軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第167話

九条を先頭にチャリオット一同は走り続け、順調に黒繭の近くまでたどり着いていた。

「来るぞ」

九条団長が突然走るのを制止させるために片腕を横に伸ばし、後方を走る探索師たちを停止させた。そのまますぐに「陣形展開」と小さく言い放つと、素早く彼らは作戦通りに隊列を組み、それぞれの戦場配置へとつく。

テンジは今回、臨時チームとして三人と連携を組むことになっていた。

黒鵜冬喜、白縫千郷、そして福山与人を含めた合計四名でのチーム結成だ。

冬喜と千郷は言わずもがなですぐにチームが決定し、テンジと知り合いであり連携のしやすさやチームバランスを加味され、盾役を担える二級探索師の福山与人がそこに加わる形で臨時チームが形成された。

このチームの陣形は連携不足ゆえにシンプルなモノになった。

福山与人が『盾役』としてモンスターの誘導から戦場整理を担当し、天職等級も高く、火力が最も出せる冬喜とテンジが『攻撃役』モンスターを殲滅していく。千郷が『万能支援役』、つまり盾と矛のバランスを見つつどちらにも対応していく最も判断力の問われる役割を果たす。

そんな初々しいテンジたちの前に、子飼いモンスターの群れが姿を現した。

(これが”子飼い”モンスターか。思ったよりも統一性は無くて、個性があるみたいだね。少し戦いづらそうだ)

姿かたちはメインモンスターと比較的似ているが、子飼いのモンスターはすべてが四つん這いに動く野性的な姿勢で移動していた。

虎のような動物から兎のような小動物まで大きさもバラバラで、中にはバッタにも似た形を成す個体もいた。全てが白い体で形成された個体であり、一様に熊のように大きい体格を持つ。

ただ、そこには必ず四つん這いという共通点があるようだ。

ここから数百メートル先に数え切れないほどの子飼いが地面を埋め尽くしており、一目散に四方八方へと散らばっている様子であった。そこに統率のような連携意志は感じられない。

どちらかというと「本能的」な何かに突き動かされているような状態だった。

奴らの目的は不明。

他の低等級なモンスター同様に、一目散に四方八方へと散らばっている知性の低いモンスター見えて、一体一体が別々の探索師を意図的にロックオンしているような気配もある。

個々の意志はあるが、統率のされていないモンスターの群れ。

これが最もしっくりと来る表現だと、テンジは思った。

群れ――というよりも雪崩に近い頭数を見た福山が素早く一歩前に出る。

豪華な武器が装備された両腕を頭上から勢いよく下へと振り下ろし、手刀のように地面へと深く突き刺した。

深々と手首まで突き刺さった状態で、福山は大きく叫んだ。

「――『絶叫・羅生門』ッ」

彼のシンボルとも言われている、十八番が発動された。

何もなかった空から、真っ赤に染まった羅生門が一つ降り注いできた。

土埃一つ舞うこともなくチームの後方にドシンッとそれが着地すると、門の前面にくっついていた鬼のような形相の仮面の瞳がギョロリと気味悪く動き出した。

ギザギザに噛み合う口をぱっくりと開けると、耳をつんざくような叫び声がそこから生まれた。

「ギョォォォォォォォォォオッッッッ!!!!」

突然叫び出した羅生門の絶叫に、視界にいたほとんどの子飼いが一斉にこちらへと視線を向けた。それと同時に散らばっていた進行方向を途端にこちらへと変える。

上手く発動できた様子の福山は、ゆっくりと両手を地面から引き抜いた。

これは福山が使えるスキル『絶叫・羅生門』。

羅生門を出現させた位置から扇型に前方1.5キロ圏内のモンスターを半強制的に吸い寄せる能力であった。もっと正確に表現するならば「 標的指数(タゲ) を自分に挿げ替える」能力だ。

自分の最も重要な役割を終えると、福山はふぅと一安心したように息を吐く。

そのまま半歩ほど後ろに控えていたテンジに声を掛けた。

「結局、一度も連携の訓練をできなかった。だけど弱音なんて言ってられない状況だ。テンジくん、今度こそ見せてもらうよ。ここは入団試験とは違う。本物の戦場だ、探索師が命を懸けて戦う戦場だ。君の全てを俺に見せてほしい、それだけの力はすでに持っているんだろ?」

福山の見え透いた発破に、テンジは力強く頷く。

「はい!」

「いい返事だ。さて、僕では役不足。千郷ちゃんと一緒にサポートに徹する……その代わり殲滅は任せたよ、二人とも。君たちの才能は俺たちが燻らせない! 大人に任せなさい!」

不意に、福山は柔らかな笑みを浮かべた。

「「はい!!」」

ここで二級探索師の福山は役不足になってしまう。

元々盾役として活躍する探索師として日々鍛えてきているのだ。殲滅という状況下において、彼はサポートに徹するほかない。盾役には盾役の役割があって、攻撃役には攻撃役の役割がある。

(こんなに頼もしいサポートはない。あとは期待に応えるだけだ!!)

物理的ではなく、心理的に福山はテンジの背中を押してくれた。

テンジが戦い、福山がサポートに徹する。

あの日の入団試験とは違う。あそこでは福山が学生を守る側だった。

だけど、今は違うのだ。

テンジは守られる側ではなく、守る側――いや、一緒に戦う仲間としてようやくその足を隣に並べられるようになった。ここまで成長してきた、努力してきた。

そんな戦の火蓋が切って落とされた。

「――召喚、炎鬼刀」