑う。

「人生の晴れ舞台、隣に立つ人間が本当に私でいいんですか?」

「もちろんだ。君しかいない」

「……ええ……、その、まぁ……、まだ信じられません……」

しどろもどろに答える私に、シオン様は好戦的な目を私に向けた。

「では、信じてもらえるよう努力せねばいけないな」

「努力? なんのですか?」

「私がどれほどルピナを想っているかわかってもらえるように」

「は? はぃ?」

私は意味がわからずに、パニック状態だ。

混乱極まる私の顔を覗き込み、シオン様は妖艶に宣戦布告した。

「覚悟をするんだな、ルピナ」

甘く、深く色っぽくい声に私はブルリと震えた。

(格好良すぎるでしょう……!!)

私は顔を覆って天を仰ぎワナワナと震える。

「神よ……! 私の推しは今日も麗しい……!!」

感嘆する私の耳元に、シオン様が囁いた。

「推しではない。夫だ」

「……!」

「そして、ルピナは私の愛妻だ」

「……!!」

私は感極まった。

(なんて、なんて、なんてことを言ってくれるの!)

涙目になり、キッとシオン様を睨みつける。

「そんなこと言うなら、これからもずっと絶対に幸せにしてやるんだから!」

私も宣戦布告する。

「敵わないな」

シオン様は晴れ晴れと笑った。

目の前には神殿の扉。

扉の向こうから、パイプオルガンの音色が聞こえてくる。

ユニコーンは私たちを祝福するかのごとく、高らかにいなないた。