軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第58話

テンジは周囲を警戒つつ、視線の先には常に閻魔の書を浮遊させてレベルアップによる変化を隈なく確認していた。

変化したページはかなり多く、正直今すぐにでもスマホのメモ帳に記録しておきたかった。

しかし、二人が近くにいることもあり今は控えることにしていた。

(まぁ、こんなものかな? ……たった1レベルの変化だけど、結構変わったなぁ)

テンジは頭の中で変化について整理しながらそんなことを考えていた。

今回起きた変化はこの通りである。

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【名 前】 天城典二

【年 齢】 16

【レベル】 1/100

【経験値】 116/5000

【H P】 1028(1012+16)

【M P】 1016(1000+16)

【攻撃力】 1096(1080+16)

【防御力】 1043(1027+16)

【速 さ】 1024(1008+16)

【知 力】 1043(1027+16)

【幸 運】 1045(1029+16)

【固 有】 小物浮遊(Lv.6/10)

【経験値】 4/45

【天 職】 獄獣召喚(Lv.1/100)

【スキル】 閻魔の書

【経験値】 116/5000

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ステータスのページでは、大きく分けて三つの変化があった。

・天職と種族? のレベルが0から1へと上がった。

・要求経験値が1000から5000へ、5倍となった。

・ステータス値が1000~1005の間で上昇していた。内訳は、HP:1002、MP:1000、攻撃力:1000、防御力:1003、速さ:1001、知力:1005、幸運:1000であった。

(要求経験値が一気に五倍も増えちゃったなぁ……。やっぱり地獄に関する能力だから、レベルが上がるごとに要求も高くなっていくのかな?)

気の遠くなるような要求数値に、テンジは思わず弱音を吐いていた。

それでも気を取り直して、次へ変化を確認する。

今度は魔鉱石変換のページだ。

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【魔鉱石変換】

ポイント: 338

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ここでは四等級モンスターから得られるポイントについて判明した。

おおよそ10~16の間でポイントに変換できたのだ。前から持っていた42ポイントに、今回の魔鉱石変換で296も増えた。

(案外、ポイントは手に入りやすそうで良かった。これからはポイントを惜しまなくても良さそうだな)

そう考えながらも、次の変化点を確認する。

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【地獄領域】

赤鬼種: 2/5

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地獄領域の分母が2から5へと変化したのだ。

単純に考えても、あと三体の小鬼を使役することができるようになるはずだ。さらに攻撃力に付加値75が追加できることにもなる。

今は人目があるのでできないが、あとで検証してみようと意気込むテンジであった。

そうして次のページへと捲っていく。

――――――――――――――――

【実行可能な地獄クエスト】

クエスト名:

『赤鬼からの挑戦状~Level.1~』

《達成条件その1》

・スクワット5000回

《達成条件その2》

・シャドーボクシング10時間

《クリア報酬》

・五等級武器「赤鬼ノ短剣」

・五等級装備品「赤鬼バングル」

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(……来ちゃったよ、あの地獄クエストが)

テンジは内心びくびくしながらこのページを観察していた。

最初にやった『赤鬼との出会い』とは少し違う内容のクエストとなっている。

クエスト名が『赤鬼からの挑戦状~Level.1~』となっており、達成条件も二つに減っている。ただし、要求回数や時間が約五倍に増えているので、きついことは確かだろう。

それでも思わずクエストに手が伸びてしまいそうなほどに、クエスト報酬が魅力的なのだ。

(次は短剣にバングル……バングルってなんだっけ?)

バングルとは、要するに腕輪である。

それに気が付いたテンジは、赤鬼バングルも赤鬼リングと似たような性能があるのではないかと推測する。

たかが25、されど25も攻撃力が上がるのは嬉しいことである。

塵も積もれば山となる、テンジはこの言葉が好きだった。

小さな努力を積み重ねれば、いずれ大きな結果を生む。そう励まされているような気さえしてくるのだ。

(まぁ、地獄クエストはこの試験が終わって……体も回復したころにやろうかな)

そう決めて、テンジは次の変化したページを確認する。

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【地獄婆の売店】

・体力回復鬼灯(2ポイント)

・精神力回復鬼灯(2ポイント)

・三途の川の天然水(2ポイント)

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地獄婆の売店。

どこか奇妙なネーミングセンスではあるが、その内容には見覚えがあった。

はじめて地獄領域でクエストを進行した時、テンジが回復するのに使用した鬼灯と天然水である。

ただし、買うのに必要なポイントが倍に増えているのが少しネックだ。今はポイントに余裕があるので問題ないが、今後もずっとポイントに余裕があるのかと聞かれると即答はできない。

(一先ずは放置でいいかな? さすがに一気に6ポイントも減るのは後々必要になった時のことを考えると怖いんだよね。必要になったら使ってみることにしよう)

