軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第201話

二体の鬼が立ち並んだそのとき、ちょうどモンスターの再生が完了した。

ばらばらに散らばっていた肉片がようやく一つになり、元の体へと再生できたのだ。いや、元の体というには少し語弊があるだろうか。ところどころ以前の形状を保てていない箇所があった。苦痛のあまり、自分の形状を思い出せなくなっていたのかもしれない。

自然と、モンスターは四足歩行の獣のような姿を成していた。

「ルォォォォォ……」

不意に顔を上げると、圧倒的な二体の鬼がそこにいた。

赤だけではなく、そこには青い鬼が新たに増えていたのだ。

モンスターが最初に見せた仕草は、動揺だった。

しかし、その動揺は自分の現状を知ることで振り払うことができた。

なぜだろうか、奴の前にひれ伏さないで立っていられる自分がいた。

奴の前では頭を上げることすら困難だった先までの状況が嘘だったかのように、モンスターはその四本の足で堂々と立っていられたのだ。

対等に戦えるというだけで、モンスターにとっては十分だった。

反撃ができるか、できないか。

これは小さな変化でもあり、大きな変化でもあった。

「ル゛ル゛ィィィィィィィィィィイイッ!!」

最初に動いたのは、モンスターの方であった。

四本の足を必死に回しながら、激しく涎をぶちまけている。

その様相はまさに、自我を失った獣。

だが、それも馬鹿にできない獣へと進化していた。

今のモンスターには、伊吹童子と互角に戦えるだけのスピードがあった。

「ル゛ル゛ィィィィィィイイッ!!」

けたたましい咆哮をあげながら、まずは青い鬼の方へと近づいていく。

それを見て、伊吹童子はふっと大嶽丸と距離を離した。

「あれだぞ、分かっているな」

「無論だ。久方ぶりだが、問題ない」

二人は短く意思疎通を済ませると、枝分かれしていくように走り出す。

大嶽丸は突っ込んでくるモンスターに対し、正面からぶつかっていくように真っすぐ。伊吹童子はモンスターの背後をとるように、僅かに膨らみながら走っていた。

今のモンスターに二体の鬼を一度に相手取れるような余力はない。

だからこそ、青鬼の誘いに乗るように真っすぐと大嶽丸へと突っ込んでいく。

そして――射程内に入った。

目にも止まらぬ速さの一本の拳が、モンスターへと迫る。

「ル゛ル゛ィィィィィィィィィイッ!」

モンスターはムカデのように足を気味悪く回しながら、大嶽丸の攻撃をするりとかわすと、振りかぶってきた一本の腕へと飛び乗っていた。それでも大嶽丸は無表情なままだった。

静かに四本の腕を大きく上方へと振り上げ、悲しそうに言った。

「小さいのは……嫌いだ。オラは不器用なんだ」

四本の腕を同時に、モンスターもろとも地面へと叩きつけた。

たったその一撃で周囲一帯の地面が陥没し、ハチの巣状にひび割れていく。その範囲は伊吹童子の蹴りとは比べ物にならず、この階層の四分の一の範囲に及んでいた。

そうたったの一撃で、ダンジョンの地形をごっそりと変えてしまったのだ。

拳が当たらないのならば、この一帯を押しつぶしてしまえばいい。

不器用で巨体な大嶽丸らしい戦い方だと、伊吹童子はほくそ笑んでいた。

もちろんそんな桁違いな拳に、モンスターがただで済むはずがなかった。

あまりの威力に、腹からいくつもの臓器を吐き出し、一瞬で粉々な肉片へと変わってしまう。それでもすぐに自己治癒術を展開し、瞬きするほどの時間で体の完全再生を成し遂げる。

「あやし」

その異常な再生速度に、大嶽丸はここに来て初めて表情を変えていた。

粉々にしたと思えば、瞬く間に完全な再生を完了させ、再び襲い掛かってきたのだ。

酒吞童子が自分を呼んだ理由に、ようやく気が付いた。

「確かに……これは角一本では到底無理だ」

「ル゛ル゛ィィィィィィィイイッ!!!!」

その隙をつくように――

モンスターのギザギザな歯が大嶽丸の首元へと深く突き刺さっていた。

反撃の一撃がようやく成功したのだ。