そうしてテンジは閻魔の書をぱたんと閉じた。

他にも変わった点はある。

最後のページには、経験値やレベルアップなんかのログがページ一杯に載っていたりする。

これはどうやら最大で50項目までが載るようで、古い奴から順々に消えていくようだ。

戦闘後にはレベルアップのログが一部無くなっていたので、おそらく確かな推測だろう。

魔鉱石変換や小鬼と武器の召喚をしてもログが残らないので、行動ログとはまた少し違った視点からログが反映されるのだとテンジは考えていた。

今のところ、地獄領域以外で倒したモンスターの経験値とレベルアップ時にログが残ることが判明している。

「――ふぅ」

「どうした? テンジ」

頭を使い過ぎたせいか、思わずため息を吐くと水江に気づかれてしまった。溜息はかなり大きかったようで、少し離れた位置にいた立華でさえ心配そうな顔をしていたのだ。

テンジは慌てながら両手を振って否定する。

「いや、なんでもないよ。ちょっと考え事してただけ」

「そうか。俺で良ければ相談に乗るぞ? 大丈夫か?」

「本当に大丈夫? お姉さんも相談に乗るよ?」

「うん、心配しなくていいよ。些細な家庭のことだから」

テンジは閻魔の書には触れないように、家庭の事情だと言ったのであった。

二人は「家のことなら」とあまり深堀はせずに、再び前方へと視線を向ける。

と、そんな時だった。

「ちょっと待て」

「うん、モンスターだね」

「ですね。この足音は……ニードルマウスでしょうか?」

三人は道の先から聞こえてくる足音を察知し、すぐに武器を構えるのであった。

テンジはすでに赤鬼刀を見せてしまっているので、躊躇なく赤鬼刀を取り出している。

そんな三人の前に、二体のニードルマウスが姿を現した。

青色をした瞳がこちらを見据えながら、勢いを止めることなくそのまま突っ込んでくる。

そこで水江が前に出た。

「少数だ。事前に伝えた通り、一体だけ俺に任せてもらえないか? テンジ」

「もちろん。一体は僕に任せて」

ダンジョンを進み始める前、水江は「少数の場合、俺にチャンスが欲しい」とテンジに言っていたのだ。

今の自分がどれだけニードルマウス相手に戦えるのか、この場で挑戦したいらしい。

本来ならば止めるべきなのだろうが、テンジは自分の強さへの信頼と水江の心の底からのお願いを断れなかったという二重の意味で承諾していた。

残念ながら立華はすでにニードルマウスには勝てないと知ってしまったようで、二人に戦闘は任せると言っていた。

「フュイッ!」

「フュフュイッ!」

テンジは二体を分断するべく、一足先にその場から駆け出す。

瞬時に体中に力を籠め、ステータスの恩恵を最大限解放する。

すると――。

一瞬でニードルマウスの目の前までたどり着き、その個体の頭部を蹴りあげた。

水江が戦いやすいようにするための、盤面整理だ。一対一の状況ができれば、水江も戦いやすくなるだろう。

「フュイッ!?」

ニードルマウスはまるでボールのように壁や床をバウンドしながら、遠くの地面にふにゃりと落下した。

テンジは再び加速し、伏せているニードルマウスの首筋に赤鬼刀をすぅっと突き刺した。

ニードルマウスが鉱石化を始めたことで、テンジはすぐに水江の戦闘へと視線を向けた。

「フュイッ!」

「おらぁ!」

水江が持ち味の身体能力を柔軟に駆使して、ニードルマウスの飛び針攻撃を薄皮一枚で回避した。

何本かは皮や肉を削っているようにも見えたが、水江はお構いなしという顔をしながら、ニードルマウスに接近していく。

「フュイッ!」

「フュッ!」

「フュイッ!」

ニードルマウスは三度の連続攻撃を発射した。

「ここか!」

水江はそれを事前に予測していたのか、それとも待っていたのか。

まるでわかっていたような動きで近くの壁を蹴り上げ、高く跳躍することでその攻撃をすべて回避してしまったのだ。

彼の身体能力は一般人とそう変わらないはずだが、柔軟すぎる体と考えが、ニードルマウスの動きを上回ったのである。

そうして――。

「おらぁ!」

水江は跳躍と重力、連撃剣で上乗せされた強力な一撃を、ニードルマウスの脳天に叩きつけることに成功したのであった。

真っ二つに斬るまではいかないものの、脳をかち割るには十分な威力であった。

「……フュ……ィ」

ニードルマウスはその場に力なく倒れ伏した。

その様子を見て水江は「はぁはぁ」と息を荒げながらも、小さくガッツポーズをした。

「やった! 俺でもニードルマウスに勝てるんだ!」

そのはしゃぎようは年相応の仕草であり、立華とテンジの頬を緩める結果となった。

テンジは閻魔の書に赤鬼刀を収納しながら、てくてくと水江の元へと歩いていく。

「さすがは水江くん。まさかこうもあっさりと倒せるなんて……本当に人間なの?」

テンジは少しからかうような意図も込めて水江に語り掛けた。

しかし、なぜか立華と水江に逆にジト目を向けられる。

「お前が言うな」

「そうですよ、人間辞めているのはテンジくんの方です。そもそもなんで天職を封印されているはずなのに、普通に使えてるんですか? その方がおかしいです! 人間失格です!」

「えー、えっと……ここは水江くんをイジる場面では?」

封印アイテムの等級が低いから、天職が封印されていない。

そうは知りつつも答えられないテンジは、なぜ自分が攻められなきゃいけないのか、と思わず首を傾げるのであった。

そんなテンジを面白そうに、二人は笑った。

† † †

三人はテンジを主戦力に置いて、何度も何度もニードルマウスと戦い続けた。

集団ランダム転移に巻き込まれ、百を優に超える群れに遭遇し、幾重にも渡る会敵、そしてそのたびに深まる彼らの絆。

そうして――。

「……ついに辿り着いたぞ。第二ボスエリアだ」

彼らの前に再びあの扉が現れた。